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だいたい合ってる

作者: マーク
掲載日:2026/04/17

「ごめん!宿題やってなくて、見せてもらっていい?」


「また~?」


「ジュース奢るから…!」


「…まぁ、私は別に損しないしいいけどさ。知らないよ?助けてくれる人がいなくなっても」


「優しい~」


「はぐらかさないの」


いつも、こんな感じ。


別に構わないんだけど、私が真面目にやってる前提で動いてる気がして、なんか嫌ではある。


ちゃんと感謝してくれるし、お礼もくれる。


だからまぁ…なんというか。


誰も悪くないんだよね。


こういう人が社会でうまくやっていけるとかなんとか言われてるし。


「ねぇねぇ」


「ん?」


「ありがとね」


「…やっぱ見せるのやめようかな」


「なんで!?」


–––––––––––––––––––––––––––––––


「はーい。じゃあ前の時間で課題にしといたところ黒板に書いてもらうぞー。今日は…11番」


あ、あいつ当たった。


彼女が立って、前へ歩いていく。


自信がありそうな顔だ。


不安、心配なんて感じていないといった、そんな顔だ。


チョークを取り、ノートを見ながら書き始める。


そこで、私は気づいた。


「あ、計算ミスしてる」


私が教えた答えが、間違っていた。


…まぁ、何も書けないよりマシだから。


今回のやつムズかったし。


「はいありがとうー」


書き終わって、席に戻る。 


「えーーっと。いいね、だいたい合ってる。ここだけちょっと違うけど、まぁ直しといて」


彼女が私の方を見た。


彼女の視線が、まっすぐこっちに刺さる。

一瞬だけ、ほんの一瞬だけど——


「なんで?」って顔をした気がした。


責めてるわけでも、怒ってるわけでもない。


ただ、いつも通り当然みたいに信じてたものが、ちょっとズレたみたいな。


私は、目をそらした。


別にわざとじゃない。


本当に、ただの計算ミスだし。


宿題見せてとしか言われてないんだから、正解である保証はどこにもない。


はず。


というか、それが嫌なら自分でやればいいだけの話だ。


……はぁ。


なんで私、誰にも聞かれてないのに、私を擁護する用なこと考えてんだか。


なんか、採算が合わないって言うか。


なんか、納得がいかないって言うか。


自分でうだうだ考えたってしょうがないってのに。



それから。



授業が終わって、休み時間。


「間違ってるじゃん!」


先生が教室から出ていったあと、私に向かってそう言った。


「そういうこともある。というか、やってこなかったのが悪い」


「…なにも言えません」


「ジュースは頂戴ね」


「なんてやつだ」


「契約は完遂してもらわないと」


「へーい」


二人で廊下に出て、自販機に向かう。


「珍しいね、間違ってるの」


「やり方は間違ってなかったから、ほんとにただのミスだね。もし、あなたが一度でも流れを確認してたら、ミスに気付いてたと思うよ」


「そこはほら、信頼してたから」


「…はぁ。都合のいい言葉だね」


「ほんとなのに」


自販機の前。


「いつも通り?」


「うん」


彼女がボタンを押して、落ちてくる音。


「ほい」


受け取る。


「というか、そろそろ自分でやったら?お金なくなっちゃうよ?」


「大丈夫、バイトしてるから」


「しっー」


「やべっ」


うちの高校はバイト禁止だ。


…みんな隠れてやってるけど。


なんのために禁止にしてるんだろ。


…例えば


「ねぇ」


「なに?」


「これから、宿題見せないって言ったらどうする?」


「…やだ」


かわいいっ。なんだこいつ。


「例えばの話だよ」


「…一緒に宿題やる」


「あははっ」


「なんで笑うの~?」


心配する必要なかった。


何も心配なかった。


「ねぇ、何飲みたい?奢ってあげる」


「…え、なんで?」


存在してない責任って呼んでる、こういうの。

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