第三十四話
ケイコが落ち着いてから、ハヤトはアカネの部屋へとやってくるのだった。
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「おーい、アカネいるかー?」
扉をノックをして声をかけるが返事がない。
部屋はケイコから聞いた。
結局、泣いた理由は聞かなかった。いや、聞けなかったというべきか。
そんなケイコの様子を見て、俺は決意したのだ。
これ以上、アカネを放っておくわけにもいかないと。
今日できっちりケリをつけなければならない。
「アカネいるのか? 入るぞー?」
鍵がかかってなかったので俺は中へと入る。
中を覗いても明かりはついておらず薄暗い。
でも中にいるのは間違いないようだ。
「ちょっと、何勝手に入ってきてるのよ! 返事してないでしょ!」
「ご、ごめん。アカネとちゃんと話をしておこうと思ってさ」
部屋の隅で壁に寄り掛かるように座ってうつむいていたアカネが、俺のほうを見るなり口調を荒げた。
しかし、俺はそんな言葉もお構いなしにアカネのほうに歩み寄る。
今日は逃げるわけにもいかないのだ。
「電気もつけずに何やってんだよ、せっかくの温泉なんだぞ?」
「放っておいてよ、一人にしてよ!」
俺はそんな風に怒るアカネの少し横に同じように膝を曲げて座る。
アカネのほうを見ないで薄暗い天井を見上げていた。
「話、聞いてやれずにすまなかったな」
「何よ今更、別に謝ってもらいたかったわけじゃないし」
なんとなく謝っておきたかった。
今までずっとうやむやにしてたこと、傷つけていたことを。
「なあ、結局話って何だったんだ?」
「……ふん、わかってるくせに」
ああ、そうだな。
俺は気付いていたはずだ。アカネの気持ちに。
でも気付かない振りをして逃げていたんだ。
「えっと、その……ごめん」
「なんで謝るのよ……どうしていつもそうなのよ!」
自分で自分が情けなくなる。
でも俺はもう逃げない。逃げたくない。
「ごめん、だって俺はルシアのことが――」
「それ以上言わないで、わかってる、わかってるから!」
俺の言葉を遮るようにアカネが言った。
そうだよな、アカネも気付いてるからこそ苦しんでるのだ。
「ごめん……」
「…………謝ってなんてほしくない、謝るくらいなら最初から告白なんてしてほしくなかった! そのせいで私は……私はッ……!」
俺は謝るしかなかった。
自分の不甲斐なさを、ただひたすら謝るくらいしかできなかった。
アカネは顔を下に向け泣いているようだった。
何をやってるんだろう、こんなつもりじゃなかったのに。
胸が締め付けられる思いだ。
こんな情けない俺のどこがいいというのか。
嫌われて当然のことをしているのに。
告白しておいて、他の子が好きだなんて最低な男なのだから。
「ごめん、そろそろ行かないと。まあ元気だせよ、っと俺が言えた事じゃなかったな」
しばらく無言のまま座っていた俺が立ち上がりそう告げると、アカネは顔を上げる。
伝えたいことは伝えた、もうこれ以上俺にできることは何もない。
「待って、行かないで。私を一人にしないで……」
そういってアカネは立ち去ろうとする俺に後ろから抱きついてきた。
俺は何も言うことができなかった。
アカネの気持ちには気づいていたはずなのに……。
人に好かれることが、これほど苦しいことだなんて想像もしていなかった。




