普通ではない者たちの実践
文章が長いですが、あまり進みませんでした
翌日、午前七時の段階ですでに学校に来ていた霧崎拓真は一直線に生徒会室に向かった。
生徒会室、表向きは学校の秩序を守るために活動をしているが、実際は、普通ではない者たちの管理を行っている場所だ。
ちなみに俺も一年生ながら生徒会に入っている。理由はもちろん、俺が普通ではない者たちだからだ。
生徒会室の扉の前に立ち、三回ノックする。
すると中から、どうぞ、という声が聞こえたので、失礼します、と入っていく。
生徒会室の中はまだ時間が早いのもあるが、あまり人がいない。
いつもならもう少しぐらい人がいるのだが・・・。
「まあ、そう思われても仕方がありませんよ。今は皆、普通ではない者たちが行っている争いの沈静化に向かっていますから」
心の中を見透かしたような発言をされたことに多少は驚くが、毎度のことなのでもう慣れてしまった。
「全く、毎度毎度見透かした発言をするな、お前は」
「お前とはひどいですね、拓真。ちゃんと名前で呼んでくださいよ」
「じゃあ、その副生徒会長にしゃべってもらうのをやめたらな」
生徒会室に入った真正面にある生徒会長の椅子がこちらを向いた。
「なんででしょう、あなたにはすぐにばれてしまうのは」
会長の椅子に座っているのはやっぱりというか、副生徒会長の黒宮 零だった。
そして、生徒会長の隣にある副生徒会長の机にうつぶせになって椅子に座って、姿を副生徒会長に化けていた生徒会長の緋桐 月姫は、黒宮と席の入れ替えをした。
「それは、俺が月姫の彼氏だからじゃないのか」
ゴホン、ゴホンとわざとらしく咳をしても赤くなった顔は変わらない。
「いつものことながら、恥ずかしいことを平気でいうのですね、拓真」
「いや、これでも結構恥ずかしいんだぜ。月姫が自分の彼氏を試そうとするから仕方がなく言わざるおえないだけで」
満更でもなさそうな口調で言ってみた。
月姫の顔は赤みがさらに増していく。
「夫婦の仲がよろしいのはいつものことですが、そろそろ本題に入りましょう」
と、ここで今までの流れを聞いていた(聞かされていた?)黒宮からのフォロー(もしくはとどめの一撃)が入り、月宮が椅子にもたれかかるように気絶した。
「さて、今回のご用件というのは中等部に在籍されている姫倉瑠奈さんのことでしょう」
黒宮は、何でもないような顔で話しかけてくる。
「相変わらず何でも知ってるな」
「そうでもありませんよ。うわさ程度の情報しか入っていませんよ」
能面のような笑顔で返してくる。
俺は苦笑した。
「そうだ。一昨日にいじめられているところを発見し、俺は助けに入ったんだ。もうそのときには発動していたよ。そし・・・」
「そして、昨日の検査でストレス性の憑依型と診断されたということですね」
考えるような仕草のまま、黒宮に俺が続けて言おうとしたことを先に言われてしまった。
「そうだよ、ってやっぱり全部知ってるんじゃないのか」
「いいえ。一応はこの地域の普通ではない者たちを取り締まる最高責任者という立場ですので水無瀬さんの方から少なからず情報は頂いていますが、これからあなたがどのような行動に出ようとしているのかは知りません」
ようするに、姫倉の情報は全て知っていて俺がどのような行動をするのかが楽しみでわざわざ何も言わずにこの生徒会に来るのを待っていたと。
「相変わらず黒いな、黒宮」
「お褒めの言葉として受け取っておきます」
うわぁ、真っ黒な良い笑顔。
「むにゃ?」
「ようやく起きたか、月姫」
腕を上に伸ばしながら復活した月姫は状況が飲み込めていないようだ。
「それで、霧崎様はどのようにされるおつもりですか」
黒宮の問いに答える。
「とりあえず、月姫と同棲する。それからだ」
再び月姫は夢の世界へと旅立った。
「そうですか。では今夜にでもお届けいたします」
「よろしくな」
こうして俺は、生徒会室を後にした。
「とりあえず、月姫と同棲する。それからだ」
と霧崎拓真が言い生徒会室から出ていった後の生徒会室では
「もう行ってしまわれましたよ、緋桐様」
すると、その言葉を待っていたかのように起き上がる月姫。
「まったく拓真ったら、いつも恥ずかしいことをいうのだから」
「いえ、おそらく同棲というのは本気だと思います」
真顔で答える黒宮。
「黒宮さんって、いつもそのしゃべり方ですね」
「そういう緋桐様も霧崎様の時と他の方との話し方が違いますよね」
ちょっと頬を染める月姫。
「それは拓真があんな奴だから、仕方なく」
「本当ですか、霧崎様と話されているときの緋桐様はとてもうれしそうでしたよ」
さらに赤くなる月姫。
「で、でも、同棲とか早すぎるから・・・」
「いいえ、この学校でいえば遅いくらいですよ」
少しため息まじりの声で続ける。
「知らないわけではないでしょう。この学校の中等部はともかく、高等部のほとんどの方が同棲及び結婚なされているのを」
「で、でも、それは・・・」
真っ赤になった月姫
「お話しをしているところ申し訳ないけど、きみたちにもこれから普通ではない者たちの争いの沈静化に向かってもらうよ」
「学園長様」
「えっ?」
その後、生徒会室からは会長の悲鳴が上がった。
生徒会室から出た霧崎拓真は自分の教室へ向かっていた。
教室に向かう途中、誰一人としてすれ違う、もしくは見かけることがなかった。
教室に着き中に入ると、この高裁学園の学園長が俺の席に座っていた。どうやら魔法を使って俺に化けているらしいが、本物がここにいるのだから意味がない。
「何やってんだよ、学園長」
俺が声をかけると、学園長は苦笑しながら、
「きみは、あいさつというのが出来ないのかい」
と、嫌味のような感じで返してきた。
「いいかげん、俺の姿使うのやめろ」
やれやれといった感じで魔法を解いてくれた。
「まったく、きみはいつまでたっても成長しないね」
「うるさい」
たくっ、どいつもこいつも。
「で、俺に何か用なのか」
「実はね、今日は学校が休みになったんだよ」
「は?」
そんな話しは聞いていないが。
「聞いてなくても仕方がないよ。ついさっき決まったんだ」
だから、なんで心の声が聞こえてるかのように話して来るんだよ。
「いや~今朝ね、普通ではない者たちがグループになって争っているっていう連絡が入ってきてね、生徒会の方々に沈静化を頼んだのだけれど、どうやら返り討ちにあったみたい。で、今も争い続けているから休校」
だから誰も見かけなかったのか。
「返り討ちって、どのぐらいなんだ」
「ん~、幸い死人は出なかったけど重傷者が多いみたい」
「で、どうして欲しいんだ」
学園長が直々に来るということはどうにかしてほしいというときだけだからな。
「きみには争っている奴らの沈静化に四人で行ってほしい」
「四人ってことは、あとは誰なんだ」
「緋桐月姫、黒宮零、あとは姫倉瑠奈」
「それ、本気で言っているのか」
「僕が冗談を言うと思うかい」
「月姫、黒宮はともかくとして、なんで姫倉なんだ」
学園長は少し考える素振りをした後、思いついたような顔をして
「あの子には、能力を制御してもらわなくてはいけないからね。よく言うだろう、経験は実践で積めと」
確かに、いつかはそうしてもらおうとしていたが昨日の今日かよ。
「緋桐くんと黒宮くんには、つい先ほど話しをつけて先に行ってもらった。きみにもこれから行ってもらう。あとから姫倉くんも行かせるから」
「分かった」
学園長は立ち上がると、転移魔法を発動した。
「じゃあ、また後で。」
その言葉を最後に俺は転移された。
転移した場所は、よくある商店街の中央通りの入り口。
転移してすぐに目に入ったのは、無残に撒き散らされた売り物、被害にあって治療を受けている人々。
そして、中央通りで未だ争っている普通ではない者たち。
その光景に呆れていると先に転移していた月姫と黒宮が合流した。
その後すぐ、姫倉も転移してきた。やはり、初めて争っているところを見て戸惑っていた。
「大丈夫か、姫倉」
「あっ。はい、大丈夫です・・・」
あまり大丈夫そうには見えないが。
「貴女が姫倉さん?」
「えっ、はい。そうです・・・」
突然で驚いたのか少し怯えていた。
「おい、月姫。怯えてるぞ」
「えっ、あっ、ごめんなさい。怯えさせるつもりはなかったの」
月姫がうろたえてるのは初めて見るな・・・、ってそんな場合じゃない。
「あー、ひとまずは自己紹介するか」
「はい、そのほうがよろしいようですね」
黒宮も察してくれたようだ。
「時間も少ないから手短に言ってくぞ」
「姫倉のことは知っているよな。姫倉に話しかけたこの人は高裁学園の生徒会長の緋桐月姫。で、こっちは人畜無害そうに見えて実は腹黒い生徒副会長、黒宮零」
「拓真、時間がないからって大事なところを飛ばさないでよ」
「えっ、どこか飛ばしたか」
「だから、私と拓真がつ「初めまして、姫倉さん。黒宮零と申します。」っている・・・」
「は、はじめまして。姫倉瑠奈です。」
「・・・・・黒宮さん」
「はい★」
「この仕事が終わったらお話があります」
「はい★」
すごくいい笑顔だな・・・。と、そろそろか。
「じゃあ一通り終わったということでこれから沈静化に行くが、その前に姫倉」
「はい」
「お前に能力の使い方を教えておく」
「あの、それなんですが・・・」
何かを言おうとしているが、それを聞くことは出来なかった。
「おい、こっちに飛んでくるぞ」
誰が言ったかは分からないが、その言葉だけでも反応することが出来た。
主に黒宮が。
『絶対影装・闇の障壁』
黒宮の全身から溢れ出した黒い瘴気が俺たちの前で薄い膜のようになり、飛んできた魔法を打ち消した。
「姫倉、時間がなくなった。この実践で能力の使い方を身に着けてくれ」
「はい・・・」
姫倉が未だに何かを言おうとしているが今は気にしている場合ではない。
「それじゃあ、行くぞ」
俺たちは、争いの中に足を踏み入れた。
次回はいよいよ戦闘に入っていきます。