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12︰浮かない食卓

月に二度、家族全員が食の間に集まり顔を合わせる機会がある。

それはオルフェンにとっては嫌悪する兄アルカリウムと、自身を狂愛する母シャメル、それから自身に無関心な父イグリードと顔を合わせなければならない苦痛の時間だった。




静かな食事の時間、食器が擦れる音すら殆ど鳴らない。

父が口を開いた。


「アルカリウム、勉学は順調か。」

「はい父上。先日行われた聖学と魔法研究の実技試験では金星を頂きました。」

「そうか、よくやった。流石トゥレライラの人間だ。これからも良く励みなさい。」

「はい、精一杯励んで参ります。」


試験で金星を取った兄を父が褒める。

金星とは5段階ある評価の内最優秀評価で、非常に優秀な成績を修めた者にしか与えられない。因みに5段階評価は上から順に、金星、銀星、銅星、赤星、青星となっている。銀星と金星の間には分厚い壁があり、生徒は皆金星を取った者に羨望の眼差しを向けるのだ。



「公爵様、オルフェンはこれまで剣術以外の全ての試験で金星を獲得しておりますわ。それに今日の魔法研究の授業では王家派閥のアインク侯爵の倅からシピア伯爵令息を救ったと耳にしました。それも、氷魔法を使って。」

「ああ、そうか。」

「貴方!我が公爵家の大切な嫡男が家系魔法で王家派閥に力を見せつけたのですよ。オルフェンはその子よりもずっと優秀なのです!優れた皇族の血も継いでおります。」


相も変わらずあからさまに俺に見向きもしない公爵に、母が必死にアピールをしている。

そんな死んだ第2夫人の子なんかよりも第1夫人であり皇女であった自身の子を認めてと、否、優秀な子を産んだ私を愛してと必死に。

公爵は亡き第2夫人、クレアを未だに想っている。

だから、そんな事をしても彼は振り向かないというのに。



「オルフェン、お前がどうして氷魔法を…」


アルカリウムが驚いた様子で問うてくる。


「私が持つ中で最も防御に優れているのは氷魔法です。魔法から守る為に氷魔法を使うのに何か理由が?」

「だが、お前は闇魔法に拘っていたじゃないか。」

「トゥモロウ伯爵に憧れ闇魔法の訓練をしていたことは確かですが、闇魔法には代償が付き纏いますので。それに、その場で最適な魔法を使用した事は正しかったと愚考致しますが。」

「そう、だな。…すまない。」

「兄上に謝られる事などございませんので、お気になさらず。」


(…駄目だな、アルカリウムに話しかけられると胸が憎悪で疼く。)


どうしても俺は兄に抱く感情を変えることはできないようだ。前世の記憶を取り戻して数日、これを確かめたのは2度目だ。

また、静かな空間へと戻る。

そしてそれ以降誰一人として口を開くことは無かった。







「オルフェン、貴方には優れた才能があるわ。あの汚らわしい女が産んだ子よりもずっとね。」

「勿論です、母様。」


晩餐後母に呼ばれ、約ふた月振りのお茶会を行っていた。と言っても夕飯後なので菓子はなく本当にお茶のみだが。

甘ったるい密の香りと果実の香りが紅茶から立っている。



「母様、此方の紅茶はどちらで手に入れられたのですか?」

「あら、気に入ったの?」

「はい、とても。」


母と話す時、俺は年相応に幼い面を見せる。素直に、従順に。そうすれば母は喜び、俺にずっと依存していく。


「これはね、公爵様から頂いたものなのよ。王室にある最高級のプリジールの花を使用しているそうよ。陛下からのご好意で頂いたんですって。」

「陛下と父上は非常に親交が深いと耳にしたことがあります。」

「そうよ、学生時代を共に過ごした仲なの。」

「父上は陛下にとても信頼されているのですね。」

「ええ、ええ!貴方のお父様は素晴らしいお方なのよ。だからね、あの女の息子をあの方の傍に近づけてはいけないわ。分かってくれるわよね?」

「勿論です、母様。安心してください、僕があの男よりも優秀だと父上にお見せ致します。」

「ええ、ありがとう。私の愛しい息子。」


母は立ち上がり俺を抱き締める。強い香水の香りに鼻が侵される。


「母様、これから明日の予習をしますので、失礼してもいいですか?」

「ええ、引き止めてごめんなさいね。しっかりお勉強なさい。」

「はい、母様。おやすみなさい。」

「ええ、おやすみ。」


俺は席を立ち、母の侍女が開けた扉から出る。1度後ろを振り向いて母に微笑みかけるのを忘れずに。従順な息子のアピールだ。




部屋に着いてから、侍女を下がらせ1人になった空間で、闇魔法を使って自身に解毒を施す。

あの紅茶には毒が入っていた。薄らとだが、確実に。


(バンボラ(操り人形)…)


それが使われていた。

密のように甘い香りが特徴で、死の危険性は無いが体内に含むと頭がぼんやりとする。俺が記憶を取り戻す前、悪行の為に様々な種類の毒を集めたことがあったが、その中でも致死性がなかった為試してみたことがある。それにそっくりだった。

それに、幼い頃に王子の遊び相手として訪れた王室でプリジールの紅茶は数回口にした事があるが、爽やかな果実の香りが特徴的な紅茶だった。密の香りなどしない。


(母を傀儡にしようと目論んでいる奴がいる。)



母が操られてしまっては俺の計画に支障が出るかもしれないので、犯人を突き止める決意をした。

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