5:日常
初めての依頼をこなした日の翌日から、鍛錬ではなく、依頼を淡々とこなしていく日々へと変わっていった。
依頼をこなしていき始めた日々は、一日に五つほどの依頼をこなしていた。
依頼場所は近場であったため、依頼が終わると、少し鍛錬をすることもあった。
暗殺初心者であるためか、毎回アランがついてきた。
そして、暗殺依頼に慣れてくると、遠出の依頼が増えた。
そのため、どんどんと暗殺のための技術が磨かれていった。
そうやって、三年もの歳月が経った。
俺は十歳となり、S級暗殺者になっていた。
暗殺ギルド内でも異例の速さだったらしい。
こんなに早くランクが上がったのは、一日の九割を依頼の時間に捧げていたことと、魔法の適正が高かったためだろう。
聞いての通り、暗殺者にも冒険者と同じくランクが存在する。
SS級からF級まで存在する。
S級になる暗殺者はほとんどいない。
いたとしてもA級止まりだ。
なぜかというと、S級とは名ばかりで依頼を大量にこなさなければならない、いわゆる暗殺者ギルドの奴隷である。
しかも、依頼のすべてを行わなければならない。
全てとは、依頼主のことや、ターゲットの情報収集。
暗殺者を辿られないようにする証拠隠滅までである。
依頼主を調べるのは、罠の可能性もあるからである。
ターゲットの情報収集は、もちろん暗殺に失敗しないためである。
今では、食事や睡眠などの最低限の時間以外は依頼がほとんどである。
前と変わったのは、アランがつかなくなったことや、暗殺中に人格を何回か変えたこと、別人として冒険者になったことだ。
アランがつかなくなったのは、もう一人で暗殺ができるだろうと思われたからだろう。
暗殺中に人格を変えるのは、ルイとティンの提案だ。
ルイとティンによると、俺が積み上げてきた能力は二人にも使うことができるらしい。
ただし、能力は二つに分散されるらしく、ルイは暗殺向きの能力を持っている。
ティンは、目立つ能力、潜入や情報収集に向いているものを持っている。
俺は人格を変えている間、眠っている。
人格を変えて寝ていることで倒れることはいまだにない。
冒険者となっているのは、ブリーク様や暗殺者ギルドのための資金集めのためである。
一ヶ月に一度、冒険者ギルドに行く。
その時はほとんどティンに任せている。
会話、能力の使い方、全てにおいて別人のようになり変わる。
ティンは演技が得意なのだ。
それだけでなく、俺とルイよりも性格が少し明るいのだ。
冒険者としてのランクは、目立ちすぎないが金が入る、A級である。
三年間、いろんな依頼をこなしてきた。
海を挟んだ向こう側にある島国での依頼、領民から慕われている貴族からの依頼。
もう数えられないほどの依頼を受けてきた。
ターゲットが何もしていない善人であっても、悪人であっても依頼として暗殺してきた。
子供、女性、男性、年寄り、どんな人であっても暗殺してきた。
昔、一瞬だけこんなことをしてもいいのだろうかなどと思ったが、今更そんなことを考えても変わらないことに気づいたため、すぐに考えを消した。
依頼の他にも、ブリーク様がするべき書類の仕事をしたり、武器や食料などの裏取引の交渉、なんでも雑用係のように扱われてきた。
街で楽しく生きている人なら、逃げたいなどと思うのだろうか。
ここから出たいなんて感情はすでに捨ててきた。
そもそも、出ても何をするかという話だ。
俺はこの暗殺ギルド内での生活しか知らないし、外の生活に馴染めるとも思えない。
それに、ブリーク様が「お前はまだまだ弱い。S級になったとはいえ、自分を過信するな」と言ってきた。
この言葉の通り、俺は弱く、未熟なのだろう。
技術を磨かねば。
俺はこれからもずっとこの生活が続いていくだろうと思った。
もし、この生活が侵されるのなら、俺は流れに身を任せよう。




