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私を試す婚約者様 捨てて上げましょうか?!

作者: おかき

『試すな危険!!』


人を試しまくり、ムカつく婚約者を捨ててもいいですよね?


今年も春の大夜会が始まる。

絢爛豪華な会場に、私キャロル・スタンリーは脚を踏み出す。

私は伯爵家の次女(18歳)

紫の髪に薄いピンクの瞳。華奢な体に見えるが、とても美しいスタイルの持ち主。

そう。

とんでもなく美人なのよ。


目の前には婚約者の

カール・ガーランド公爵令息(19歳)と、私の義姉のアーシア(19歳)が恋人ヨロシクと言わんばかりの接触をしている。


会場にあるソファーで寄り添い、ワインを飲んでいる。

2人の目の前に私は立った。

優雅にカーテシーをして、婚約者を見る。

カールは困った顔をしながら、義姉に視線をやる。

義姉が

「あら!キャロルじゃない。今夜は参加するのね〜。いつも来ないから、カールを借りてるわ。」

(嘘つけ!大きい夜会は出てるわ!)


厭味ったらしく義姉はカールの足に手を置き私を見た。

カールはまた困った顔をする。


(どいつも、こいつもムカつくッ。)


以前の私ならカールに捨てられたくなくて、何も言わずに義姉の言う通りに従っていた。

だが!!

今夜の私は違うのよ。

新生キャロルは微笑みを浮かべ、カールに


「そんなに困った顔をしなくても宜しくてよ?

アーシアお姉様がそんなにお好きでしたら、これからもどうぞ夜会なり何なりご一緒下さいな。」

ニッコリ❀


カールが勢い良く立ち上がる。

アーシアは反動でソファーに倒れた。


「キャロル。違うよ。いつも夜会に来ない君の代わりをしてもらっただけだ。」


(だから来てるし!一応エスコートしてるよね?放置してるよね!?)


カールは言いながら私の腕に手を伸ばして来た。

私はスッと避け


「代わりの割には恋人みたいですわね?

あ〜、勘違いしないでね。嫉妬なんかしないわよ?」興味無いし。


カールは慌てて言い訳しようとするが、

「あら!意地を張らなくても良くてよ?愛しのカール様を取られて拗ねるなんて。子供と同じよ?」

と、扇子で口元を隠しクスリと笑うアーシア。


カールは(マズイ、マズイ)

慌てて再びキャロルに近付くが、扇子で遮られた。

カールは驚く。

キャロルがそんな事をするなど、あり得ないのだ。

いつもカールに従い、嫌われない様にするキャロル。

他の女性と会話やダンスをしても、不安そうに嫉妬を抑えて我慢していた。

それが可愛くて、好かれてるのが嬉しくて。何度も何度も試してみた。


やり過ぎたのだ。


カールは青褪めるが、アーシアは更に言い募る。

「家族からも嫌われ、領地に追いやられた癖に!ちょっと綺麗だからと、鼻に掛けるからよ。

だから婚約者に嫌われるのよ?」


カールはアーシアの腕を掴み

「私はキャロルを嫌いなど言った事もないし、思ってもいない!勝手に決めつけるな!」

と、2人で言い合いが始まりそうだった。


パシンッ。


キャロルが扇子を左の手の平に打った。


「アーシアお姉様。私は領地に追いやられたのでは無く、お祖母様に呼ばれたからよ?お祖母様に教育して頂く為にね!」


それに

「ちょっと綺麗?アーシアお姉様。

貴方よりは容姿も内面も、とってもと〜っても綺麗でしてよ?」


言われた事に腹を立てたアーシアは、キャロルの頬を打とうとした。

キャロルの代わりにカールが打たれた。


アーシアは唖然とした。

カールはいつも私といたからだ。

キャロルの婚約者だが、私を優先しキャロルは放置していたのだ。

私の事が好きな筈なのに、キャロルを庇った!


庇われたキャロルだが、

「庇って頂き、ありがとうございます。けれど、全てお二人の自業自得ですわ。」

「お姉様。夜会での暴力。お咎めないとお思いですか?」


騒ぎを聞きつけた騎士が近寄る。

周りから話を聞き、アーシアを拘束した。

「違うの!キャロルが⋯⋯妹が悪いの!姉妹喧嘩よね?!そうよねっキャロル」


「⋯⋯⋯」

キャロルはアーシアに顔を向けずに、首を振る。

アーシアは騎士に連れて行かれた。


「すまないッ。キャロルッ」

カールは頭を下げた。

「謝罪は受け取りましたわ。」


カールは頭を上げ、キャロルの顔を見た。

いつも恥じらうように笑みを浮かべているキャロル。

そんな彼女は居なかった。


「謝罪は受け取りますが、許すか許さないかは、また別ですのよ?!」ニッコリ❀


(この男はキャロルの好意に胡座をかいていた。好かれている事を実感したくて、態と私の嫌がる事をしていたのだから。)


カールは絶望の顔で、キャロルを見据えた。

キャロルはニコリと笑い


「いつまで私を試せば気が済みますの?

恋人役を勝手に義姉にさせ、私を試して楽しかったですか?

私は楽しくもなかったですわよ?」


「試さないといけない程に私を信用しない。婚約者の役目もしない。カール様は私に嫌われる事しかなさらない。

そこまで嫌なら婚約は解消して宜しくてよ。」


「⋯⋯⋯。」カールは反応しない。

キャロルはじっと見つめたままだ。

(カールの出方次第なのよね〜。私はどっちでも良いのよ。

だって、この人知らない人だし。)



私はキャロルであって、キャロルではないのだ。


2年前、領地のお祖母様が隣国の作法や勉学を教えたいとキャロルを領地に呼び寄せた。

お祖母様は隣国の前国王の妹なのだ。

いずれ隣国にてキャロルをお披露目したいと、隣国の事を教えたかったからだ。

父は大賛成で私を領地に出した。

義母や義姉は私がいなくなる!!

これまた大賛成。


方やキャロルはカールから離れたく無かったのだ。

彼女はカールを好きだったから。

カールとキャロルは幼馴染として仲が良かった。

優しいカールが大好きだったのだ。

だか、義母と義姉が来て以来カールはキャロルを避けた。

キャロルは最後までカールがしていた行動の意味を理解出来なかったのだ。


数ヶ月に一度、王都に戻り婚約者と会うもアーシアがカールにベッタリ。

婚約者はキャロルを見ない。アーシアばかりを構う。


夜会に一緒に行っても放置され、カールは令嬢達と楽しく過ごしていた。

キャロルは壁際で孤独と、失笑に耐えた。


1年半、そんな生活が続いた。

領地では詰め込まれた教育。

王都では冷たい婚約者。

美しい容姿と言われながら、婚約者に相手にされないとお茶会での笑い話の種となる。


ついに、キャロルは精神に限界が来た。

自由になりたい。

仲良しの家族や友達が欲しかった⋯⋯。

強く心に願ったら、広い草原にいた。

そこには、黒髪黒目の少し年上の女性がいた。


山に登り滑落したら、ここに居たと。

鈴木美里23歳と自己紹介をしてくれた。

美里は優しい家族や恋人が、帰らぬ自分に悲しむだろうと後悔していた。


私も話をした。婚約者の事、義姉の事。

領地の事を。

婚約者はキャロルを試していたのでは?! 

と言ってくれた。

そうならいいな〜。

嫌われていなくて良かった。

そう安堵し微笑むキャロル。

その微笑みを美里は忘れない。

心優しいキャロルが幸せであって欲しかった。美里はそう思った。


2人は意気投合し、お互いの話を沢山していた。

人生を交換したら美里が婚約者達をギャフンとしたいし、キャロルは優しい美里の家族と過ごせるのにね~。


と話の途中で、私美里はキャロル?の中に居た。


キャロルは美里として生きてる?!

そう思う事にした美里。

切り替えがめちゃ早いのだ!美里の性格は。


まず、お祖母様とやらと話をした。

婚約者や義姉の事。

それに耐えられないのに、領地での教育。

精神的に疲れ果てて、

キャロルは死んだのだと。


お祖母様は理解出来ないでいた。

当たり前である。キャロルは目の前にいるのだから。

私は転生者だと伝えた。

広い草原でキャロルに会い、人生交換出来たら⋯⋯。と話していたら、私はここにいた。

多分キャロルは異世界の日本という国にいると。


お祖母様は、異世界や転生者の言葉に納得した。

隣国ではたまに出てくるらしい。


高度な知識がある者は少ないが、あちらで生きていただけで知識がある者となる。

文明に差があるからかな!?


お祖母様には、王都で好きにさせてもらう許可を貰った。

お祖母様は酷く後悔していた。

私はキャロルがお祖母様を大好きだった事を沢山話し伝えた。

キャロルは王都の家族より、お祖母様を大切に思っていたからだ。

唯一の家族だったと。

お祖母様は泣いていたが「良かった」と言葉を零した。



と云う訳で、お祖母様の許可があるから夜会で私は好きにやっている。


キャロルは、隣国の王位継承権を持っている。お祖母様に譲られたからだ。

まー隣国出身の身内が居たら、そうなる事はだいたい解る筈だが、解らない者はキャロルを笑うのだ。


ぜ〜ったいに、許さんッ!!

私にキャロルの記憶がある以上、キャロルに酷いことをしてた奴は、絶対に嫌がらせをしてやる!!  フンスッ!


さてさて色々回想したが、いい加減ダンマリに飽きてきた。


カールは固まったままだし、観客は増えたし。

面倒臭いです。


「婚約を解消しますか?しませんか?

いい加減決めていただけます?!」


観客はざわめいた。

キャロルはいつも壁際に居て静かにやり過ごしていたから。

お茶会で笑い者にされても、困った顔をして苦笑いするだけだったのだ。


今は真逆のその様子に、今までキャロルにやらかしていた者は少し焦りを覚えた。


そこに爆弾発言が降ってきた!


「周りの観客の方々の中に、随分私を見下した方が居ますわね。

知ってます?私のお祖母様は隣国の姫君でしてよ?しかもお祖父様はこの国の王家の血筋。」


「その直系の孫である私は一体何者になるのでしょうか?」


会場が静まり返る。

王家の次に、この国で立場が上位になるのだ。下手したら王家より⋯⋯上に⋯。


一部の人々は焦る。

自分のやらかしが、家族に迷惑をかける事を理解したのだ。


謝罪しようとしたが、それよりも早く言葉を放つ。


「謝罪は受けません。自業自得です。」


キャロルはカールを見つめたまま、言い放った。


カールに視線で決断を迫る。


「婚約は解消しない。いや、したくないのだ!」

「お願いだ。解消等と言わないでくれッ」

頼む。と⋯⋯。


(今回はこれくらいにしとくか)

まだまだカールを虐める気満々だった。


「解りました。婚約はそのままとしましょう。3日後には領地に戻りますので。次の夜会で会いましょう。カール様」


「皆様もご機嫌よう」


美しいカーテシーをして、キャロルは会場を後にした。

春の大夜会は大惨事で終わった。



次にやるのは、キャロルの家族だ。

アーシアは牢だろうから⋯⋯。

両親もどきをやってやるとしよう。


キャロルは邸に向かう。

邸に到着するも使用人の迎えはない。

いつもらしい。キャロルの記憶にある。


今の時間は応接室でお酒を嗜んでいるはず。キャロルは応接室に向かう。

扉を開けたまま、カーテシーをし矢継ぎ早に話す。


「まず、アーシアお姉様は騎士に連行されましたので、今日は帰って来ないかと。

理由は私を殴ろうとし、庇ったカール様を殴ったからですわ。あちらが爵位は上ですし、夜会で暴力を振るうなんて淑女教育がなってませんわ〜。」


両親もどきは、絶句する。

ツラツラ話すキャロルにもだが、アーシアのやらかしにもだ。

義母が

「キャロル!!貴方がアーシアを陥れたのね!なんて娘なの!」


キーキー煩い。

「私に対して言葉が成ってませんわね。」


「いいですか。私のお母様はこの伯爵家の嫡子ですわよ?お父様は婿養子。しかも私は隣国の王位継承権を持っています。

立場が一番上に来るのは⋯⋯

さて、いったい誰でしょうね?!」

両親もどきはハッとするが、キャロルは背中を向け部屋から出て行く。

覗いていた使用人に


「聞こえてたわよね?」

「私には今までの様に構わないで頂戴ね。」


使用人は顔面蒼白。


イヤイヤ。

王位継承権云々の前に、婿養子の父は当主になれない。 

直系はキャロル。

誰でも解るわっ!


スッキリしたキャロルは、とりあえず自分の部屋に鍵をかけた。

魔法で結界を張る。キャロルは優秀なのだ。美里はキャロルの努力に感服していた。

お風呂も着替えも全て1人。

大事にされるはずの令嬢が日本での私の生活と変わらないなんて⋯⋯。

この世界で、ありえないよね。

何でも1人で出来るなら、日本でも上手くやって行けるはず。

前向きに考え、眠りに就いた。


朝になり扉をノックする音で目を覚ます。

だが、無視。

またノックされる。

絶対に無視。


朝の支度が終わり、外出しようとする。

この邸では領地に行くようになると、私のご飯は用意されないようになった。


扉を開けると執事長がいた。ノックの犯人か〜。

「お嬢様。朝食の用意がしてございます。」

と、ニヤリと告げる。

この執事長だけが、キャロルの唯一の味方だ。


「トニー。嫌味はいらないわ。」

失礼しました。と礼をとる。


「今から朝食に出るけど、付いてきてちょうだい。」

不思議そうにしたが、了承してくれた。

2人で裏口からコソコソ出るのは、結構楽しかった。


キャロル行きつけのお店に行く。

トニーは初めて来たお店だ。


個室に入り結界を張る。

トニーは少し警戒したが、私へではない。

「トニーに伝えたい事があるの。」


私は自分の事、キャロルの事を話した。

話しを終えると、トニーは静かに涙していた。

キャロルは

「キャロルはトニーに感謝していたわ。

嘘ではないわ。キャロルの記憶はあるもの。

たまに渡してくれるチョコレートがあったから、あの邸で耐えれたと」


聞くや否や、トニーは大泣きした。

「お嬢様。お嬢様⋯⋯」と。


「これからね〜私はキャロルを虐めてくれた奴等に嫌がらせをするのよ!!

相手は王族もいるわ。」

トニーは目を見開き焦りながらも、止めようとする。


「大丈夫よ。お祖母様に布石は打ってもらっているの。

明日が勝負よ。」


「見届けてね。トニー。

キャロルの無念を晴らしてやるわっ!!」


両手に拳を作り強く誓う。

トニーは、「ありがとうございます」

そう頭を下げた。


あ!明日はトニーも私に付いて来て欲しいから、予定は全てキャンセルね〜。


軽く言うこの方は、キャロル様の為に戦ってくれるのだ。心優しい方。

これからはこのお方に誠心誠意仕える事をトニーは誓った。



昨日は楽しかったなぁ〜。

朝の支度をしながら昨日、トニーと街で遊び回った事を思い出していた。


そこに急ぐようにノックがなる。

(来たわね。)  


扉を開けるとトニーがいた。

「お嬢様!王宮から急ぎ登城せよとの封書が!!」焦るトニーに


「あら!早いわね!

予定通り王宮に行くわ。トニーも行くわよ。」

固まる執事を引き摺り玄関へ向かう。

王宮からの馬車がいた。


両親もどきもいる。

「キャロル!いったい何をやらかしたのだ!!」

怒る父に

「あら?やらかしたのは私じゃなく、あなた方が大切に育て上げたお姉様でしてよ?」

馬鹿にしながら馬車に乗り込んだ。


トニーは緊張しながらも、私に付いて来てくれた。


王宮に着いた。騎士に案内された先は謁見の間。

(ふ〜ん下手に出てきたわね。他にも高位貴族がいるのかな?

恥をかくのだから、呼ばない方が良かったのにね〜。)


キャロルは楽しみながら開いた扉の先にいる陛下に視線をやった。

王座の前にてカーテシーをする。


王座の1段下に元凶である、第3王子ライナスと婚約者のメリッサ公爵令嬢がいた。


観客は高位貴族。やっぱりね〜。

圧力かければ、何とかなるとでも?

アホらしい。

顔に出さないが馬鹿にする。


「昨夜、隣国より急ぎの手紙を受け取った。内容は伏せるが、キャロル嬢についてであった。これをどう思うのだ?」

めちゃ圧をかけてきた。魔力で。


陛下はたかが伯爵家の娘、王家が陛下自身が出れば、やり込めると勘違いしている。


「どう思うか。ですか?今までの全てが不愉快?でしょうか。」

周りが怒りの声をだす。

不敬だ!何様だ!と。


「私は学園でライナス殿下とメリッサ嬢に、散々嫌がらせを受けていますわ。

暴言、暴力。全てを我慢しましたわ。」

証拠はこれです。

と、右腕を出した。そこには魔力攻撃を受けた跡がある。

ライナス殿下が言い訳しようとしたが

「魔力の痕跡を調べて頂いても?誰の魔力かはっきりしますわ。」

そう提案する。

そこまでするキャロルが、嘘をつく理由が無いのだ。周りは思案する。

「魔力跡を調べてはっきりさせましょう。陛下。」

そう宰相が指示し、魔法師団長を呼びに行かせた。

団長は直ぐに来て即座に私の腕に解析魔法を掛ける

キャロルの腕から魔力が出て来た。

家紋が魔力で作られ2つ浮かび上がる。


魔力は放った本人に戻っていった。

犯人確定。

ライナス殿下だけでなく、メリッサ嬢までも攻撃した事実。


周りは信じられない目で2人を見た。


ライナス殿下とメリッサ嬢はへたり込み「違う。違う」何かを言っている。


ライナス殿下が立ち上がり

「お前が先に私達に不敬な事をしたからだ!!攻撃される様な事を先にした、お前が悪いのではないかっ!!」


喚く殿下に私は白けた目を向けた。

「不敬とは?」

問いかけるが、殿下はダンマリ。

メリッサ嬢は顔面蒼白で私を見ている。

メリッサ嬢に対して無視を決め込む。


「殿下やメリッサ嬢にした不敬とは何ですか?殿下。お答え下さい。」

宰相が問うも殿下は答えない。

答えられない。

そもそも不敬などしていないのだから。


「殿下達にした不敬ですか?覚えはありましてよ?」

全員がキャロルを見る。


「圧倒的な点数で試験で首位を取りましたしね!私が。」ニコリ

「試験でも魔法でも剣術でも、全て私が上です。それが不敬だ!!と、攻撃しましたね。」


「メリッサ嬢はただ容姿に負けたから、嫉妬でしょうね。」

キャロルは陛下を見る。


「私は隣国の王位継承権を所持します。順位は一桁。

この意味を陛下は理解しておられますか?」


陛下が勢いよく立ち上がり、ワナワナ震える。

怒りではない。恐怖にだ。

横にいる王妃も宰相も顔色を悪くする。

理解している周り数名も同様に。

理解出来ない者は戸惑う。


隣国はこの大陸で最大の国土と武力を持つ大帝国の事。

しかも、王位継承権を持つ者は王族と位置付けられる。

他国に居てもだ。


大帝国の王族に魔力攻撃をし、怪我を負わせた。

しかも、社交界では散々キャロルを虐げていたのだ。

戦争やむ無しとまでなるのだ。


何も返せない陛下に


「理解出来ましたか?この国が私に何をしてきたか、その結末がどうなるのかを。」

陛下は膝から崩れ落ちた。

ライナス殿下も教育は受けているのだ。理解出来るであろう。


「陛下。私は戦争をしたい訳でも、誰かを処罰したい訳でもないのです。

自分の立場をきちんと得たかった。ただそれだけですので。」ニコリ❀


「後はそちらで対処して下さい。処罰も戦争も無しですから。」


カーテシーをし、退室した。


謁見の間を出て、これまたビックリの人物がいた。

カールが心配そうに立っていた。

王宮に呼び出された。そう聞いて急いで来たらしい。

案外良い奴だった。


私はカールを朝食を食べに行くあの店に連れて行った。王宮で固まるトニーを引き連れて。


キャロルと美里の話をした。

今は私は美里なのだと。キャロルの記憶はある事を。


カールは私を見つめ

「キャロルにはとうに捨てられていたのですね。

やりは方は間違っていましたが⋯⋯ッキャロルに好意を持っていました。」

涙するカールに

「キャロルも貴方に好意を持っていましたよ。義姉が来るまではね。」

虐めるのも忘れない美里に、トニーは呆れた目をむける。


「あの夜会でのキャロルは見た事なかった。それにまた惚れたのです。キャロルではない。美しく立ち、強い貴方に。好意を持ちました。」


「!!」


「ですから、婚約はそのままにして頂きたく。これからの私を見て欲しいのです。」


(なんですと!!

つまり、あの夜会での私に惚れたと!!)


美里は恋愛経験はある。

が、告白された事はない。自分から行くタイプだからだ。

グイグイ来られるのには弱いらしい⋯⋯。


カールは美里キャロルの手を握り甘く懇願する。

美里キャロルは顔を真っ赤にして黙っている。

カールはその可愛らしい反応が嬉しくて、指先にキスを落とした。


ビックリする美里キャロルに、また惚れ直した。可愛いのだ。仕方ないよね〜。


「そうか。試すのではなく、攻めたら良かったのですね!」ニッコリ❀


マズイと手を引き抜こうとしたが、無理だった。

手を握ったままカールは私に近付く。

私を立たせると、優しく抱き込んだ。

「これからは沢山愛を伝えますね。」

私はただただ真っ赤になり硬直していた。

クスクスと嬉しそうに笑うカールを見て、(まーいっか!!イケメンだし!!)

と、直ぐに考えるのを止めた。


3人で食事をとり、カールと別れた。

明日はお祖母様の待つ領地に帰る。

家族もどきに、最終的な嫌がらせをする為に⋯。


領地に戻る為に自分で準備をしている。

「お嬢様。お客様です。」

はて?約束なんてしていないが⋯⋯。トニーが伝えに来たなら大丈夫な相手だろうと、応接室に行く。

そこには、カールがいた。どうしたのか尋ねると、

「エリザベート(お祖母様)様に挨拶と謝罪を。キャロルに対する態度を謝罪したいのです。」

ションボリするこの仔犬を置いて行けるほど薄情にはなれないッ⋯⋯。

頭をヨシヨシしながら了承した。

笑顔が可愛いこの仔犬。

今まで何処にいた?領地に向かうのが楽しみだ。


領地に着いた仔犬は、深々とお祖母様に謝罪した。

言い訳もせず、自分がキャロルを追い詰めたと。

「誰か1人が悪い訳じゃないよ。全員が加害者なんだから」

慰めたつもりが、慰めになってない。

お祖母様とカールは、地にめり込む程落ち込む。


「何だか、ごめんなさい。

気を取り直して、次の計画のお話をしましょう!!」ニコニコ❀


領地て数日過ごし、領地の使用人も引き連れ大所帯で王都の屋敷に入る。


家族もどきが驚いて屋敷から出てきた。

あら?!

アーシアお姉様はまだ帰ってないのかしら!? どうでも良いか。


馬車からお祖母様が降りてきた。

「!!!!」

家族もどきは驚いている。


なぜなら、ここ10年程会っていないからだ。お母様が亡くなると、お祖母様は領地に引きこもっていたから。


「お前達は全員領地に行きなさい。

この伯爵邸に残るのは許しません。」

「執事長以外の使用人もです。」


流石大帝国のお姫様だけある。

圧が凄いのだ。


「それと、社交がしたければすると良いですよ。夜会の参加も認めます。

しかし、伯爵邸に一歩たりとも入るのは許しません。

解りましたね?」


家族もどきは何も言えない。

何をしても、お祖母様が口を出さなかった為に勝手に安心していたのだ。


明日までに荷物を纏めて、明後日には領地に向かうように決められた。


荷造り頑張れ〜!!


家族もどきの荷造りで騒がしいので、王都の高級な宿に泊まる。

何故かカールもいる。同じ宿に泊まるらしいが、私と話しをしたいからだと。


夜部屋に呼び話しをする。

が、なかなか話し出さない。

「話って何?聞きたい事あるなら話すよ?」

カールは少し言いにくそうに


「美里さんに聞きたい事があります!!」

勢いが凄いな〜

「美里さんは年上でしたよね。今はキャロルの体にいますが、向こうでの記憶もあるのですよね?」


質問の意図が見えないが、そうだと伝える。

「美里さんは恋人が居たと。そのですね⋯⋯。」⋯⋯⋯。


理解してしまった。

カールはあちらで、男性と体の関係があったかを気にしてるのだ。

可愛い奴。


「正直に話すなら、ある。」

カールが私を見るが、少し泣きそうなのは見間違いではない。


「仕方ない。と割り切れないなら婚約は解消で構わないわよ。このキャロルの体は綺麗だけど、私の記憶にはカールじゃない男がッッ」


会話の途中で口付けられた。

拙いが、激しく私を求める。

泣きながらカールは口付るのだ。


仕方ないとは言え、胸が痛い。

でも嘘は付けなかった。

そういう関係を持った時に解るだろうから。

カールが唇を離す。涙は流れたまま私を見つめる。


「カール。私、鈴木美里は貴方を愛しているわ。好きな人は確かにいたわ。でも、愛したのはカールだけよ。」

そう伝えた。


カールは泣きながら笑い

「私も心から愛したのは美里。あなただけです。」

再び唇が重なる。


が、この男の嫉妬と執着は半端無かった⋯⋯。

重い!!気持ちが重いのだ!!

(大丈夫。まだ清い関係です)


家族もどきを追い出し、邸も落ち着いた頃には秋になっていた。

私達は更に仲を深めた。来年の春には結婚式を挙げる。


そうそう!

アーシアお姉様は大帝国との後始末に王宮は大混乱だったのもあり、1週間以上牢に居たらしい。(ざまぁ!)


第3王子と公爵令嬢は、神殿で1年間の奉仕活動をさせられる。

(どうでも良い。)


虐めたり、嘲笑ってた人達は完璧に無視した。

本人だけね!家族や一門には関係ないからね。


嫌がらせも全員にやり終えた頃。

美里はキャロルを思う。


いつか日本で過ごすキャロルが見たいなぁ〜。

私だけが幸せなんて嫌なのだ。

キャロルも同じであって欲しい。


あの草原で胸に焼き付いた微笑みじゃなく、幸せな満面の笑みを。

いつか、また草原での再会を願う⋯⋯。


❀おしまい❀


❀その後大帝国に呼ばれてカールと皇太子とのドタバタコメディや。


トニーが大帝国の王女に見初められ逃れなくなるのも、もう少し先のお話です❀


誤字報告ありがとうございました。

投稿した後も気になり修正したりしますが、やはり誤字がありました。


誤字は読み手として気になる方が多いと聞きます。

気になった方は報告下さい。


追記

カールについて思う所がある読み手様が多く、力不足で申し訳ありません。


感想の返信の1文と被りますが、キャロルは日本で美里より幸せに過ごしております❀

キャロルの努力は日本で掬い上げて貰えました❀

作品を覗いて頂き、ありがとうございました❀

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― 新着の感想 ―
カールも美里も最低
元さやのようで元さやでないような…お試し行動するほど拗らせてたカールの熱意がすごいわ 美里になったキャロルは橋をお渡りになっちゃった? 無事に救助されて日本で元気に…だといいのですが。
キャロルに好意を持ってたと言ったくせに秒で今度は美里に惚れたとか言うカールにこれまた秒でオチる美里… この国の王族が顔色悪くすらくらい国力に差がある大帝国の王位継承権持ちの姫君(キャロル祖母)が嫁いで…
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