互いの手は一つの模様
「結婚しよう」
「やだ」
「うん。…三十七…」
「三十八だよ」
「いったい何回言えば結婚してくれるわけ?」
「それ、回数じゃないっていつも言ってるでしょ」
「じゃあ、なにさ、花束やら、給料三か月分のエンゲージリングやらを持ってくればいいの?」
「あと場所ね。あたし、試着し終わった瞬間にプロポーズされた経験ってないのよ」
「そっちのが思い出になるじゃんか」
「そんな思い出いらないし!」
「じゃあ、やっぱ夜景の見える場所とか、憧れちゃってるの?」
「そうそう」
「べた」
「いーじゃん! 少なくともここよりは! ここ、店員さんだっているし、他のお客さんもいるんだよ?」
「…つぅかさ、その服似合ってんなー」
「え?」
「買えよ、それ。すっげーかわいい」
「買って?」
「…うん」
「って、うそだよ。君、給料前じゃん」
「なら、ちょっと待ってろ、ココで」
「え? なんでよ、ってちょっと―…」
a few minutes later...
「あぁー…疲れたぁぁぁ」
「ね、どこ行ってたの?」
「一階の、ATMんとこ…。エレベーター来なくてさ、でも階段なんて使うもんじゃねぇなー。歳だよ、これ、完璧に」
「大丈夫? 酸素、足りてる?」
「まぁー、大丈夫…。それより、ほら、お会計」
「あ…うん。…いいの?」
「いーの。 すいませーん、これください」
「はい、ただいま。……えーっと、一点で二万八千円になります。…三万円からお預かりいたします」
「ねぇ、なんか…」
「ありがとうございましたー」
「何?」
「なんか……ごめん」
「なーんでよ、かわいくってごめんなさいってか?」
「違うよ、そうじゃなくって…」
「…なぁ。結婚、しよっか…?」
「……………。…はい。お願いします」




