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00はプロローグにあたります。
本編とは若干書き方が違います故、ご了承の上だらっとお読みくださいませ。
俺こと、夜野刃が二年A組に籍を置く、ここ久野々木学園には七不思議というやつがある。
学園にまつわる七つの不思議な話で、学園七不思議。
久野々木学園に限らず、どこの学校にも必ずといっていい程存在する不思議なんだかポピュラーなんだかよくわからないアレだ。
全然珍しくもなんともない。
話の導入部に用いるには面白みにも欠ける。
大体、今時七不思議なんて本当に信じてるヤツなんてそうそういないだろ? 「なんと、音楽室のベートヴェンの目が夜中……光るんだ!」「キャーこわーい!」なんて会話今時ありえねえから。逆に見てみたいくらいだから。ていうか七不思議とか言っちゃってる時点でイタいから。
そんな学校の七不思議(笑)だが、それでもあえて俺はこの話を続けさせてもらおう。
……いやまあ、別にしたいわけじゃないんだが。
とりあえず聞いてくれ。
聞くだけでいいから。
聞くフリでも可だ。
俺が話して、誰かが聞いたっていう構図さえ作れりゃ何でもいいんだよ。
めんどくせえよな。
本当、めんどくせえけど勘弁してくれ。
俺も被害者なんだよ。
で、やっと本題に入るわけだが。
お前、久野々木学園の七不思議について知ってることあるか?
……え?
知らない?
聞いたこともない?
ああそう。
まあそれが普通だよ。
逆に全部知ってるとか言われても引くわ。普通で良かったなおめでとうちゃんちゃらちゃーん。
よし、じゃあ一つずつ俺が紹介してやるよ。繰り返して言うが、したいわけじゃねえんだけどさ。
と言っても、まあ大体は一般的な七不思議ってやつと大差は無い。どこかで聞いたことあるようなやつばっかりだ。
夜中に降りようとすると、いくら降りても下に着かず行方不明になってしまうという階段。
動かしてないはずなのに毎日位置の変わってる人体模型。動いているところを見ると殺される。
西校舎の奥、今は使われていない女子トイレに現れるというトイレの敏子さん。誰だよって感じだが、目が合うとトイレに引きずり込まれて殺される。
誰もいないはずの音楽室から聞こえてくる、「月光」を奏でるピアノ。扉を開けたり大声を出したりしてその演奏を邪魔すると呪い殺される。
無人の体育館で一人でに跳ねるバスケットボール。そのボールに触れると、死ぬまでバスケットをさせられる。
職員室前の廊下に飾ってある笛吹き少年の絵から笛の音が響いてくる。その演奏を最後まで聞くと死ぬ。
……とまあ、七不思議っていうより七怪談だろっていうか死ぬだの殺されるだの不穏な言葉が多いなあオイ。危険に満ちすぎだろこの学校。毎日が死と隣り合わせじゃねえか。
俺絶対夜に学校来ねえわ。まだ死にたくねえし。
そういや、死ぬ死なないで言えば、七不思議に関してもう一つあったな。
――七不思議の全てを知ると、死ぬ。
何で知っただけで殺されるんだか知ったか知ってないかはどこで誰が判断してるんだか色々突っ込みどころが満載なアレだよ。
信じちゃいない、知ったところで殺されるわけがない――そう思っても、死ぬとか言われると何となく知りたくなくなるよな。
……え?
だったら聞かせんじゃねえよ死んだらどうすんだボケって?
バカ、お前待てって。
ビビってんじゃねえよ。
本当に死ぬわけねえだろうが。
大体、俺はまだ六つしか言ってねえよ。
七つ目ももちろん知っているが、ほら、ご覧の通り俺は生きてる。
知ったくらいで死ぬわけねえんだって。
死なないと安心できたところで、そろそろ七つ目が知りたくなってきたんじゃねえか?
……え?
そうでもない?
ていうかつまんねえって?
うるせえよバカ。好きで話してるわけじゃねえって言ってんだろ。七不思議に代わって俺が殺すぞ。
とりあえず聞け。
聞いてくれ。
聞いてくださいこの野郎。
いいか?
いくぞ?
期待なんてしちゃいねえだろうけど、期待すんじゃねえぞ?
久野々木学園七つ目の不思議、それは――「アサシン倶楽部」だ。
何じゃそりゃって思うかもしれんが、簡単に言っちまえば久野々木学園において必殺仕○人的な働きをする部活のことだ。
東校舎四階の生徒会室前にある今はもう使われていないダストシュートの中に殺して欲しい相手の名前を書いて投下すると、依頼通りにその相手を殺してくれるらしい。
確実かつ迅速に、な。
所属する生徒不明、顧問不明、活動拠点不明、全てが不明。
しかし確実にこの学園に存在する、「裏」の部活だ。
不明なことだらけで、何とも七不思議らしいだろう?
……お、やっと驚いたって顔したな?
聞いたことなかっただろ、「アサシン倶楽部」なんて話。他の学校には無いだろうな、たぶん。
俺も初め聞いたときはたまげたもんだ。そんなの本当にあるのかよ!?ってな。
でもあったんだよ!
俺、バイト先で先輩から散々嫌がらせ受けて悩んでたんだ……。その先輩ってのがこの学校の先輩だったんだけどよ、藁にもすがる思いで「アサシン倶楽部」に依頼してみたら、その先輩二、三日学校休んだ後、別人みたいに善い人になってたんだよ!
いやー驚いたね。
本当に殺すわけじゃねえみたいだけど、懲らしめてくれるのは確からしい。
ただし、俺みたいに嫌がらせを受けてたとかイジメられてたとか正当な理由がないと仇討ちは実行されないみたいだけどな。
あと依頼が達成されたら、依頼するときと同じようにダストシュートに何か謝礼をやらんといけないみたいだ。謝礼しないと依頼者も酷い目に遭うらしいからな、気をつけろよ。
……え?
お前バイトなんかしてなかっただろって?
そもそも俺がイジメられたりするようなヤツじゃねえだろって?
………………。
そこはほら、お前、あの、そら、あれだよ。
色々人に言えない事情っていうか、その、プライバシーがアレだ。
…………う、うるせえよバカ!
細かいこと気にしてんじゃねえよハゲ! そんなこと気にしてるからハゲるんだよハゲ!
とにかく、久野々木学園七不思議の七つ目、「アサシン倶楽部」のことは忘れるんじゃねえぞ!
何かあったらお前も頼れ!
困ってそうなやつがいたら教えてやれ!
いいか!?
わかったな!?
わかりましたよね!?
わかってくださいお願いします!?
ってなわけでじゃあな!
――アサシン倶楽部をよろしく!