番外編1
今回は10話記念の番外編です。
アカネ視点での話となるのでご注意ください。
その出来事は突然起こった。
毎日毎日同じことの繰り返し、時間だけが過ぎていく。
何もかもがありきたりで退屈な毎日だった。
しかし、その日は違った。
「アカネさん、好きです! ぼ、僕と付き合ってください!」
予想もしていなかった出来事。
クラスの男子に突然告白されたのである。
「ごめん、無理」
反射的にそういってしまった。
だって、告白されるなんて思ってもいなかったんだもの。
なんだか気恥ずかしくなり急いで教室へと戻った。
まるで全力疾走でもしたかのように心臓が激しく鼓動する。
なぜ、なぜ私?
告白してきたのは同じクラスの冴えない男子。
話したこともろくになかった。
即答はまずかったかな?
こっそりと廊下をのぞくと、茫然と立ち尽くす彼の姿があった。
その様子からは私をからかってるようには見えなかった。
家に帰ってからも、さっきの出来事が頭から離れない。
ほとんど意識してなかった相手からの突然の告白。
どうしても気になってしまう。
私なんかのどこが良かったんだろう?
美人でもないし、取り柄もない。
彼はどんな人なんだろう?
なぜか彼のことをもっと知りたくなった。
『ハヤトくんってどんな人?』
私はケイコにメールを送っていた。
しまった、こんなメールを送ったら勘違いされる。
『急にどうしたの?』
そっけない返事。
『ううん、なんでもない。気にしないで。それよりさ……』
やっぱりやめとこう。
恥ずかしくなり話題を変えた。
しばらくケイコとメールのやり取りをした。
それでも彼のことが頭から離れない。
なぜ?
今までこんなこと考えたこともなかったのに。
そして翌日、ケイコと話していると彼が教室に入ってきた。
気恥ずかしさから目線だけで確認する。
すると見知らぬ女の子と一緒にいる。
そして何やら仲良さそうに話しているみたいだった。
クラスの女子と会話してるところを見たことなかったのに。
一緒にいる子は一体誰?
「よー、ハヤト。また彼女とラブラブか? うらやましいなあ!」
男子の声がかすかに聞こえてきた。
彼女? ハヤトくんの彼女なの?
どういうこと?
昨日の告白はなんだったの?
ハヤトくんがこちらを見てきそうだったので慌てて視線を下す。
悟られないようにそのままケイコと話を続ける。
何が一体どうなっているのだろう。
昨日、告白されたのは私の勘違い?
夢でも見ていたというの?
「ちょっと、アカネ聞いてるの?」
「あ、ごめん。聞いてるよ」
ケイコとの会話もままならない。
私は一体どうしちゃったんだろう。
そうこうしているとホームルームが始まってしまった。
「えー、突然だが今日からこのクラスに転校生がやってくることになった! 記憶喪失のルシアだ。みんな仲良くしてあげるんだぞ!」
「え、えっと記憶喪失ということになったルシアと申します。よろしくお願いします」
さっきの子だ。
記憶喪失?
それならなぜうちの学校に?
クラスが笑いに包まれていた。
冗談なの?
何が何だかわからない。
「よし、挨拶は済んだな。ルシアはハヤトの隣に座っていろいろ教わるといい。教科書とかはあとで先生が用意しておくから」
やっぱり知り合いなの?
――彼女なの?
ホームルームが終わると気付いたら私は彼の前に立っていた。
「ハヤトくん、ちょっと話があるんだけど」
言ってしまった。
このままわけのわからないままにしておきたくなかった。
言った後に恥ずかしくなってそのまま廊下に連れ出した。
「なんだよ、話って教室じゃ言えない話なのか? 昨日のことだったらもう忘れてくれ俺が悪かった」
「は、悪いってなによ。冗談だったわけ? 私、あのあと真剣に悩んだんだからね」
――しまった、いきなり謝られてついカッとなってまた反射的に言ってしまった。
ただ彼の気持ちが知りたかっただけなのに。
「あ、いや本気だったよ、うん、でももういいんだ」
「どういう意味よ! やっぱり私の気持ちをもてあそんでたんだ?」
何言ってるの私。
言いたかったのはそんなことじゃなかったのに――。
なんで私こんなにムキになってるんだろう?
「何をいってるかようわからん。授業始まるしそろそろ教室戻るぞ。落ち着いたらまた聞くから、な?」
その言葉で私はもう頭の中が真っ白になっていた。
なんで私が取り乱しているんだろう?
頭の整理ができないまま逃げるように教室へと向かっていた。
――こんなはずじゃなかったのに。
私の退屈な日常はその日を境にくるくると、くるくると回り始めたのだった。
~登場人物紹介~
名前:アカネ
職業:高校生
年齢:16
ハヤトと同じクラスのあまり目立たない普通の女の子。
告白されたのをきっかけにハヤトのことが気になりだす。
名前:ケイコ
職業:高校生
年齢:16
アカネの親友で天真爛漫な女の子。
本編に登場するかは未定。




