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第十一話

 ハヤトはアカネの言動が理解できないまま首をかしげながら教室へと戻る。

 するとルシアが男子生徒に取り囲まれていたのだった。


---


「記憶喪失て本当ー?」

「珍しい名前だね。記憶喪失なのに名前は覚えてたんだ?」

「可愛いな、俺と付き合わない?」


 ぬあ、なんだこれは。

 俺がいない間になにやら大変なことに。


「おいおい、ルシアちゃんは記憶喪失なんだぞー。あんまり質問攻めにしたらかわいそうだろ!」


 俺が言おうとしたことをユウジに先に言われた。

 くそ。こいつ、ルシアに好かれようとしてるな?


「どうかしましたか、ユ……、あ、ハ、ハヤト……」

「おーハヤトー、アカネとの話はもういいのかー? モテ期ってやつか、うらやましいなあ!」


 ルシア、今また勇者っていおうとしたな?

 それにしてもなんか不安げな顔してるな。


「いや、別になんでもないよ。大体モテてるわけじゃねーから!」


 はぁー、ユウジのやつは相変わらず頭の中がお花畑なのかねえ。

 女子と一緒にいるだけで好かれてると思えるのはあんたくらいだよ。


「あ、そうだルシア。授業は理解できないかもしれないが大人しく座って先生の話を聞いてるんだぞ」

「お、ハヤトなんか教師になったみたいだな!」


 く、ユウジは能天気そうでうらやましいよ。

 まぁ、学校自体はなかったにせよなんらかの教育は受けてるだろう。

 受けてるよね? 王女様だし、無教育で育ったなんてことはないよね?




 授業が始まりしばらくして俺がルシアのほうに目をやると、すでに机に顔を沈めて寝ていた。

 ちょ、おま。自分で学校に行きたいーとかなんとかいって俺よりも先に寝るか普通。


「お、おい、ルシア寝るなー。起きろー」


 俺はルシアの肩を揺らしながら起こすと、なんとかまた授業を聞き始めたようだ。

 ルシアには高校の授業は退屈だったのだろうか。

 まあ俺も普段は寝てることが多いけど。あ、だから成績落ちてるのか、なるほど。


 気付くとまたルシアはすやすやと眠っていた。

 こ、コイツ……。

 たしかに1時間目の授業は、先生の声が子守唄のようで気持ちよく眠れるんだよな。


 うーむ、ルシアの寝てる姿を見てたらなんだか、俺も眠くなってきたな……。

 そういや昨日の夜はほとんど眠れなかったんだった。


 ちょっとくらい、ちょっとくらい寝てもいいよね……。

 俺もそろそろゴールしてもいい、よね……。


 …………。



「こらぁ、そこの二人ちゃんと起きて先生の話を聞きなさーい!」


 はっ、しまった。いつの間にか寝ていたようだ。

 先生に注意され他の生徒からは笑われた。恥ずかしい。


 時間にして10分ちょっとか、その割にものすごく長く寝た気分で頭はスッキリしている。

 ふと横を見るとルシアはまだ気持ちよさそうに寝ている。

 寝顔もなんか可愛いなあ。授業中でなければ写メで撮っておきたいくらいだ。


 先生はルシアのことをあきらめたのか呆れ顔で授業を再開している。

 それにしても起きる気配が全くないな。

 もしかして昨日の夜あまり眠れなかったのだろうか。


 いきなり見知らぬ世界の慣れない布団じゃ当然か。

 普段はお城の大きいフカフカのベッドだもんな。

 あの魔物の羽毛を使った布団気持ち良かったなー。またモフりたいなー。


 こうして授業内容が全く頭に入らないまま時は過ぎていくのであった。

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