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これが噂のシンデレニャンストーリー?  作者: ねこ丸船
始まりの夜
3/11

 ◎


 オーロラ姫がまさかの男だった。


 そして私はやつの婚約者に任命されてしまった。


 それを聞いたやつは『さいあくだ』と口にした。


 それを見たあたしも『さいあくだ』と心で叫んだ。


 やつは私から顔を背け、憤怒の顔で国王様の元へ走っていった。


 しかし国王様はそんな私達を気にすることなく、言い逃げしやがった。


 そして取り残された私は、呆然とその場で突っ立っていた。


 そこに声をかけたのは、私を田舎から連れ出してきた張本人、白い軍服を着た若い男だった。


「なんとおめでたい日でしょう。」


 満面の笑みでゆっくりと拍手をしながら近寄ってくるこの男に、一発腹パン食らわせてもいいですか。

 だって全くおめでたくもなんでもないじゃない!


「私は私の好きな人と結婚したいし、私自身の人生も自分で決めていきたい!ほんっっとうに最悪!全部あんたのせいよ!!!」


 私はびしっとこの男を指差した。

 しかし当の本人はどこ吹く風である。


「それはそれは。しかし、あの借金では人生を自分で決めるどころか、すぐさま人生ジ・エンドだったのでは?」


 ぐはっ


 痛い所を突かれてしまった。

 確かに今回父がつくってきた借金は、膨大すぎて、借金慣れしている私も目が点になるほどだった。この男の言うとおり、首を括るしかなかったかもしれない。そしたら人生終了のお知らせである。


 私は言葉に詰まり、恨めし気にじとーっとこの男を見た。すると背後から、しぶくて低い声がこちらへ飛んできた。


「アルトレート様、いかがいたしましょう。」


 先ほど声を荒げたマッチョ老人だ。

 上半身を斜め四五度に腰から曲げ、右手を胸の前に置いている。そしてその後ろには、槍を持った甲冑騎士達。槍を左手で持ち、右手はやっぱりマッチョ老人と同じようにしてひざまずいていた。


 ちらりと白い軍服男を見る。


 恐らくマッチョ老人が意見を求めているのは、私を強引に連れてきたこの男。

 かなり威厳のあるマッチョ老人から“アルトレート様”と呼ばれ、さらにはあのオーロラ姫が“アルト”と呼んでいたのもこの男のことだろう。

 一体…何者なのだろう?


「ではキリュウ大将に命じる。この者をオーロラ姫の騎士として恥ずかしくないよう教育しなさい。」


 一本芯の通った声でアルトレートが言った。

 その言葉に続いて、


「承知!」


 胸の前に置いていた手をマッチョ老人は握り拳にして、ドンッと強く叩いた。


 “教育”って何かしら…?とても怖い響きだわ…。

 かなり情けない顔をしているだろう私は、説明を求めるようにアルトレート(こんなやつ呼び捨てでいいわ!)に顔を向けた。

 しかしこの男ときたら爽やかな顔を一度こちらに向けた後、すぐにマッチョ老人へ顔を戻し「頼んだ。」と言って踵を返したのだ。


 って置いていくの!?


「ま、待って!」


 私の必死な声に、男が振り向く。

 しかしそのまま答えることなく、微笑を携えたままのアルトレートはすぐに顔を前に向け、部屋のドアに手をかけた。


「それでは御機嫌よう。」


  ガチャリ


 シーンと静まり返った部屋。

 私はただただ突っ立っていることしか出来ず、マッチョ老人達に声をかける勇気もなかった。

 だって絶対嫌われているわ。本当にこれからどうすれば…。

 

 言いようのない漠然とした不安が波のように心を侵食し、涙が込み上げてきそうになった。

 そんな時、声を発したのはマッチョ老人だった。


「ココル=アニアス。こちらについて来い」


 そう言って、マッチョ老人は男が消えていった方向へ歩き出した。

 有無を言わさぬその雰囲気。

 私は不安から解放されぬまま、マッチョ老人についていくしかないのだった。


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