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暗殺者の成り上がり(仮)  作者: せつか


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4/4

4:初依頼

 誕生日だからといって何も変わらないはずなのに、なぜか特別だと思ってしまう自分がいる。


 まだ施設の頃の記憶が消えないのだろうか。

あんな幻の記憶など早く消えてほしい。

ただ虚しくなるだけなのだから。


 そういえば、ブリーク様が今日はいい知らせがあるとか言っていたな。


早めに起きていないと、また怒鳴られる。


 ルディンは眠たさを抑え込み、起き上がった。

そんなルディンのタイミングを見計らったかのように、ブリーク様がやってきた。


「ルディン。よし、起きてるな。昨日言った通り、いい知らせがある。何だと思う?」


今日は珍しくすごく機嫌が良いのだろうか。

いつもより楽しそうな顔をしている。


いい知らせ、か。この言葉にいい思い出は無いが、とりあえず機嫌を損ねないような答えを言わなければ。


「何かの記念日とかでしょうか。それとも、お金がたくさん入ったのでしょうか」


ブリーク様が機嫌のいい時は自分に何か利益があったときと何かいい悪戯でも思いついた時だ。


「不正解だ。いつもなら罰を与えるが、今日は勘弁してやる」


「ありがとうございます」


珍しい。そんなにいいことでもあったのだろうか。

嫌な予感がするが、俺は従うだけなので問題ない。


「聞いて驚け。お前は今日から正式に暗殺の依頼を受け始めることが決まった!この二年間はお前の実力を上げることだけに専念していたが、それも今日で終わりだ。今日からはどんどん働いてもらうからな」


暗殺。ついにか。

いつ始まるかと思っていたが、誕生日の今日か。


まぁいい。

逃げることも何もできないのだ。

俺はただ従うのみ。


 俺は牢から出され、資料を渡された。


「お前にはこいつを殺ってもらう。ランクはDだから大丈夫だろう。だがもしものためにこいつをつけておく。こいつの名前はアラン。何か起こらない限り手は出さないように言ってある。一応手順やらは教えたが、それでもわからないことがあればこいつに聞け。最後に言っておく。失敗は許されない。すぐに済ませて次の依頼を受けろ」


そう言ってブリーク様はどこかへ行ってしまった。


 そうして俺はアランと呼ばれた男性と二人残された。


 アランと呼ばれた男性は、見た目は20代くらいで髪色と目の色は黒味がかった青だった。

身長は俺と同じ、あるいは少し低いくらいだ。

服装は黒で統一されており、暗殺者らしさがすごく伝わってくる。

 そして、なぜか俺を睨んでおり、抑えているつもりなのか知らないが若干、殺気が漏れ出している。


「あの、よろしくお願いします」


挨拶は大切だと施設の中で学び続けていたために、俺は自然とその言葉が出てしまった。


だが、その言葉にアランは反応せず、そのまま立っているだけである。


会話を試みても無駄だと悟った俺は、依頼を達成するために準備を始めることとした。


 資料の中の暗殺対象は、一人暮らしで中年男性。

力ではこちらが負けてしまう。


かと言って、真正面でぶつかる必要も無い。


そもそも、頼まれた依頼は暗殺だ。気づかれずに、周りに異変を感じさせずに終わらせる。


そのためには、毒だな。


 俺は闇魔法を使い始めた。

 叫び声を上げさせず、眠りを妨げず、眠っている間に死んでしまうような毒。


 この二年間で毒に関する知識も大量に叩き込まれた。


だからこそ、毒の効能についての知識力が上がり、たくさんの毒を作ることに成功した。


しかも、食事には毎回毒が入っており、その毒を自然分解できない時には解毒するために毒を分析する必要があった。


その集大成によって、一般人をすぐに殺せる毒くらいなら、魔法で作れるようになった。


 (よし、できた。)


そうして完成した毒を瓶の中に入れ、無属性魔法の収納に仕舞った。


無属性魔法の収納とは、歪んだ空間、別次元の空間に物を収納できるものだ。

収納の中は時間が経たずに、物同士がぶつかり合わない。

取り出す時は思い浮かべるだけで取り出せる。とても便利なものだ。


この魔法は役にたつから覚えろと言われて覚えた魔法だ。


取得するのが少し難しかった。


魔法は大体、イメージと魔力操作がうまければ上手いほどいい。

だからこそ、収納は見たことのない物だったため、イメージが大変だった。


 俺は、夜になるのを待った。


__深夜0時


俺は依頼をこなすために動いた。


まずは、ターゲットの家に行く。


俺は、人生で初めて暗殺ギルドの敷地の外に出る。少し好奇心もあるが、それと同時に不安もある。


実際には行ったことのない俺にとって未知の世界。でも、期待しすぎないように、落胆しないように目を閉じ、心を落ち着かせる。


感情の波が収まった時、俺は屋根の上に乗るために高く飛び出した。


そこで見たのは、視界の中に収まりきらないほどの大きな都市だった。


ここまで広い世界を見たことが無かった俺にとっては新鮮な景色に他ならなかった。

生まれてからこの都市の中にずっといるはずなのに、この煌びやかな場所を俺は一つも知らない。


このままこの景色を眺めていたいが、無駄なことをしたら俺を監視しているアランからブリーク様に伝わり、酷い目に遭うだろう。


今のブリーク様は機嫌が良いが、その分、失敗した時の苛立ちが大きくなる。


もう毒も魔法無しでも効くことは無いため、罰は毒から暴力へと変化した。

魔法を使わないよう命令され、何十人からの攻撃を武器無しで何時間も耐え続けるという罰を受けたことが一回ある。


その時は、特にブリーク様の機嫌が悪く、俺は熱が出ていたため、失敗ばかりだった。

そのため、先ほどの罰がかされた。


その罰は、最初はまだ捌き切れるが、俺以外は魔法を使い、武器を持っていた。

すぐに攻撃を捌き切れなくなり、攻撃を受けた。

体の全方向から遠慮が一切無い攻撃を何時間も受けた。

けれど、最低限の防御をしなければ死んでしまう攻撃もある。

そんな状態が何時間も続いた。

様々な傷ができた。その傷は体だけではなく、俺の心にトラウマを与えた。


 だから俺は、この罰を受けた日を境に、指示に全て逆らわず、実行する機械のようになった。


 俺は当たり前の街並みを眩しそうに見ながら、ターゲットのいる場所へと向かった。

闇魔法の隠蔽で姿を消し、身体強化で素早く移動した。


 暗殺をする日が来ることは昔からわかっていた。

だから、心の中で決めていた。

暗殺をする時、自分の感情を一切持ち込まないようにしようと。

暗殺をしたく無いのなら、他の人格に任せれば良いと思ってしまう自分もいたし、ルイやティンもそれでも良いと言ってくれた。

だが、多重人格のことをブリーク様は知っているため、人格を入れ替えることを許さないだろう。

そのために、自分なりの切り替えのスイッチを作った。


心の中、または声に出して、『ファルサ(偽り)』と言うことだ。

このスイッチは、自分の精神が必要以上に傷つかないように、壊れないようにするための防御のようなものだ。

このスイッチが入ることで、映像を見ているような感覚になる。


 まずはこの依頼を早々に達成しなければならない。


(ファルサ)


他人の目を通して見ているような景色になる。

これで俺は命令通りに動く人形となる。


 ターゲットのいる家についた。

ターゲットがこの家にいるのは探知魔法で確認済みである。


ドアには鍵が付いている。

しかし、暗殺技術としてピッキングも教えられてきたため、ドアの開錠はお手のものだった。

物音一つしないように動くが、念のため音を消す魔法を家全体にかける。

ドアから静かに侵入すると、薄い布団をかけながらイビキをかいて眠っているターゲットの姿があった。

家の中は長年住んでいるのか、年季の入った壁や床に細かな傷があった。

周りを見ている場合ではない。

依頼を達成しなければ。

俺は作った毒を闇魔法で操作し、体内に溶け込ませて犯行時刻がバレないようにした。


 一時間後_。

ターゲットが毒によって死亡したことを確認。

暗殺者ギルドに帰還する。


 暗殺者ギルドに帰ると、アランがいなくなっていた。

おそらく今日のことをブリーク様に知らせるのだろう。

俺はいつもの牢へ戻った。


 初めて、人を殺した。

自分の手で、自分の力で。

けれど、そこまで大変ではなかった。

嫌悪感も恐怖感も、何もかも湧いてこなかった。

何も感じなかった。

何も__。


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