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龍は吟じて虎は咆え  作者: 南紀和沙
第四章
22/39

龍を司る者

<登場人物>

虹玉髄コウ ギョクズイ……主人公。龍を操る力をにわかに得たため、訓練を受けることになる。

解賢歩カイ ケンホ……峰王国司龍。龍に関する全般を把握・管理する立場にある。天才と名高い。

朱剛鋭シュ ゴウエイ……峰王国軍前衛将軍。龍を操る力を持つ。

炎亮季エン リョウキ……左衛将軍・天泰壱テンタイイツの配下。騎龍見習い。

甘喜玲カン キレイ……右衛将軍・風加羅フウカラの配下。騎龍見習い。

 翌日。

 司龍シリュウが到着したと聞いて、若い騎龍たちは兵舎の一室に集められていた。そこに、文官の出で立ちをした女たちが入ってくる。その中に司龍がいるのだろうか。

 ふと見ると、背の低い少女が混じっていた。年の頃は十二、三といったところか。司龍の縁者か、従者だろうか。

 すると、その少女が女たちのあいだを抜け、玉髄の前までやってきた。

「ふぅん……キミが新しく騎龍になったっていう子?」

 くりくりっとした目に、いたずらっ子のような表情で、少女は尋ねてきた。

 玉髄(ギョクズイ)は思わず首を傾げる。

「ああ、ゴメン。名を訊く前に、ボクから名乗らなきゃね」

 少女はニカッと笑うと、威張るように胸を張り、とんっとそこを叩いた。

「ボクこそが、さきの峰国司龍・知登佳(チトウカ)が娘にして、(いまの)峰国司龍、解賢歩(カイケンホ)!」

「し……司龍!? あなたが?」

「むぅ、やっぱりこーゆー反応か」

 少女――賢歩(ケンホ)は、ぷくっと頬をふくらませた。その表情は幼い子供そのものだ。

「いえっ、そのっ」

「研究ばっかの生活ってのも考え物だね。これからはもうちょっと、公の場所にも出たほうがいいかなぁ」

 あわてふためく玉髄を尻目に、少女は軽く笑って肩をすくめた。怒ってはいないようだ。

「じゃ、改めて自己紹介してくれるかな?」

「は、はい。国王侍従、虹玉髄(コウギョクズイ)です」

「そうか、キミが……」

 賢歩はうんうんと何度もうなずく。

「で、キミたちは?」

「王国軍左衛、天泰壱(テンタイイツ)将軍配下、炎亮季(エンリョウキ)です」

「王国軍右衛、風加羅(フウカラ)将軍配下、甘喜玲(カンキレイ)と申します。お会いできて光栄です」

「うんうん、今年の騎龍たちは、優秀なひとぞろいだねー」

 賢歩はニコニコと笑う。どう見ても年下なのに、その動作は年上のように感じられた。

「じゃあ、さっそくキミたちの龍を見せてもらおうか」

「は、はい!」

 若者たちは敬礼した。



 空は白い雲に隠されている。

 けれども、湖は青さを保ったまま、龍たちの飛ぶさ まを見ていた。

「ほらほら~! もっと集中してー!」

 剛鋭(ゴウエイ)の龍が彈を放つ。それを、玉髄たちは時に速度をもって逃げ、時に彈と彈のすきまを縫うように避ける。

 すべての指示を出すのは、賢歩である。剛鋭のうしろに乗って、彼に弾の数と軌道を指示する。剛鋭の肩に手をかけて体勢の均衡をとるその姿は、慣れている感があった。

「できる! って思うことが一番の近道なの! ただ龍を動かして無様に避けるだけじゃ駄目だかね!」

「はい!」

 風を切りながら、若い騎龍たちの返事が返ってくる。騎龍たちは耳がいい。それも確認して、賢歩が微笑む。

 そうしてしばらく彼らの様子を見てから、賢歩は剛鋭に小さい声で尋ねた。

「なんかさぁ、ちょーっと遠慮がちな感じがするなぁ。どうせ剛鋭サンのことだから、誰か泣かせちゃったんでしょ?」

「まぁな」

「もう! それで萎縮させちゃってどうすんの!?」

 賢歩はぷくっと頬を膨らませた。

「成りたての騎龍は、ただでさえ戸惑うものなんだから……っていつも言ってるでしょう?」

「優しくしろってか? 騎龍はもっと厳しくていいんだ。ついてこれない奴はいらない」

「それ! 騎龍の悪いクセだよ。自分たちの誇りに合わない者を排除しようとする」

 若すぎる司龍が、獅子のような将軍に説教を垂れる。

「排除はダメ。もっともっと、色んな騎龍がいていい。ボクはそう思う。そういう時代が来るんだよ」

 そう言って、賢歩は玉髄のほうを眺める。

 黒く翼のある龍が、羽を広げて飛ぶ速度を下げたところだった。

「玉髄サンは、いままでの騎龍たちにはない心を持ってる。いままでの騎龍とは、違う使い方ができるはずだよ」

「そうかね」

「そして、玉髄サンに感化されてる子たちも、ね」

 優しい視線で、賢歩は自分より年上の見習いたちを見つめた。

「彼らはまだ、まっさらなんだよ。次、右へ七発、乱れ撃ちね」

「あいよ」

 賢歩に応じて、剛鋭は右手を上げた。騎龍の技の真髄――彈が、浮かびあがった。

 騎龍の技には、大きく分けて二つある。


 ひとつは、基本。龍が出す霊気の塊、彈である。騎龍の意思や命令に従い、龍の口や周囲から、彈は発生する。その色は、龍の瞳と同じである。

 そして彈の型には、騎龍の個性があらわれる。

 例えば、剛鋭は目標の殲滅を絶対と考える。そんな彼の龍は、力強く大きな彈を雨霰と放つのが得意だ。

 反対に、英凱は肝心なところだけ破壊すればよいと考える。彼の龍は、小さくとも的確に制御した彈を一発ずつ、確実に目標の急所に当てるのを得意としている。

 ただし型の違いは、得手不得手の問題である。英凱でも、その気になれば彈を雨霰と出せる。龍には、騎龍の性格が大きく影響するのだ。


 もうひとつの技は、騎龍自身の技量が問われる。剣技だ。

 騎龍の中には、剣や金属の(かん)を所持し、それを龍の上から操って攻撃する技を持った者がいる。その剣や環には、多く鎖がしっかりと結えつけられている。騎龍は、目標に向かって武器を投げ、鎖を繰ってその軌道を変えたり、手元に戻したりする。

 武器を繰る騎龍の中には、鎖を組紐に変えている、洒落た戦士もいる。紐は、敵の剣で斬られる可能性が高い。けれどもあえてそれを使うのは、ひとえにおのれの技に自信があるからだ。剛鋭などはそうだった。



 調練終了の合図を受けて、すべての龍は地上に降り立った。それぞれの主人の意志に従い、如意珠に戻っていく。

 剛鋭の龍から下りた賢歩が、玉髄に駆け寄った。

「どう? 感じ、つかめそう?」

「はい。ご指導、感謝します」

 玉髄は拱手した。龍がどうすれば動くか。どう思えば彈が出るか。玉髄はその感覚をつかみかけていた。

「玉髄クンの龍は、翼のある分、制御が大変だからね。もっともっと、精進してね」

 玉髄の龍は、蛇体にそれと同じくらいの長さの細長い翼を持っている。翼をそなえている分、敵からの彈を避けづらくなる。目立つために、狙われやすくなる。

「んー……そんな不利な条件もあるけど、それを補ってあまりある力を持ってるからね。大丈夫、あとはキミ次第だよ」

「はい」

 玉髄は表情を引き締めた。

初出:2009年己丑12月31日

修正:2013年癸巳07月15日

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