3:多重人格
投稿が遅くなってすいません
俺が奴隷になって二年もの月日が経った。
いろんなことがあった。
ブリーク様から、詠唱破棄を一瞬で使えるようになれや、一日中息切れをしないように走りきれなどが命令された。
特に難しかったのは、魔法に関するものだった。
この世界の魔法には、光・闇・火・水・土・風・無の七つの属性がある。
俺は珍しくこの全ての属性の適性があるみたいだ。
そのためなのか、魔法に関する指令が多い。
だが今、俺の首には魔法封じの首輪がはめられている。そのため、この魔法封じのわずかな隙間を探して、魔力を出さなければならない。
この魔法封じの隙間を見つけ、うまく魔力を出すのに半年もの時間がかかってしまった。
期間は三ヶ月だったが、それを大きく破ってしまったため、毎日のように暴言や暴力、時には強い毒が食事に入れられた。
暴言や暴力にはまだ我慢ができた。
けれど、毒は我慢という問題じゃなかった。
いろんな効能の毒が入れられる。そのためか、解毒の魔法はすぐに覚えられた。
この様々な指令も辛いが、他にも辛いことがたくさんあった。
まずは食事だ。
栄養だけはたくさんあるが、味や匂い、見た目は最悪でまるでゲロでも食っているかのようだった。
そんな最悪の食事の中にさらに毒が入れられるのだ。辛いことこの上ない。
しかも、食べ切らなければ命令されて奴隷紋が反応し、体が勝手に動いて食べさせられる。
次に、施設のことだ。
俺がブリーク様に今施設にいる子どもたちはどうなるのかと尋ねたことがあった。
すると、ブリーク様は笑いながら話した。
あの施設は暗殺者を育てるための施設で、暗殺のための基礎を知らないうちに叩き込まれる。
そして、食事には毒に体を慣らせるために毒が入れられている。
だから、体の弱い子供は死んでしまう。
しかも、マリアは暗殺者を育てるために施設にいるのだという。
この話を聞いて、逃げ道はもともとなかったのだと絶望した。
絶望し、焼けるような痛みと共に心臓に亀裂が入るような感覚が襲いかかった。
その時に、二つの人格が生まれた。
それは、俺の心を守るためか、この厳しい環境に慣れるためか。
よくわからない。けれど、これだけは言える。
この二つの人格は絶対に俺の味方になってくれる。
二つの人格は俺から生まれたとは思えないほどに個性的だった。
一つ目の人格は、明るめの性格で名前はティンという。
二つ目の人格は、一匹狼のような性格で名前はルイという。
この二つの人格は主人格を第一に考えている。
そして、この二人の人格と過ごしているうちに、だんだんとこの人格たちに自分の魔力が浸透していき、完全に別れた個体となった。
簡単に説明すると、体はないが、意思だけの人物が俺の中に2人いるということだ。
完全に別れた個体となった時に、不思議な出来事が起こった。
ティンは、属性が光・闇・火・土が使え、俺の体を貸した時には目の色と、髪の先が金色に変わるようになった。
ルイは、属性が闇・水・風・無が使え、体を貸した時に目の色と、髪の先が血のように赤くなるようになった。
また、主人格の俺は、低姿勢の態度が板につき、無口になった。
小さい頃、施設にいたころは他の子に比べても話していた俺だが、話す相手もおらず、地獄のような生活を続けているのだから無口になるのは当たり前だろう。
無口で諦めが板についた俺は人格を頻繁に変えるようになった。
そうすることで、ブリーク様にも人格のことが伝わった。
人格を変える事で、見た目がかなり変わる。
そもそも、魔法でも使わない限り見た目は変化しない。
俺は命令で練習場以外で魔法を使わないように言われている。
だから、練習場以外で見た目が変わった時にバレたのだろう。
まぁ、見た目を変える必要など無いのだから、そのうちバレただろう。
ただ、バレるまでの期間が短くなっただけだ。
多重人格で、見た目が変わるなんてことは過去にも無かったのだろう。
ブリーク様は面白そうにしていた。
奴隷紋には、主人に嘘をつかないようにする効果があるため、人格のことをほとんど言わされた。
奴隷はこの世界で禁止されている。
それでも奴隷がいるのは、暗殺者ギルドという違法ギルドがあるからだ。
暗殺者ギルドは見つからないような場所にあり、見つかるとすぐに移動できるように準備しているため、捕まった試しがないのだ。
そのため、奴隷は減らずに増える一方だ。
もし、暗殺者ギルドに所属しているものが裏切る、または捕まるなどのことが起こっても情報が漏れることはない。
なぜなら、暗殺者ギルドに入るものには、ある契約を交わさなければならない決まりがあるからだ。
その契約とは、
暗殺者ギルドの情報をギルド内のもの以外に話してはならない、書いてはならない。
無意識でもギルドの情報を漏らそうとしてはいけない。
国に捕まって、脱出が不可能な場合、すぐに自殺を図らなければならない。
というものだ。
この契約を破ろうとした場合は、心臓が潰され、死んでしまう。
俺がこの暗殺ギルドにいる間にも、二、三人ほどが国に捕まったという噂を少し耳にした。
何もかも諦めている俺にとっては気にもしないことだった。
暗殺者ギルドはこうして国から逃れている。
ちなみに、俺が今いる国は世界で最大の土地、戦力、財力があるアイルディア帝国という。
アイルディア帝国の民には特徴がある。
民全てに魔力が宿っており、魔力の強い子供が産まれやすいというものだ。
他の国にも魔力持ちはいるが、アイルディアほど豊富ではない。
アイルディアでは、魔法が日常のように使われている。
そのため、アイルディア帝国は別名、魔法の国とも呼ばれている。
このアイルディア帝国の王都であるアーティリアに俺はいる。
アイルディア帝国とは、女神アーティリアを信仰している国だ。
女神アーティリアはこの世界を創造した神と言われており、さまざまな言い伝えがあるらしい。
その中でも有名な言い伝えは、遥か昔、戦争の絶えない時代に傷ついていく民を思い、女神自ら戦争を収めたというものだ。
そんな女神を信仰しているアイルディア帝国は絶対的な戦力や財力がある中で、周りの国と敵対せずに対等な友好関係を築いている。
なので、戦争は無く、あったとしても小さい紛争だけである。
こんな平和な世界が生まれているために、女神アーティリアを信仰するものが多い。
だが、俺はそんなものを信仰などしない。
信仰したとしても何も変わらない。
自分が幸せになるわけでもないのだ。
正直言って無駄なことだ。
別にこんな状況を助けてくれないからと言って信仰してないわけではない。
そんなことを言ってしまったら、世界にはどれだけ助けを求めている人がいるのかわかったものではない。
だからこそ、助けを求めることすら俺はもう諦めている。
なぜ俺はこんなことを思っているのだろうか。
あぁ、忘れていた。
俺は今日で7歳となったのだった。




