秋のコスモスとかすみ草
零哉と種里は、秋色軍の領土に来ていた。他にも増して木が多く、そのどれもが鮮やかに色づいている。
ここに来たのは、秋色軍の面々に協力を求めるためだ。紗奈と夕月を助けるためには、二人だけでは戦力があまりに足りない。
「零哉、何の用だ?」
攻め込むわけではないので、二人は隠れずに歩いていた。だからか、光季も警戒しつつも正面から現れた。
「一時的な同盟を申し入れたい。秋色の隊長には会えるか?」
「いろはにか? まあ、あいつなら断らないだろうから、会わせてやる」
「助かる」
光季についていき、他より少し大きい廃墟の中へ入る。ここが秋色軍の本拠地らしい。隊員たちは、光季がいるからか何も言わない。彼はよほど信頼されているようだ。
とある扉の前で、光季は立ち止まる。ノックをすると、おだやかな声が返ってきた。
「いろは、おれだ。雷鳴部隊の奴らが、話があるらしいぜ」
「え? 零哉くんに種里ちゃんですね。他のお二人は?」
「その件に関してだ。同盟を申し入れたいんだが」
「条件を聞かないことには……。とりあえず、中へどうぞ」
いろはにうながされ、光季と二人は部屋に入る。あまり規模の大きくない秋色軍の本拠地は、かえって安心感があった。いろはの態度も好ましい。話も聞かずに襲ってくることがなく、誠意が見える。
「紗奈と夕月が、冬白軍に捕まった。連れ戻すために、力を貸してほしい。頼む」
頭を下げる零哉にならって、種里も同じようにする。零哉の説明を聞いて、いろはは深くうなずいた。
「そうだったんですね……。気持ちはよくわかります。仲間を奪われて、じっとなんてしていられませんよね」
「どうする、いろは。こいつらに協力すんのか?」
「わたし個人の気持ちとしては、そうしたいですけど……。でも隊長としては、何か得がないと、協力はできません」
いろははお人よしだが、何よりも秋色軍の仲間たちを優先する。その返答は予想通りだ。しかしそれは、零哉も同じだった。
「その戦闘で奪った分の領土、全部お前らにやるよ。それでどうだ?」
「わかりました、ではそれで。でも、そんなリスクをおってまで叶えたい、あなたの願いは何なんですか?」
「……オレは、流巡なんてもんが存在するのは、間違ってると思う。今お前に言えるのは、それだけだ」
すぐ隣で、種里がその言葉にびくりと反応したことに、零哉は気づけなかった。
「わ、わたしも! できれば秋色のみんなを、無事に帰したいと思ってるんです。それって、目的は同じってことじゃないですか? それなら零哉くん、秋色に所属してくれませんか!?」
「ふーん、いいんじゃねぇか。零哉たちなら、かなりの戦力になるだろ」
「はあ!? 光季まで、何言ってるんだよ」
「でもレイヤ、サナは勝ってほしいって言ったよ」
種里の言葉を受け、零哉は考え込む。これまでは、少人数の部隊一つでやってきた。それは、零哉の目的が他の誰とも違っていたからだ。
「オレは、流巡を消滅させるつもりだぞ。それでもいいのか」
「それで、みんなを無事に帰せるのなら」
いろはの瞳には、強い意思が宿っていた。もともと秋色には、帰還願望が強い者が多く所属しているのだ。
「……その話、乗った」
「ありがとうございます、零哉くん。これから、よろしくお願いしますね」
「これからは、お前とも仲間か」
いろはと光季、それぞれと握手する。目指す先こそ少し違っているが、彼らとは共に戦っていける。部隊の仲間とはまた違う頼もしさがあった。
「今回の作戦の指揮は、零哉くんに任せます」
「おう、任せろ」
「いつものレイヤに戻ってきたねっ」
冬白攻略作戦が、動きだした。




