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総集編(第1話~第5話)

ルシア視点での総集編となります。

ご注意ください。

 ――もう一度勇者様に会いたい!


 その願いを叶えるために私はハヤトの世界へと行くことを決意した。


「よし、転移魔法の準備は万端だ、いつでもいけるよ」

「わかりました、お願いします」


 ロギと共にハヤトの世界へとやってきた。

 着いたのは見知らぬ場所、見知らぬ土地。

 自分のいた世界とは違い、建物が密集していて窮屈な印象だった。


「ここが勇者様の世界……!」

「おい、一人で勝手に進むな。見知らぬ土地で迷子になったら厄介だからな」


 確かにロギとはぐれたら二度と元の世界へと帰れなくなってしまうかもしれない。

 何もかもが真新しい世界が私の胸を弾ませていたが、大人しくしておくことにする。


「ロギさん、勇者様がどこにいるかわかるのですか?」

「いや、正確にはわからん、だがラグールの召喚魔法の範囲から推測するとおそらくこのあたりであることは間違いない。あとは『声』を頼りに探すだけさ」


 魔法のことはチンプンカンプンなので私にはよくわからなかった。

 でもロギのことだからきっとすぐにハヤトを見つけてくれるだろう。

 しばらく、目を瞑り耳を澄まして集中しているロギ。

 私は高鳴る鼓動を抑えながらその時を待っていた。


「見つけたぞ、こっちだ」

「はい!」


 不思議な形の建物がたくさんある。

 そして綺麗に舗装された道にはクルマと呼ばれる乗り物がものすごい勢いで走っている。

 勇者様から話は聞いていたけれど、実際に見てみると驚きの連続だった。


「この家だ。ちょうど帰宅したとこのようだな。俺は魔法の研究があるから一先ず帰るがあとは大丈夫だろう? またしばらくしたら様子を見に来るからそれまで好きにしておくといい」

「はい、本当にありがとうございます」


 そういうと、ロギは再び転移魔法で元の世界へと帰って行った。


「ここに勇者様が……」


 私は心を躍らせながら、扉をノックするのだった。


「はーい、どちら様ですかー?」

「あ、あの私ルシアと申します。勇者様……ハ、ハヤト様はいらっしゃいますか?」


 出てきたのは可愛らしい女の子。

 どことなくハヤトに似ている、妹だろうか?


「はいはい、お兄ちゃんの知り合いね、ちょっと待ってて呼んでくるから」


 そういうと私を玄関に残し二階へと上がっていった。

 やっぱり妹らしい。

 それにしても、ついここまで来てしまったが会って何を話せばいいのだろう?

 嫌がられたりはしないかな?


 ものすごく緊張して待っているとしばらくしてハヤトが階段から降りてくるのが見えた。


「お久しぶりです、勇者様」


 そういうとハヤトは驚いた表情で口をぽかーんと開けてただただこちらを見ていた。

 そしてしばらく話をした後に部屋に案内された。

 ここが勇者様の部屋……思いのほか狭かったためハヤトがものすごく近くに感じられた。


 なんだかものすごく照れくさい。

 一目会いたいと思って来たというのに言葉が出ない。

 なんて声をかけたらいいのだろう?

 

 一月ぶりに会ったその姿を前に私の心臓は張り裂けそうだった。

 そして体温が急上昇していく感じがして不思議な気持ちだった。

 私がなんと声をかけていいかを迷っていると、ハヤトは落ち着かない様子で動き回っていた。


「あ、あの勇者様、どうかなさいましたか、さっきから立ったり座ったり……」

「え、あ、いや、なんでもない、なんでもないよ」


 私が来たことは迷惑だったのだろうか。

 いきなりだったし当然かな?


「え、えっと、その……わ、私……」

「う、うん……?」


 ハヤトに会いに来た、と言おうとしたが恥ずかしくなって口ごもってしまった。

 なぜだろう、私はハヤトに会いに来たのに――。

 それを伝えるのがなんだかものすごく照れくさくて言えなくなっていた。

 下を向いてどうしたらいいのかを考える。

 とりあえず落ち着かなきゃ、こんなんじゃハヤトに嫌われてしまう――。


「どうかしたのか、ルシア。俺にできることなら何でも力になるよ」

「あ、いえ、えっと……じゃ、じゃあ、しばらくの間ここに泊めていただけませんか」


 いきなり話しかけられて驚いた私はついそう言ってしまうのだった。

 私がそういうと突然、部屋の扉が開きハヤトの妹が勢いよく入ってきた。


「ちょっと、お兄ちゃん、どういうことよ」


 そして、そう言いながらハヤトに殴りかかっていた。

 いったい何が起こっているのだろう?

 その予想外の出来事に私はただただ目を丸くして見守るしかなかった。


「えー、えっと誤解だ、誤解。だよねルシア?」

「え、あ、あの私はただしばらく帰れなくなったので勇者様の家に泊めていただこうかと……」


 ロギがくるまでは私は帰れない、そのためには泊まる場所が必要なんだけども。

 何かおかしなこといっちゃったのかな?


「帰れなくなったってどういうことだ? てかどうやってこっちの世界にきたんだよ」

「えっと、その話せば長くなるのですが……」


 私は、ハヤトにこの世界に来た経緯を話した。

 でもハヤトに会いに来たというのが恥ずかしかったため、咄嗟に嘘をついてしまう。

 ロギに手伝ってもらってこの世界に来たが帰る方法がわからない、と。


 なんでこんな嘘をついてしまったか私にもわからない。

 ただ本当のことをいうのがなんだか恥ずかしかった、ただそれだけだった。

 ただ帰る方法がわからないのは事実だ。魔法についてはよくわからない。

 私はロギが迎えに来てくれないと帰ることもできないのだから。


「話が全く見えないんだけど、お兄ちゃん、この人誰、彼女? てか勇者って何?」

「あ、いや、彼女……ではないよ。ほら前に話しただろ、異世界の王女ルシアだ」


 ハヤトの妹がものすごい剣幕で怒っている。

 私がハヤトの彼女であると勘違いされたようだった。

 彼女ではない、か。まあそうだよね。

 私が一方的に好きなだけなんだろうなあ。


 あ、そっか。私ハヤトのことが好きなんだ――。

 今更そのことに気付いた私はなぜ恥ずかしかったのかが理解できたのだった。

 そしてその夜は、そのことで頭がいっぱいで満足に寝ることができなかった。


「おはよう、ルシア」

「あ、おはようございます。勇者様」


 朝になりハヤトが私に笑顔で挨拶をしてきた。

 ものすごく嬉しかった。


「今日はルシアのやりたいことをやろう。異世界に帰るまでにやっておきたいことはあるかい?」

「え? やりたいこと……ですか。うーん……」


 やりたいことと言われても思い浮かばない。

 私の当初の目的はもうすでに達成しているのだから――。


「ちょっと、お兄ちゃん! 今日学校でしょ? 一ヶ月前も一週間休んだのにまた休む気なの?」

「あ……。いやでも、ほらルシアがせっかく遠くから来てくれてるわけだし……」


 ガッコウ、か。そういえば話には聞いてたな。

 ハヤトにあまり迷惑をかけたくないし……。


「あ、あの……でしたら私もそのガッコウというところにいってみたいです」

「うん、いいねそれ。お兄ちゃんが学校でちゃんと勉強してるか見てきてよ。最近成績も落ちてきてるし怠けてるんじゃないかなぁ……」


 私がガッコウについていけばハヤトは普段通りで済むだろう。

 そう思って軽い気持ちで提案した。

 するとハヤトの妹も了承してくれたようだった。


「楽しみです。勇者様の話を聞いてガッコウというものがどういうところなのかすごく興味があったんです」


 ガッコウという場所に興味があったのは事実だし、何よりハヤトがどんな生活をしてるのかが知りたかったのだ。

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