ハートブレイク・ティータイム
ウナギって響きよくね?
「そう、かも……しれませんね」
そう言って、僕は心が冷めきってしまっていた。学校のボロい机の上には先輩の淹れた熱いほうじ茶が湯気を立てている。手に取ると、青白く震えていた手が暖かさにほぐれる。
心の方も――こうだったらいいのに。叶わない願いをほうじ茶に見立てて飲み込む、それはまだアツアツで口の中にやけどを残す。痛い。痛くてたまらなくて、情けなくて泣きそうだ。けれども吐き出せはしない。そんな情けないマネ、先輩の前ではできない。
先輩はずっと雪の降る窓の外を見つめている。こちらには一瞥もくれない、それは彼女なりの温情なのだろう。僕がもし、いま優しい言葉をかけられたなら、僕はまた彼女を好きになるだろう。
だから、先輩はずっと雪を見ている。―――先輩なりの優しさだ、僕はそう思うことにした。
その優しさは刃のように、僕の恋を無慈悲に断ち切る。先輩は、自分には全く手の届かない女性だ。――しんしんと降り積もる雪をただ眺めている彼女は余りにも神秘的で、拒絶に溢れている。それは僕の告白に対する断りよりも明確だった。
―――『あなたとは、付き合えない』。その言葉を反芻すると、またやけどがズキズキと痛んだ。
席を立って、温くなってしまったほうじ茶を飲み込む。味わって飲むと、とてもシブく不味かった。懐かしい香りが鼻腔に広がって、思い出を呼ぶ。初めてここにきたときに出された、あの濃すぎるほうじ茶。
「―――ごちそうさまでした」
もう帰ろう。ほうじ茶の香りが鼻に残っている内に、思い出が尽きない内に。
今まで楽しかったことを、その全部反芻し終えてしまう前に帰ろう。
「じゃあ、さようなら」
扉を開けると、あの匂いに少ししょっぱい匂いが混ざった。
くぅ~疲れましたwこれにてポエム完結です!