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これが噂のシンデレニャンストーリー?  作者: ねこ丸船
二日目の朝は監禁から
9/11

「どうにかしなくちゃ。」


 廊下に繋がるこの扉は、キリュウ大将によって外側から鍵を閉められ、中から開けることが出来ない。何度か押したり引いたりしてみたけれどダメだった。

 しかも丸一日、何の音沙汰もない。ご飯は昨日の朝で最後。もうお腹がすきすぎて死にそうよ。


 ぐるぐるとあてもなく歩き回り、堂々巡りする思考に苛立ちながらも、何とか状況を打開できる策を考える。


「扉は開かない、叩いても叫んでも誰も来てくれない…。ここは五階だから窓から降りることも無理だし…。でも閉じこもっていても、誰かが来てくれる保証なんかないわ。昨日のキリュウ大将の様子じゃ、悪いことしか待っていない気がするし…。」


 それにこの城には自分の味方がほとんどいないから、期待するだけ無駄。だからこそ、


「何か行動を起こさなきゃ!」


 こういう時は先に動いた者が勝ちだって、昔のから散々思い知らされてる。だから扉が開くまで大人しく待っておくなんて選択肢、私には存在しない。


 そもそもどうしてこんなことになったのか。この一日ずっと考えてみたけれど、私にはどうにも心当たりが無い。

昨夜のキリュウ大将は様子がおかしかったから、きっとそこに原因があるはず…。多分私に関連するだよね?すごく怖い顔で睨まれたし…。


「うーん…。」


 ずーっと考えているけれど、やっぱり分からない。


 すると、


  チュンチュン


 小鳥の可愛い声が窓辺から聞こえてきた。先程までは朝日でオレンジがかっていた空が、いつの間にか綺麗な水色に染まっている。なんだか考えもまとまらなくなってきたし、リフレッシュでもしようかしら。


 そう考え、小鳥の鳴き声がする方へ近付いた。勢いよく窓を開ける。すると朝の陽光が身体に当たり、じんわりと身体が温まった。


「スゥ…ハァ~~…。――…すごく暖かくて気持ちが良い。こんな日は外で畑仕事でもしたいわ!あぁ、せめてここが一階ならすぐに降りられるのになぁ。」


 まぁオーロラ姫がこの部屋に泊まるって言った時点で、その可能性はぶった切られてしまうわけだけれど。もし窓の下に足が置けるようなスペースがあれば、五階からでも降りられるかしら…―――。




――――――――――

―――――――

―――――



  バサバサバサバサッ


「ん…?」


 あまり眠ってなかったからか、いつの間にか眠っていたようだ。慌ただしく飛び上がる小鳥達の羽音が騒がしくて、私は目を覚ました。気付いたら太陽がずいぶんと高い位置に移動している。


 その日差しを下に辿れば、


「あらっ?」


 なんと馬に跨るキリュウ大将が、ぎらぎらと光る銀色の甲冑を着て、城から出て行くところだったのだ。その後ろには数人の甲冑騎士に、黒い服を纏ったいかにも怪しそうな人物が一人、一方白い服に白いマントが印象的な派手目の人も一人いる。


 そしてその人物達は一様に、ある馬車を囲うようにして前へ進んでいた。馬車には高々とコバルド国の国旗が掲げられている。


 てっきりキリュウ大将に何かされるのかと思っていたけれど、まさか城から出ていくなんて。それに国旗を付けた馬車がいたってことは、貴族のお供かしら?


 ――…ま、まさかオーロラ姫?


 だとすると非常にまずいわ。

 だってここに来てくれそうなのが、キリュウ大将かオーロラ姫しかいないもの。メイドさんや騎士達は、この二人が指示を出さない限り来てくれないと思うし…。


 もしこの二人が城から出て行ってしまったら、帰ってくるまでここでお腹を空かせて待つしかないかもしれない…。でもすでにお腹はペコペコよ。このままじゃ、お腹と背中がくっついてしまうわ!


 ど、ど、ど、


「どうしよー!!!」


 そんなの絶対死ぬ。飢え死にしちゃう!ミイラになっちゃうよー!

 でもこの部屋は扉と窓しか脱出場所は無いし、かと言って扉は開かないし…。

 これは――…、


「 …………本当にもう窓から脱出するしかないんじゃない?」


 どうにかして四階のバルコニーに降りれたら、最悪アルトレイトの所に行けるかもしれないし…。鬼畜なヤツだけれど、私と一緒に四日間行動を共にした(よしみ)で何とか食事だけでも恵んでくれないかしら?


 とりあえず、窓の下を確認しよう。


「あった…!」


僅かに窓の下に出っ張りがある。四階のバルコニーは、この真下じゃないけれど、出っ張りを伝って体を横にずらせば、なんとかなりそう!

 

 私は履いていたヒールを脱ぎ、ドレスの裾を捲って、動きやすいように太ももでぎゅっと結んだ。


 頑張れ!私!

 ココル=アニアスならできるわ!

 

 そう自分を鼓舞し、身体を後ろに向け、そっと窓枠に両足を掛けた。穏やかな日差しの中、私の心臓は嵐のように暴れまわっていた。


  ドックンドックン


 足が、震える。

 一度落ち着かせるように、私は目一杯深呼吸をした。本当は怖い。けれどここで待つ方が百倍も嫌なのだ。行動しなきゃ何も変えられない。今も、この先も。


「だから、頑張れ。」


 胸に手を当て、大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。そして慎重に窓の下にある出っ張りへ、右足を下ろす。


 大丈夫、大丈夫。

 ゆっくり、落ち着いて。


 つま先が、何かに触れた。


「…っ着いた!」


 固くて冷たい感触。

 良かった…。あとは左足ね。


 私はもう一度気合を入れ直すように深呼吸をゆっくり行い、右足と同じようにして、左足をゆっくりと下ろしていく。


 あと少し。

 もうあと少しで―――……


「ひゃっ!!!」


 ぐらりとバランスを崩した。

 右足が僅かなスペースから滑り落ちる。

 

 死ぬっ…!




 ―――そこで私は意識を手放した。



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