第二十三話
ハヤトは今日もまた眠れぬ夜を過ごしていた。
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はあ、眠れねえ。
さすがに風邪でダウンしてたとはいえ昼間に寝すぎたか。
いや、それもあるが風呂での光景が目に焼き付いているのが原因かもしれない。
偶然とはいえあんなものを見てしまったら興奮して眠れなくなるってもんだ。
しかし、しかしだ――。
そのせいでルシアに嫌われたかもしれない。
なんてことをしてしまったんだ。
そんなつもりじゃなかったのに。
過ぎたことはもうどうすることもできない。
俺はこのままムッツリというレッテルを貼られたまま生きていかねばならないのだ。
はあ……。
こんなんじゃとても告白どころじゃないよ……。
あー、もう眠れねえし、ウジウジ考えるのも面倒だ。
気分転換にオンラインゲームでもやるか……。
≪あれ? ハヤトがこんな時間にログインするなんて珍しいな≫
≪おう、ケータこそもう1時過ぎなのにまだやってたんだな≫
俺がログインすると、ケータがまだインしていた。
そして、チャットで声をかけてきたのだ。
ケータはオンラインゲームの友達でいつもよく一緒に遊んでいる。
直接年齢を聞いたことはないが、同い年かちょっと上くらいだと思う。
ユウジ以上にスケベなやつなんだが、よく俺の相談相手にもなってくれている面倒見のいいやつだ。
≪なあ。三日前のあれ、どうなったんだ? ほら例の好きな子に告白するって言ってたやつ≫
≪あ、あー。あれか……振られたよ。そりゃもうこっぴどく! トラウマが残るくらいに≫
そう、告白する勇気をもらったのもケータのおかげでもある。
俺が悩んでると、言わないで後悔するより言って後悔するほうがいいと後押ししてくれたのだ。
≪あちゃー、そうだったのか。俺が告白しろっていったばかりにすまなかったな≫
≪いやいや、ケータのせいじゃないって。それに今はそれどころじゃなくなったし……≫
そう、問題なのは告白後だ。
まさかルシアが異世界から現れるなんて思いもしてなかったわけで。
俺はアカネのことよりルシアのほうが気になっちゃってるわけで。
それが原因なのか、ルシアとアカネがものすごく険悪だったりするわけで。
俺はこれまでの経緯を軽くケータに打ち明けた。
≪ほー、三角関係ってやつかあ。いやあ青春してるねえ。モテないっていってたわりに大人気じゃん≫
≪いやそれが俺にもよくわからないんだって。実際、俺のことを好きなのかどうかもわからないし≫
そう、ルシアもアカネも俺のことをどう思ってるのかがわからない。
アカネは俺の事を振ってるという事実がある。
ルシアにだって昨日の一件で完全に嫌われたかもしれない。
≪それなら、直接聞いてみるしかないんじゃないかなあ? それで今はそのルシアって子のほうが好きなのかい?≫
≪うーん、俺も自分のことなのによくわからないんだよ。それでつい流されるままになって二人を傷つけてるのかも≫
そう、俺がはっきりしないせいでもある。
しかし、直接聞くってのはやっぱり怖いな。
面と向かって嫌いです! なんて言われたら立ち直れないかもしれない。
≪直接がダメなら、間接的に探りを入れてみるとかはどうかな? なんなら今寝てるとこに突撃して襲っちゃうとか≫
≪それのどこが間接的なんだよ! まあ、少し遠回しに聞いてみるしかないかあ≫
でもどうやって聞けばいいんだろう?
そもそもこんなのんびりしてる時間はあるんだろうか。
ルシアがいつ異世界に帰るかは未だにわからないままだ。
――内心、俺は少しばかり焦っていたのだった。




