捜査③
今村が福岡市内にある銃砲店に入ったのはある雨の日のことだった。
店に入ると大きな猟銃が所狭しと並べてられている。ライフルや弾のないエアライフル、さらにはスコープまでそろっている。中には鹿や熊のはく製も飾られていた。今村はこんな店に入るのは初めてである。ぼんやりとライフルを眺めていると、鼻の下ににひげを蓄え、カラフルなシャツを着た男が現れた。
「こんにちわ、こんな店にかたぎの方が入るなんて珍しいですよ。冷やかしでも見ていきませんか」
ちょび髭を生やした店主は今村を案内した。
「あ、そうそう。自己紹介遅れました、私はチャールズ・タミヤ・ブロンソン・ジロウです。うーーん、マンダム」
ブロンソンは派手なTシャツをなびかせ、髭剃り後をさすりながら呟いた。21世紀に生きる我々には全く必要ない言葉である。ちょび髭のおっさんが顎をさすっているだけである。
「このお店にあるのはこういった猟銃だけなんですか?」
「いえいえいえ。奥には踏んだら鹿の足の骨が壊れる強力な罠やら、木の上につるされるヤツやら必殺仕事人の武器にしか見えないような凶悪な武器もいっぱいありますよ。特殊警棒の品ぞろえは九州一と自負しています」
「そうなんですか?」
今村が興味なさそうに聞くと、興味を引こうとブロンソンは奥から映画でしか見ないような鋼の罠を持ってきた。
「これなんかイノシシ用の罠です。他にも威嚇用の爆薬とかありますよ。太刀打ちできないときにこれを鳴らして逃げるんです」
「威嚇用の爆薬なんて危ないんじゃないですか?」
「そんなことはないですよ。パーン、っていうぐらいですから」
「そうなんですか。ですが沢山ため込めば家ぐらい壊せるんじゃないですか?」
今村が尋ねるとブロンソンはニヤニヤと笑って2リットルのペットボトルを飲んだ。ラベルの美女が微笑んでいる。こんなところまで販路が拡大しているのか。
「そうですけど、そんなことしますか?普通?」
「まあ、そうですよね。ところで若い子、学生さんにそんなものを渡すとかやってないでしょうね」
今村はさりげなく聞いた。
「そんなことしませんよ。何を言っているんですか。未成年には販売禁止ですし、身元が証明できないとそんなことはできませんよ」
「いや、興味があったものですから」
「あんた、本当にかたぎの人?」
ブロンソンがにらみつけた。
「あんた、何者?」
「かたぎですよ」
今村が冷静に答えた。ブロンソンは何かを察したかのように玄関に歩いていく。
「そろそろ店じまいなんで帰ってもらっていいですか?」
「え?まだお昼の2時ですよ?」
今村は驚いた。意味が分からない。
「今日は調子が悪いんでね」
ブロンソンはそういってどこかで見たことのあるペットボトルを取り出し、一口飲むと、一方的に店を閉め始めた。
「ちょ、ちょっと、お客さんが…」
「来るわけないだろう!帰った帰った」
今村は追い出された。店から出ると、商店街の隅に女子高校生の姿が見えた。