不浄の謁見編1
お久しぶりです、ダークファンタジーです
―さっきまで何をしていたのだろう、それすらも思い出せない中唐突に視界に飛び込んでくるのは錆び付いた赤色に蝕まれる世界だった
ストレッチャーや車椅子やらが無造作に置かれており、どうやら病院のどこかのようだが、鈍い赤色になるほど乾いた血が白い壁そこら中に張り付き、緑の非常灯だけが廊下を不気味に照らしている。
「あぁ…クソっ!頭が痛てぇ…なんなんだよこれ!」
頭に触れてみると特に外傷は無いが、脳の髄から貫くような痛みが暫くしていた。
少し痛みも収まり周囲を探索し始めると、どうやら廊下側面に並ぶ無数の閉まった鉄扉は、殆ど向こう側から物か何かで閉じられているようだった、時に壁に身をもたれ頭痛に耐えながら開く扉を探す。そして、廊下端にある正面側の扉が開くと次の廊下へ慎重に扉を開け見渡しながら出た。鉄扉が、ギィと音を立て開いたその時、正面左側の奥から突如男の叫び声と獣の鳴き声が聞こえ、血肉の千切られ砕けているかのような音に続き、重い肉やらが投げ落とされたような鈍い音が聞こえる。
「お、おい…やっ、やめ!ああぁぁぁぁあ…ぁぁ」
それが2度続いた。
2度目が始まる前にすぐさま扉の前に座り音の聞こえた扉の向こう側を覗くと、どうやら左端の曲がった先の通路から聞こえているようだった、四足歩行の動物のような重厚な足音が馬に近いリズムを鳴らし徐々に近づいてくる。
先程までいた廊下の逆側端は壁であり他の扉も閉まっているようなので引き返して逃げることも出来ない。急いで音を立てずに扉を出て右側の方へ移動し、近くにあった半開きの部屋に飛び込む。この部屋はガラス張りで、中には古い箱型のPCの並ぶ机や椅子が乱雑に置かれている。足音の大きさからこの部屋の扉を通ることはきっと出来ない上、こちらを認識していないのでわざわざこの部屋までは探しに来ないと推測した。この部屋の家具は乱雑に置かれてはいるが、倒れたり壊されたりが無く化け物に荒らされている形跡は無いのも根拠だ。通り過ぎるまでは暫くはここで身を隠すしかないだろう。
しばし机の下に身を隠していると、足音が近づいて来て唸り声がガラスの向こうから聞こえている。そして、気づいていないようで歩を緩めず通り過ぎ去っていった。
息を整えながら机の下から這い出ると、夢中で気づかなかったがPCの画面に文章のタブや、シャッターを遠隔コントロールをするタブ、それに院内の地図が表示されている。これは現状について知るヒントがあるかもしれないと思い、すぐさま読み始める。
―(ノイズがかかっており読めない時刻表示)非常用システム作動中、院内予備電源により現在稼働しています。予備電源残り稼働時間エラー。
-西病棟地下2階閉鎖区画904号室は空き部屋のはずなのに何か住み着いている気がするという声が最近よく出る。最初は近くの廊下を拭き掃除しに来た清掃員から始まり、同じ地下2階隣の区画へ見回りしに来た看護師達も隔離のガラス扉越しに物音を聞いている。この区画は現在使っておらず侵入できるような経路もないはずだが、防犯のため数人でガラス扉を開け音が聞こえたという時間帯に向かい実際に部屋を見てみたが、やはり誰も居ない。
又聞きでしかないが、この部屋は40年程前にある科学者が入院しており、その時代地下区画は全面立ち入り禁止とされ自分で何かの治験を行っていたらしい。30年程前に今の閉鎖区画が決められると地下区画はこの区画以外全て解放され、病室が現在のように使われ始めたがそれ以上のことは何も分かっていない。大方治験中に事故死でもしたソイツの幽霊かもしれないなどと言われるがバカバカしい。だが、患者の精神などを考え地下区画の使用はまた全面停止する事になりそうだ。
あら方見たが、やはりさっきの化け物がこの文章や病院のこの状況に関わっている可能性は高いのだろうか。謎が謎をよぶので、次は机や散乱している書類から何か情報が得られないか探してみると、血で汚れた封筒に入った便箋を見つけた。こう書かれている。
【人の身のまま力を求め異形と化したバイコーンの血を授かりし使徒、13体の神狩りに気をつけろ
この場所はバイコーンの聖域、奴らとてここに入ることは許されていないが、もしこれを読んでいるお前が使徒の補充として招かれた者なら地下2階の奴の元へ向かへば丁重にもてなしてくれるだろう】
ホラー描写にこだわり始めると、メインでは無いのに中々終わらなくなってびっくりしました
次からもっとペース早くなります
最後まで読んでくださりありがとうございます、次回更新もよろしくお願いします