不浄の謁見編2
気まぐれですが、お付き合い頂けると嬉しいです
神狩りやバイコーンという謎の単語が羅列された狂乱状態にでも陥ったのかと思える文を見つけたのはいいが、何も分からない状態で手紙の通りだと出る出られないの前においそれと会いに行けば死ぬだろう。しかし、なんの手がかりもここへ来た記憶も無い今は選択肢が増えただけでも進歩だ。
手紙を懐へと仕舞い、部屋から恐る恐る出ようとすると突如頭上からギィと音が鳴り大きな塊が落ちてくる。ダクトが開き中に死体でも入っていたのかと身構えたが、予想に反してそれは動き始めた。
「ぃい…いたぁ…」
こんな大きな音を出していたらまたさっきの化け物が来るかもしれない、そう思い咄嗟に目の前に落ちてきた少女に後ろから掴みかかる。
「おっ!?おぉっ!!ちょっと何すん!?」
そして、咄嗟の事に脚をジタバタさせているが、そのまま何とか引きずるような形でまた扉の中へと戻る。
「…静かにしろ」
少女は半ズボンにブラウスを着てケープを纏うといった服装に、年は10代前半と言ったところだろうか。髪は黒髪に少し日焼けした肌で東洋系といった顔つきだった、この辺りでは珍しい。少女が不服そうな顔をうかべ、小声で口を開く。
「いきなり人に後ろから襲いかかっといて何なのさ!」
「それはもっともだが、こちとら何も分からないまま手探りなんだよ。あんた間抜けそうだから敵じゃないと思ったが、敵だったか?」
不満が収まらないとばかりに少女がまた続ける。
「敵だ味方だもないでしょ!私からすればお姉さんの方がよっぽど敵だ!
まぁ、殺そうと思えばここで殺せてるはずだから、さしずめ何も分からず連れてこられて脱出を図っている途中?」
「なぜそこまで分かってるのかは知らんが、あんた色々と知ってそうだな。死ぬ理由は生憎無いんで何か知ってるなら教えてくれ、さもなくば手荒に聞く」
腕力の差は目に見えているので、少女が少し怯えたと思ったが相変わらず不服そうに話し始める。
「私はさっきダクトの中を通って地下に行けないか試してたとこ、お姉さんの記憶が無い理由は知らないけど私はバイコーンってやつに呼ばれただけ。新しい神狩りを迎えるから護衛を任されて…って、もしかして地下に護衛対象の事を聞きに行かなくてもお姉さんが多分護衛対象だよね?」
唐突な話に混乱しそうになるが、まだ聞き出せそうなので話を続ける
「バイコーンってやつとお前や俺がなんの関係があるっていうんだ?そもそも…」
少女が突如思い出したように、急に懐から小さな小刀を取り出して手を切り口に押し当て血を飲ませてくる
「よせ、何」
「護衛対象で間違ってなければ、これでまぁ少し思い出すんじゃないっ?頭に血が足りてないだけじゃないっ?」
抜け落ちていた病院の外でのこれまでの記憶が蘇ってくる、何が起きているのかもその過程で理解した
「この病院に呼ばれた時のショックで脳が壊れちゃったかで、色々記憶にエラーが起きてたみたいだけど、話の通りの護衛対象ならお姉さん吸血鬼のはずだし、私の血を飲んで修復されるはず…多分!
アイツよっぽど急いでこの病院に転移させたみたいだね〜」
「そうだ…俺は神狩り三体の戦いに傭兵としての旅の道中で、巻き込まれてその最中急に」
少女が確信を得た顔でまた話し始める
「やっぱり!多分それは神狩り2番手の天使王、7番手の蛇王、9番手の楽園王だと思う!
記憶を安定させるお手伝いとして、少し振り返りも兼ねておさらいするけど、ある年を境に急に発生した吸血鬼が増加し、それに血を吸われた人間が食人鬼になって世界に増加…そして、人間サイドのトップにはバイコーンが居て、その血を与えられて異形の力を手にし、各々のやり方で世界平和を目指す13人の使徒…1番から13番手までの神狩り
で、お姉さんはその内輪揉めに巻き込まれた。まぁ、アイツらみんな方向性の違い?って感じで不仲だから珍しい事じゃないけど、人間側のバイコーンがその中で唐突に狙って呼び寄せるほどの吸血鬼の貴方はなんなのか…」
丁寧に長々と話したと思えば、少し勿体ぶった言い方をするので肩を掴んで揺する
「わっ、もう!言う、言うよ!
バイコーンは実は完全に人間サイドじゃなくて、もっと上の存在。それで、吸血鬼・人間・食人鬼全員のバランスを取ろうとしてる、まぁそれでお姉さん吸血鬼なのに人間サイドの神狩りに迎えたいって何考えてるんだろうね?」
「知るか!」
拍子抜けして、声を少し荒らげてしまいクスクス笑われて調子が狂う、そしてまた続け始める
「面白い反応見れたからまぁ、言ってしまうんだけど吸血鬼って勿論元は人間だし、お姉さんは実は」
その時、急にこちらへ向かってさっきの化け物がまた現れ部屋のガラス張りの大きな窓が割れ衝撃波が走る。
4本の蹄のような脚は変形した人の膝関節までの骨のようであり、全体的に部分的に白骨化した鹿を思わせる見た目だがその頭の部位は人の頭部が無造作に埋め込まれているようであり、触手のように蠢く無数の腕が身体を取り囲んでいた。
そして、その酷く凍てついた獣のような声で話し始めた。
「護衛の食人鬼はあら方始末したと思ったが、さっきの一瞬我が嗅覚が新たな食人鬼の血の匂いを察知したぞ
そこに居るな、人ならざる不浄よ。そのようなものが我らの仲間となるなど言語道断、例えあの方の子孫と言えど許す訳にはいかぬ。神狩りが12番手人道王、ここで貴様を討ち取る。」
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