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これが噂のシンデレニャンストーリー?  作者: ねこ丸船
始まりの夜
1/11

出会いは突然に

 槍先が十数本、鈍色を光らせてこちらを取り囲んでいる。

 私は黙ったまま、ただただ頭こうべを垂れるばかり。

 しん、と静まり返った様子は、まるで一点の揺らぎもない湖の水面に、滴が落ちる寸前のようだった。


 そんな静寂をものともせず、良く響く声が広間に凛と響いた。


「ココル=アニアス、あなたを私の騎士に任命します。」


 これは夢か幻か。

 私は、ただただ萎れるように深い溜息をついたのだった――…。




 ◎


 どうしてこんな状況になったのか。


 元をたどれば四日前、突然やって来た白い軍服の若い男に無理やり連れて来られたのが始まりだった(もはや誘拐に近い)。半ば強制的にコルバド城まで引きずられ、今目の前には現国王のセーレマニット様が、そしてその隣には高貴な身分と思われる金髪の美しい美少女が階段の上から私を眺めている。


 その美少女から騎士に任命され、私はなんて答えるのが正解なのかしら。五日前まで、借金に追われながらも田舎で慎ましい生活をしていたか弱い15歳が、下手すればこの場で槍に串刺しにされて人生が終わるのだ。

 しかし、いきなり騎士と言われても…


「あのぅ…、それはどういう――…」


  ガンッ


「口答えするな!この無礼者!!」


 ひぃっ!


 二本の槍が首筋ギリギリを通り、首を押さえつけるようにして交差した。ギロリと甲冑を着た騎士達がこちらを一斉に睨みつける。

 こ、これじゃあ何も聞けないじゃない…。


 私は助けを求めるように、後ろにいる白い軍服の男を見た。涼しげな顔をして微笑を浮かべているのは、私をここへ連れてきた張本人である。もしかしたら助けてくれるかもしれない――…。

 淡い期待を胸に、男へ必死に視線を送り、そしてやっと目が合った。…が、あろうことか男はニヤリと笑ってみせたのだ。

 くそぅ!ここには敵しかいない!


 噴き出す汗が胸元まで伝うのを感じ、私はそっと服で抑えながら悪態をついた。

 命を人質に取られた気分だ。


 すると、


「その槍をお下げなさい。」


 凛と響く声で騎士達に命令したのは、私を騎士に指名した金髪美少女だった。階段上からヒールの乾いた音がこちらへ近づいてくる。

 美少女が美しい金髪をなびかせながら一段一段階段を下りてきたのだ。薄い青色のドレスを身にまとい、両手でスカートの上部を軽く持ちながら優雅に階段を歩く様は、まるで女神のようである。

 そして彼女に見惚れる甲冑騎士達の先程の行いには、きっとかなり偏った思想が混じっていたに違いない。


 軽やかな足取りで最後の一段を舞い降りた美少女は、そのままこちらへ歩を進め、私との距離が半径一メートル以内という所で腰を屈めた。


「姫!なりません!」

「!?」

 

 びっくりした…。

 声のした方を見てみれば、声を荒げたのはガタイの良いマッチョな老人らしい。美少女の傍で何やら言っているが、しかし美少女は無言のまま目で制し、再び私に顔を向けた。


「アルトから聞いていませんか?」

「?」


 アルトって誰?という疑問が顔に丸出しだったのか、女神様は私を見て軽く溜息をついた。なんだかその仕草に色気を感じる。


「あなたは魔精石に選ばれたのです。」


 魔精石?


 先ほどからはてなマークばかりが飛び交う私の頭はどうにかなってしまったのかな?全然話についていけないわ…。

 しかしこの反応は想定内だったのか、美少女はクスリと笑うと言葉を続けた。


「私は国を守るため、魔精石の魔力を使役する者です。」


 魔力を使役する者―――――…

 ん?ちょっと待って。今何かが引っかかったわ。なんだか遠い昔に聞いたような…、


「私は民からオーロラ姫と呼ばれています。ご存知でしょうか?」

「…………ええ!?!?!?!?」


 そうだ。昔お母様が話してくれたわ。有名なお話。

 オーロラ姫が民を救い、国を守っている。そして私達はその恩恵を受けながら今も生き続けているって…。

 けれど、まさかその話に出てくるオーロラ姫が実在しただなんて。


 アーモンドのような切れ長でパッチリした瞳は深い藍色をしていて色気を感じ、白い肌には頬と唇に桃色の血色が差して美しい中にもどこか可憐さが備わっている。手足が長く、背もすらっと高い。多分160cmくらいはあるだろう。胸は…うーん。


 こんなに綺麗で、しかもかなり若い人がオーロラ姫だなんて…。もしかしたら同い年っていうこともあり得るかもしれない。

 まさか伝説上の人物とこんな所で会えるなんて…私は驚いて口をポカンと開けることしか出来なかった。

 すると、


「お願いがあるのです。」


 真剣な眼差しで縋るようにオーロラ姫が私の手をぎゅっと握った。



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