6:仮初の冒険者
久々の投稿です
今日は一ヶ月に一度の冒険者ギルドに行く日である。
まずは、いつも真っ黒な動きやすさと隠密性重視の服装を変えなければならない。
だが、俺は奴隷であるため、金など一つとして持っていない。
なので、布製の服ではなく、いつも魔力で作った服を着ている。
Aランク冒険者に見えるような服、派手すぎず、地味すぎず、機能性のいい服を作る。
そして、今の年齢だと、十歳だと少し不自然な強さが目立ったり、冒険者ギルドに登録できないため、二十歳くらいに見えるように魔術で調整する。
この魔法は、少し魔力の減りが多く、一日ほどしか続かない。
しかも、一回でも誰かが言葉に出して疑われたら変装が解けてしまうというデバフつきだ。
冒険者ギルドには、十五歳からでないと登録できないというルールがある。
なぜなら、あまりに幼い子供だと、命を失う可能性が高いからだ。
この理由をもとに、十五歳未満は登録禁止にしたらしい。おそらく、この世界の成人が十五歳だからこの年齢にしたのだろう。
なんというめんどくさいことをしてくれるのだろうか。
このルールのせいで無駄な魔力を使う羽目になって、ルディンが疲れるじゃないか。
それに、子供が死のうが自己責任だ。
隠蔽を使って、冒険者ギルドの近くの裏路地に移動する。
そして、服を変え、ティンに変える。
(ティン。お願い)
いつものようにティンに頼み込む。
(うん。わかった)
ティンが返事をすると、人格が入れ替わり、髪の毛の先が金色へと変化する。
無表情の顔をいつも明るく笑っているような表情にしている。
俺はティンに任せて眠りに入った。
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(ルイ。ルディンは眠った?)
俺、ティンは心の中にいる俺の片割れであるルイに話しかけた。
(あぁ、眠ったよ)
ルイは心の中でルディンを見ているのか、少し優しい声で返事が返ってきた。
心の中では、黒い空間が広がっているように見え、人格同士が見えるようになっている。
ルディンは、自分が身体共にギリギリの状態なことに気がついていない。
もし、気づいていても、自分を労る気は無いだろう。
だから、ルイと俺は話し合って、せめて精神は眠らせようという話になった。
心の中で眠ったとしても、身体の負荷は変わらないが、気分は楽になる。
俺はルディンに頼まれた仕事を完遂するために、隠蔽を解いて裏路地から出た。
「よう!イルン!今日はどこ行くんだ?」
道に出ると、冒険者ギルドで受けた依頼で関わった人たちが声をかけてきた。
「久しぶりだな!今日はいつも通り冒険者ギルドにある依頼を受けるかな」
イルンとは、冒険者を演じる時の名前だ。
少しガサツな主人公を意識しながら演じている。
そうやってちょくちょく話しかけられながら冒険者ギルドについた。
木製のドアを手で押すと金具がキィとなって開いた。
「あ!イルンさん!この前はありがとうございます!」
一ヶ月前にキャラ的に考えて助けた、冒険者になりたての女の子が俺に気づいてお礼を言ってきた。
「困った時はお互い様だからな。気にするな」
俺はその子の頭を撫でた。
もし、この子に暗殺の依頼が来ても、何の蟠りもなく暗殺できる。
そんな俺に対してこの子は緊張感もなく近寄ってくる。
ルディンもこんな風に平和な考えを思えるような生活をして欲しかった。
一通り知り合いと話した後、依頼を受けるために受付へと向かった。
「やぁ、エレンさん」
俺はいつもいる受付嬢であるエレンという女性に話しかけた。
「イルンさん。今回も一ヶ月ぶりですね」
エレンさんはいつもながらの営業スマイルで対応してきた。
「A級からS級の依頼ある?」
俺はなるべく報酬の高い依頼を受ける。
なぜなら、冒険者ギルドに入ったのは金を稼ぐためらしく、金を憎きブリークに与えなければならないからだ。
「ありますよ。全部で三つです。三つ中一つはS級で、他はA級です」
先月がS級二つだったから、今回は金が少し少なくなるな。
またルディンがお仕置きされてしまう。
もう少し稼がないと。
「その三つは受けるよ。他にB級でもなんでもいいから、報酬がいい依頼ない?」
冒険者が金を求めて依頼を受けるのは当たり前のことだろう。
そこまで怪しまれることはないだろう。
まぁ、A級冒険者でS級を受けるものなんて、特例の俺以外はいないと思うが。
S級冒険者になるには、昇級試練を受けなければいけない。
俺はそれをわざと受けてない。
理由は、前に言った通り、目立ちすぎるからと、S級は強制的に国からの依頼を受けなければならない時があるからだ。
そうなると、国に見つかる可能性が一気に高くなる。
それは避けなければならない。
ルディンの命を守るためにも。
「そうですね_。C級ですが、報酬がいいものが一つあります」
「なら、それも受けるよ」
依頼受諾をして、俺は依頼場所に向かった。
三時間後_。
牙の鋭い虎や火山周辺に住む竜の討伐、秘境にある植物の採取などの依頼を終えて、冒険者ギルドに戻ってきた。
竜の討伐によって少し怪我を負ってしまったが、すぐに光魔法で治した。
ルディンに痛みがいかないといいのだが。
「終わったよ。これ、証拠」
証拠と依頼の紙を出して、依頼を達成した。
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「またかよ」
「すげーな」
イルンの周りにいる冒険者たちがコソコソと何か話している。
「先月はS級の依頼を二つも達成したんだろ?」
「そうらしいな。どうやったらあんだけ強くなれんだよ」
冒険者たちは、イルンを尊敬と若干引くような感情で見ていた。
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今回の報酬の合計は、大金貨五十枚と小金貨八枚である。
この世界の金銭には、上から、白金貨、白銀貨、大金貨、中金貨、小金貨、銀貨、銅貨、銭貨がある。
白金貨は、一枚につき一億円。
白銀貨は、一枚につき千万円。
大金貨は、百万円。
中金貨は、十万円。
小金貨は、一万円。
銀貨は、千円。
銅貨は、百円。
銭貨は、十円。
といった具合だ。
十円以下は、真ん中に穴の空いた名前のない硬貨がある。
名前がないのが不便なのか、いつの間にか、屑銭と呼ばれるようになった。
その時の呼び方は、一レンという。
報酬を持って、俺は冒険者ギルドを出て、誰にも見られないように裏路地に入った。
(ルディン)
俺は、心の中にいるルディンを呼んだ。
(終わった?ティン)
ルディンは寝起きなのか、少し、声が小さかった。
(終わったよ。ちゃんと寝れた?)
(うん。ありがと)
ティンとルディンが入れ替わる。
そして、暗殺者ギルドに隠蔽を使って帰る。
これが、ルディンが心置きなくゆっくり眠れる、唯一の日なのだ。




