空虚の人生に花を咲かす
一応、お話は感動系のお話です。
感動を誘うには、少し短いとは思いますが是非ご覧下さい。
身長159cm
体重0.000001kg
趣味は人間観察
私はこのモボドラにたった一人で暮らしている神様
理由?
そんなのもうとっくの昔に忘れてしまった。
何せもう2000年も前の事だから……。
いつ頃からだろう、この日本という世界を見守るための神様達が消えて無くなりはじめたのは……。
いつ頃からだろう、みんな祈る事をやめてしまったのは、
もう、皆その役目を終え力の落ちこぼれの私一人になってしまったよ。
「でも今日こそは皆みたいに……。」
天界で、公園に一人で居る翔太の姿を見ていた私は、ついに我慢ができなくなり、翔太の前に降り立った。
すると、少年は私の頭の先から足の先まで、ゆっくりと一瞥すると顔を傾げた。
「お姉ちゃんだあれ?」
「私?一応…神様だけど」
私の目の前に立っている少年の名前は斉藤翔太
「へえ~凄い!お姉ちゃん神様なんだ」
純粋な瞳をした、まだ10歳くらいの少年は、疑う事を知らないので大変助かる。
勿論私は、神様なのだから別に嘘をついている訳ではないのだが、恐らく人間の大人というモノであれば信じてくれないだろう。
「それと翔太、私は神様だから人間のような『お姉ちゃん』なんて呼び方はやめろ」
普通本来神というものは地上に降りてはならない。
何故かって?地上は酷く汚れており神様の体は腐ってしまうからだ。
しかし、天界で下界の様子を見ていた私には一人でブランコを漕いでいる翔太の姿は凄く寂しそうで居ても立っても居られなくなり降りてきてしまった。
勢いで降りてきたは、良いものの正直何をすればいいのか分からない。
「そうだ!お姉ちゃんと一緒にボール遊びしようか?」
その場しのぎでトッサに出た言葉だったが、シンプルで名案な気がする。
「お姉ちゃんも自分の事お姉ちゃんって呼んでんじゃん」
出だしくらいカッコよく決めたかったのだが、いきなり揚げ足を取られてしまった……。
現れて直ぐに小学生に突っ込みを入れられるなんて、不覚だ…。
「それで、やるの?やらないの?」
「うん、やりたい」
私は、翔太にサッカーボールをパスしながら、少し気になっていたことを聞いたてみた。
「翔太、どうしてそんなに怪我してるの?」
天界からいつもポツリと置いてあるテレビの様な物で下界を見つめていたのだが、様々な情報が一気に流れるので正直頭の整理が出来ていなかった。
「う~ん、良く分かんないや、友達がうじうじしてるからって……」
こんなにも、簡単に人は人を傷つけることができるのかと思うと、怒りがこみ上げてきた。
でも、やはり話をしていて分かった。
翔太は良い人間だと……。
本当の痛みを知っている人間の心はなぜだかいつも温かくてとても柔らかいものに感じてしまう……。
「そうだ翔太、さっきはブランコで悩んでたみたいだけど、どうした?」
何故だろう?今日はとても気分が良い、人間の良くやっている相談というヤツに乗ってやるとするかな。
「僕、昔から友達作りが苦手で人前では、ずっとモジモジしてしまうんだ。だからどうしたら直るか考えてたんだ」
その言葉を聞いた私は自分の胸をエッヘン!と言うように叩き自信満々にこう口走った。
「私と一緒に友達作りをしよう。明日から早速だ」
「へっ、いいの?」
私は、嘘をつかない!約束を守るのは当然の事である。
「じゃあな~」
翔太と別れた私は天界に帰るのも面倒だったので、翔太と出会った公園で眠ることにした。
いわゆる野宿という奴だ。
しかし神様の服は汚れたりはしないたのだ。
何故なら私の体にはバリアの様な物が張っているのだ。
私でも、何が張ってあるのか良く分からないが、そのあたりは神様のご都合主義だから許しい欲しいトコロである。
ただでさえ白い布切れの様な者を着せられているのに、汚れてしまったらホームレスと勘違いされてしまう。
まあー今から野宿するのだから、尚更だ。
「ふっふー♪」
なぜか明日がとても楽しみになっている。
そう思うと自然と眠りに……。
しかしあることに気がついた。
「神様って眠らないじゃん!」
そんな事を呟き長い一夜が過ぎた。
「あっ翔太~!」
次の日、小学校に移動している翔太の姿を見つけた私は上機嫌で声をかけた。
すると、翔太はそれに気がついたのか遠くから手で大きくバッテンを作り何かを訴えかけてきた。
「なんだよ」
私がそう問いかけながら翔太に近づくと少し嫌な顔をされてしまった。
私が何か悪い事でもしたか?イヤイヤまだそんなに出合って間もないのに下手な接しかたなどするはずがない。
「昨日はあんなに遊んでくれたじゃないか」
そう小声で言うと翔太はこんな事を行ってきた。
「こっこんなキレイなお姉ちゃんが俺の横にいたら、俺が目立つじゃないか」
頬を真っ赤に染め照れた様子で、そう言い放った翔太。
「キレイかどうかは知らんが目立って何が悪い? 今から人と仲良くなるために頑張るくらいが丁度いいじゃないか。それに残念ながら私は神様だから普通の人に姿は見えない」
「エッお姉ちゃんもしかして人に見えないの? やった」
前文を完全にスルーし後ろの文章だけを上手いこと理解した少年である。
確かに、神の存在が知られないように、私には姿が見えなくなる力が込められているようだ。
「じゃー翔太まず、アイツに話かけるんだ」
早速空気を切り替え私は本題に移った。
「いやっいきなりは無理だって」
焦る翔太に対して、私は神様のくせに小悪魔のような笑みを浮かべた。
「キッカケが欲しいのか」
そう言うと私は翔太の背中をどついた。
ドンという音と共に翔太は前にいた人にぶつかった。
こんくらいしないと積極的ではない翔太が前に出るにはキッカケが足りないと考えたからだ。
「うあっ!ゴメンちょっとよそ見しててつまづいちゃったよ」
必死に弁解する翔太、少しだけだが話が出来ているようだ。
しかし、翔太はそんな事お構いなしに、弁解に余念がない。
「ホントゴメンね……」
と謝罪をした後、今度は私に向かって、小さくこう言った。
「ふう、こんな無理やりじゃ話すどころじゃないよ」
私は内心もうちょっと気の利いた話に持っていけよ。と思ったが口には出さなかった。
暫く一緒に歩いていると、大きな建物が見えてきた。
「な〜翔太なんだアレ?」
私は真ん中に大きな時計のついている一面白塗りの建物を指刺して聞いてみた。
「アレが僕の学校、中ノ村小学校」
アレが翔太の通う学校か。
いつも、上から見ているのだが実際、地に足をつけてしまうと以外と何処が何処だか分からない物である。
確かに、あんな変なトコロに時計をつけるトコロなど日本では少なかったかもしれない。
学校につきHRを終えた教室翔太にはいってきたのは、先生である。
本来は朝の時間に何か翔太にひとアピールして欲しかったのだが、そうこうする時間もなく授業が始まってしまったのだ。
「12×17の答えは何でしょうか?」
翔太は計算は比較的速い方なので、自信満々に手を上げた。
「はいっ吾郎くん」
しかし、次々に生徒が手をあげるため、直ぐに周りに埋もれてしまうのだ。
かと言って、先生が喋らなくなると周りは静まり帰ってしまい特に変化が起こりそうにもないのだ。
「これじゃ、仲良くなるのも難しいな~」
と呟くと、翔太は他の人には聞こえないくらいの声で
「そうだよね~」
とため息交じりに呟いた。
授業が終わり私は一人でいる翔太の机の目の前に立つと机の両端に手を置き翔太に作戦を持ちこんだ。
「今日の昼休憩と6時間目の体育の時間は超大切だからな」
私は翔太に念を押す様に言うと翔太もフシューという鼻息を吐きやる気満々のようだ。
ようやく待ちに待った昼休憩がやって来て翔太はいきなり黒板に落書きを始めた。
「へ~翔太結構絵上手いんだな」
私が翔太の黒板の絵を見ながらそう言うと翔太はまんざらでも無い顔をした。
しばらく、落書きしていると翔太の横に並んで太一がやってきた。
「へへっ俺もやる~」
いかにもヤンチャそうな太一は翔太の横で絵を描き始めた。
これはいい調子じゃないかと思いしばらく見ていると、後ろで見ていた少女が声を掛けた
「うわ~翔太君、絵上手~」
黒板を見てみると、そこにはやたらとクオリティーの高い竜が絵描かれていた。
「おいおい翔太、本格的すぎねーか」
と私が言うと、翔太は少し誇らしげな顔になっていた。
しかし、太一の反応は私とは大きく異なっていた。
「やーめた、なんかつまんねー」
そう言うと太一は自分が描いた場所も消さず、スタスタと何処かへ行ってしまった。
「あちゃあ~」
私は頭を掻きながら、軽く眉間にしわを寄せた。
翔太もがっくりと肩を落とし、少しショゲ気味だ。
「案外、難しいもんだな~」
どうやら、ただ上手いだけじゃ見てる方としてはあまり面白くないのかも知れない。
もう昼休憩も終了五分前なので、次にかけよう。
そして、6時間目の体育。
「おいっ翔太、運動が出来る者は人気者になりやすいんだ」
「確かに、太一君も忠弘君も運動が出来て、人気者だ」
そう言うと翔太はアスリートさながらの準備運動を始めた。
「よしっ翔太そのいきだ!」
「うん!」
「ところで今日の体育は何をするんだ?」
「明日は運動会だから、マラソン練習するんだ」
「そうか頑張って一位目指すんだ。」
「うん」
そう言うと翔太は、スタート地点に移動した。
マラソンは天界で何回も見たが生の映像は初めてだ。
しかし、小学生の駆けっこなのに、なんだか皆固い、見ているコッチまで緊張してしまう。
「用~意ドン!」
先生の掛け声と共に皆一斉に走りだした。
翔太の出だしは……。
31人中6位
出だしは悪くない、正直期待してもいいかも知れない……。
私は、翔太に声を掛け、順位が上がる事を祈った。
それから30分後には翔太は次々と後続者に抜かれてしまい結果は31人中24位でのゴールだった。
とても、良い順位だとは言えない。翔太も呼吸を荒げながら、とても悔しそうな表情をしている。
「やあ~翔太君良く頑張ったよ。最後のラスト・スパート凄かった」
無理のあるフォローだとも思ったが、しないより幾分かましだ。
もっと励ましたかったが翔太の落ち込んだ姿をみると、声がかけれなくなってしまった。
「帰りの会を終わります、気をつけ、礼」
学校も終わり帰りの支度をする翔太に向かって私は声をかけた。
「なあ~昨日の公園でまた遊ぼうぜ」
翔太は小さく頷いた。
ホントは、何もせず一人にしてあげたほうがいいのかもしれないのだけれど、何もしないのは苦痛なんだ。
私は2000年以上前から天界で人々を見下ろしてきた。
おつげをするしか力のない私には、誰かを助けることなんて無理だと決めつけて、何事もすぐに諦めてきた。
いつか慣れるそう信じてきた後悔が、日増しに強くなっていった。
『救おう』私は心に誓い翔太と共に公園に向かった。
【誓い】
一面真っ青だった空もゆっくりと紅色に変わっていった。
鉄と鉄が重なり合うブランコの反復音と共に、私と翔太は揺れていた。
「翔太、私たちって友達かな?」
沈黙の中さり気なくそんな事を聞いてみた。
「う~ん、どうなんだろ。こうゆうのって友達っていうのかな」
確かに、私にも良く分からない。神と人間は友達として成立するのだろうか。
「でも、一緒に時間を共有してるんだよ」
なに言ってるんだろ、これじゃまるで私が友達になって欲しいって言ってるみたいじゃないか。
「そうだよね。私がここに居るのは、翔太の手助けをするという使命のためだもんね。それ以上でも、それ以下でも……」
正直この声は小さすぎて翔太に聞こえなかっただろう。私は自分に気合をいれてこう言った。
「よしっ明日は大事な運動会だ。精一杯頑張ろう!!」
そう言うと私は、自分の小指を翔太に突きだした。
「頑張る」
翔太はそう呟きゆっくりと私の小指を自分の小指で握りしめた。
「約束だぞ~。今日もありがとな」
私はそう言うと、翔太に背を向けて静かに消えていった。
その夜……
野宿場所を適当に決めた私は静かに目を瞑っていた。
ガササッ!
なにやらヤブを搔き分けているような音がする。
なんだこの音?
私は音の原因が気になりゆっくりと目を開け辺りの様子を伺った。
しかし、辺りには何も無く特に気にする程でもないようだ。
大丈夫……そう感じた瞬間物凄い痛みが私の両手を襲った。
どうやら、音の原因は、私の腕かららしい。
「んぐっ!!」
痛みで両手に目をやると、なんと私の手が半透明になり透けているのである。
「イタイ、イタイ」
物凄い激痛が手から体へと伝わってくる。
「そうか……私には、もう時間がないんだ……」
地球へと降り立った私の体は、この数日間で異常な速さで変化している。
もうもって数日だろう。
その夜、私はその激痛を、歯を食いしばって耐え続けた。
「はあはあ」
長かった夜も終わりようやく朝がやってきた。
痛みと言うものを味わった事の無い私は、正直体が動かないくらいキツク感じる。
しかし、今日は翔太の大切な日なのだ。行かなくては。
そう思い体を動かすが体が思うように動かず、フラフラとしている。
もう、運動会はとっくに始まっているのに、まだ私は立ち上がったばかりなのである。
「クソッ!」
私は小さくそう呟きゆっくりと歩きだした。
街の途中、不良らしき人物が声を出しているのが聞こえてきた。
「おいっ姉ちゃん」
恐らく誰かが絡まれているのだろう。
私は痛みに耐えながらその不良を見てみると、目が合った。
「あんただよ」
確かに、私に声を掛けている。
なんで?私は翔太にしか見えないはずなのに……。
すると、また体に激痛が走った。
「うっ!!」
そうか、力が弱まっているんだ。
そう気づいた時にはもう遅く男は勢いよくコチラに迫ってきた。
今の私では、力で振り切るのは無理だろう。ヤバイこのままでは、間に合わなくなってしまう。
私はその瞬間、もう残っていない力を振り絞って、姿を消した。
「あれ?何処行った?」
たった数十秒だったが今の私には十分な時間だった。
「いかなくては」
移動を開始して、3時間ようやく翔太の通う学校にたどり着いた。
「もう終わってるよね……。」
私はグランドの近くをトボトボと歩いていた。
すると、なにやらまだ声がする。
「頑張れ~頑張れ~!」
声援?
まさか!皆が応援する賑わいをか掻き分けて見てみるとその先で走っていたのはなんと、翔太だった。
体はキズだらけでボロボロになっている。
不器用な翔太の事だ、恐らく私と頑張ると約束したため一位を目指して、何度も転げてしまいそれがあだとなってしまったのだろう。
「いいんだ翔太一位じゃなくったって、そこに応援してくれる仲間が出来たんだから……」
私は翔太のゴールを見届けるとまたゆっくりと歩き出した。
役目は終わった。
本来は天界に戻りたいトコロなのだが、残念ながらもうそんな力は残っていないみたいだ……。
私はひたすら歩き続け翔太と出会った小さな公園に辿りついた。
勿論、この場所にいた時間は天界にいた時間に比べれば微々たるものだったかも知れない。
でも、ここに居た時間は私にとって、生きる価値に値するものだったと思う。
ゆっくりと消えていく体を感じながら私はこう呟いた。
「翔太、友達だったのかな」
恐らくもう分かることのない疑問になるだろう。しかしそれでも良い気がする……。
私はゴクリと生唾を飲み込み目を瞑りこの世から消える覚悟を整えた。
「おねちゃ……」
荒れた呼吸音で良く聞こえない。でも、確かに何か聞こえる。神も走馬灯を見るのだろうか?
「お姉ちゃんは友達だ」
イヤ確かに聞こえる、私は声の聞こえる先を振り向いた。
「しょッ翔太!」
「みんなに、聞いてみたらコッチの方向に行くの見たって、それならもしかしたらって」
私は、その言葉を聴いた瞬間、涙が頬を伝った。
「友達出来たんだな、最後にそれを聞けて良かったよ。」
「お姉ちゃん……消えちゃうの」
翔太が今にも泣き出しそうな顔でコチラを見てくる。
「私は欠陥品だからな、人間の支えとして尊敬や信仰の対象として生み出された私が感情を持ってしまったら、完全な平等はなくなる。私は存在理由がなくなってしまうんだ」
私がそう言うと、翔太まで泣き出してしまった。
「うっうっ行かないでよ、初めて出来た友達なんだよ。それに僕、まだ一位になるって約束守れてないよ。来年も運動会見に来てよ」
「いいやそういう訳には行かない私は精一杯頑張ろうって約束をしたんだ。その約束を翔太はしっかり守った。」
「お姉ちゃん、待ってよ」
これ以上何か言われたらどうかなってしまいそうだ。
最後くらいキレイに終わらせてくれ……。
「アナタは私にとって最高の友達…ありがと」
そう言うと翔太を置いて私の体は粒子程の大きさにバラけ星空に飛んで行った。
【エピローグ】
あれから数日後、私は翔太の家のチャイムを鳴らした。
なぜ生きてるかって、人間から生み出された私の素体は人間だったのだ。
あの後、存在価値の無くなった私は粒子になり神としてのコロモが剥がれ落ちた、そして素体の人間だけ残り再構築された。
私は翔太を助けるために地上に降りた。しかし、それは言い訳に過ぎず純粋に私も寂しかったんだ。
でも、今は違う。
このドアの向こうには、2000年間いなかった『友達』がいるのだから。
「はーい」
今日はいつにも増して元気な声だ。
扉が開かれると同時に私は大声でこう言った。
「これからはお姉ちゃんって呼んでいいぞ」
それは、果てしない時を生き生まれ変わった少女とたくさんの友達に囲まれた少年の物語だった。
-----------END-----------
わざわざ読んでくださった方ありがとうございました。
題名負けしてますね。
すいません
まだまだ、未熟者ですが、どんどん書いていきたいです。
何かありましたら、絶賛(無いか)から批判までしっかり受け止めて行きたいのでよろしくお願いします。