表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍は吟じて虎は咆え  作者: 南紀和沙
第三章
18/39

新たな出会い

虹玉髄コウギョクズイ……龍を操る力をさずかったことで、蟠大湖で訓練を受けることになる。

朱剛鋭シュ ゴウエイ……峰王国軍前衛将軍。龍を操る力を持つ。

甘喜玲カン キレイ。右衛将軍・風加羅フウカラの配下。騎龍見習い。

炎亮季エン リョウキ……左衛将軍・天泰壱テンタイイツの配下。騎龍見習い。

(来てしまった……)

 玉髄(ギョクズイ)は、蟠大湖(ハンタイコ)に連れてこられていた。


 蟠大湖は、峰国東部にある、この国でいちばん大きな湖だ。

 峰国東方をめぐった川が幾筋も注ぎ、「龍たちがわだかまる湖」とも言われる。その湖は、上空から見ると、満月の前に三日月が重なったかのように見える。湖の半分あたりの場所で、周囲の山が両側からせりだし、湾になっているのだ。

 そしてその湾は、王国軍によって管理されていた。騎龍たちを鍛える場として、だ。穏やかな水面に漁師の姿はなく、兵装の者があちらこちらを動き回っていた。


 玉髄は待機しておくよう言われたので、やることもない。人気(ひとけ)のない物陰に座り込んで、湖を眺めていた。

 湖から吹く清涼な風。浅瀬に生える葦が、茎を波のように揺らし、葉を波の泡沫に見立てる。(あお)い。空も水も葦も、青と緑を重ねあって、碧い。

 だが、その碧い匂いを胸におさめても、玉髄の憂鬱と不安は消えなかった。

「はぁ……」

 玉髄は、数日ぶりのため息をついた。

 彼にとって、先の(いくさ)のごとき気づまりな旅をしたからだ。

 あわただしく王都を出て、しかも自分を快く思っていない剛鋭(ゴウエイ)と道中をともにした。彼らを護衛したのも、剛鋭の手の者ばかり。息をするのも、思わずはばかりそうになったのだ。

 そして、視界いっぱいに開けた水の光景も、これから彼を鍛えるための場所だ。どれだけしごかれるのか、想像するだけで憂鬱だった。

「あ! ねぇ、もしかして、あなたが虹玉髄(コウギョクズイ)殿?」

「そうだけど……君たちは?」

 名前を呼ばれて、玉髄は振り返った。憂鬱が途切れた。

 見れば、二人の若い兵士が立っていた。歳の頃は、玉髄と同じくらい。片方は黒髪の少女、もう片方は赤毛の少年だった。

「あたし、甘喜玲(カンキレイ)風加羅(フウカラ)将軍のとこの、騎龍見習いよ」

「俺は炎亮季(エンリョウキ)(テン)将軍のもとで、騎龍見習いとして修行してる」

 二人の眼には、きらきらとした輝きがある。すでに気が重くなっている玉髄とは正反対だ。

「よろしく……」

「なんだよ、元気ないじゃないか!」

 いきなり背中を叩かれた。思わず玉髄は咳き込む。

「けふっ、き……君は元気そうだね」

「あったり前だろ! 騎龍になって、初めての正式な調練だからな。ここで力を見せれば、上への道も開けるってモンだぜ!」

 亮季(リョウキ)と名乗った少年は、輝くばかりの笑顔だ。

 まぶしい、と玉髄は思った。希望にあふれた彼らは、上に登ることを夢見て――そして、つかもうとしている。自分にはない感情だった。

「ね、ね、宮中ってどんな感じなの? あとで聞かせてね~」

 喜玲(キレイ)が、年相応の興味を持って、玉髄にねだった。その顔にも希望があふれている。

「見習いども、こっちへ来い! 始めるぞ!」

 剛鋭の怒鳴り声が聞こえる。

 玉髄は思わずすくみそうになったが、もう二人の若者は、水の輝きを瞳に宿した。

「はいっ!」

「よし、行こうか」

「ああ……」

 深呼吸のふりをしたため息を吐いて、玉髄は立ち上がった。

初出:2009年己丑12月06日

修正:2013年癸巳05月19日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ