Ⅶ ending
「沙良、沙良」
肩をゆすぶられて目を覚ます。
どうやら、物思いに耽っていたら寝てしまったらしい。
「今日は気持ちいいから、つい昼寝しちゃったね」
そう言って、キッチンに行こうとする隆太の服の裾を引っ張った。
「隆太」
「何?」
「…わたしをみつけてくれてありがとう」
無性に言いたくなった言葉。
「急にどうしたの?」
喜ぶより先に疑問に思ったのか訝しげに聞いてきた了。
「昔の夢を見たの」
そう答えると、隆太は納得したようで、
「どういたしまして」
と、出会ったころから変わらない優しい笑顔で微笑んだ。
わたしも微笑みを返す。
しばらくそうやって微笑み合っていると、隣から
「ママァ、パパァ」
と寝ぼけ眼の声で、もうすぐ3歳になる我が息子、理人がわたしたちを呼んだ。
あの後、わたしは隆太の宣言通りに1年以内にわたしを見事惚れさせ、あの日の次の年のわたしの誕生日に籍を入れた。
そしてすぐに妊娠が発覚してできた子が、理人。本当に1年後に結婚式を挙げたことには我ながら驚いたが(お母さんにもすごい驚かれた)、今ではすごく幸せだ。
ちなみに了と川崎さんは、わたしたちが結婚式を挙げた1年後に籍を入れ、今もラブラブだ。今では、あたりまえだけど、2人を見ても、胸が痛むことはない。
「おはよう。理人」
抱っこをしてあげると、ギューッ、としがみついてくる理人。隆太もわたしも理人にメロメロだ。
「今日、お買い物はぁ?」
理人に言われ、気付く。時間を見るともう4時。今日は諦めるしかない。
隆太も同じ考えなのか、2人で頷くと、
「明日、行こうね」
と理人に優しく言い聞かせた。
理人も眠くて、行く気分ではないのか
「うん」
と舌足らずに素直に頷いた。そしてまた眠ってしまった。
うん。可愛い。
起こすのも可哀想なので、そのままソファーに寝かせる。
「可愛いな」
「そうねー」
2人で理人を温かく見つめる。
こんな幸せは了とは絶対に作れなかった。
でも、了がなければこの幸せはなかった。
今では、了に感謝している。
これからも、隆太と理人との日々を大切にしていこう。わたしの大切な宝物。
ずっと、愛してるよ。
end
小さなおまけ。
了。
あなたに1つだけ、謝らなくちゃいけないことがあります。と言っても、あなたは分からないだろうけど。
あなたがわたしに最初に、婚約解消を求めてきたとき、わたし、わたしたちが付き合っていたころ、あなたに大切にされたことないって思っちゃったの。そう思ったら、自分が止められなくなってしまって。わたしはちゃんと了に大切にされていたよね。始まった形は最悪だったけど、わたしたちはちゃんと愛し合ってた。
お互いに忘れたい出来事だね。
でも、わたしはあの時のこと、あの時のあなたの絶望の顔は忘れない。わたしがさせた、あの時の顔を。
やっぱり幼馴染のあなたを忘れるのは嫌だからね。
絶対に忘れてやらない。
あの時、あなたに向けていた何倍もの愛情を今、隆太と理人に向けています。
あの時とは好きの形が180度違うけど。
好きです。川崎さんといつまでも幸せに。
隆太。
わたしをみつけてくれたあなた。
最初は本当に面倒くさいチャラ男だったけど、大好きよ。
これからも、ずっと。
いつまでも、変わらぬ愛情をあなたに向け続ける。そんな自信に満ち溢れているの。こんなに愛せるのは、あなたもわたしを愛してくれてるからって…、思ってもいいかな?
これからも、喧嘩をいっぱいしましょう。あなたから謝って、その後優しくしてくれなくちゃ怒るからね。理人に沢山の愛情を注ぎましょう。
これからも、愛し合いましょう。
…愛してる。
おはようございますこんにちはこんばんは。
でも、奏葉がこれを執筆している時間が夜なのでこんばんは。
奏葉です。
元々は、「秘密はー」の息抜きに短編で終わらせる予定だったのですが、なぜか7部まで書いてしまって…。
とりあえず、この作品は、沙良みたいな女性を書きたいなーって思ったのが始まりです。
一見悪役だけど、相手の幸せを考えて、かっこよく終わらせる。
奏葉はこんな女性かっこいい!って思います。
いいですよね!ね!可愛らしい女の子も好きですが、かっこいい女性大好き!
…では、長々しく書くのもアレなので。
読んでくださった方。奏葉も確認して読みやすいお話を提供したつもりですが、読みづらい所が多々あったと思います。それでも読んでくださった方には感謝の言葉しかありません。
できれば、「秘密はー」と、次回作もよろしくお願いします。
ではでは。奏葉でした!!