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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編 ハズレアスキル『物質加工』を理由にパーティーから追放された俺、神の啓示通りに覚醒して最強に! もう役立たずとは言わせない。今更戻って来いだなんて知った事か。俺は一人で英雄になって……やる筈だった

作者: モミアゲ

 俺の名前はジェイク、しがない三流冒険者だ……今はだがな。

 切っ掛けさえあればドドーンと強くなって美女に囲まれながら英雄として生きていく、そんな人生を神から与えられているんだよ。


 あ? 妄想に浸ってないで現実を見ろ、だって?


 はんっ! 妄想なんかを理由にモンスター退治やら薬草集めだの危険な日雇い労働者になるかよ。

 過信じゃなく確信があるからわざわざ危険な仕事をしてるんだ。


「ジェイク、君のスキルには戦闘面で大きな欠点がある。僕達が言いたい事は分かるね?」


「……ああ」


 一仕事終えた後の祝杯を今から上げようって時に俺の前で真剣な顔をする冒険者仲間三人、細マッチョのイケメンのヴァイスに大柄マッチョのデーレン、ゴリラ女のアリーナ、この見てるだけで威圧感バリバリの連中と組んだのも俺の栄光の為、じゃねーなら誰がこんな連中と一緒に働くかよ。


 内心では向けられる真剣な目にウンザリしつつ、俺が期待している未来の第一歩である言葉を待ち構える

 ズバリ! ”お前をパーティから追放する。理由は役立たずだからだ!”、だ。


 くくく、俺を見下して追い出した後、俺のスキルが覚醒したのを知って戻って来いって言うだろうが遅いんだよ。


 取り敢えず説教がウゼェから真剣な顔を演じるが、ちょいと俺が華々しい未来を確信する根拠でも話してやるぜ。



 そう、あれは俺が餓鬼の頃、吟遊詩人が語る華々しい活躍をする上澄みの冒険者話を聞いてテメェも冒険者になろうって目を輝かせていた頃だ。


 まあ、直ぐに憧れは消えたんだがな。

 決して英雄にはなれないその他の一人でしかないんだと勘違いしちまった事によって。



「”物質加工”? そんなのが俺のスキル……?」


 七歳になると誰でも最低一つは発現する能力である”スキル”、仕組みは知らないがスキルの価値が高い程にスキルの数が少なくなるらしく、ちょっと便利な程度なら五個は手に入るとは聞いていたんだよ。

 俺も足が少し速くなるとか、泳ぎが上達し易いとか、強い奴は更に体を鍛えて弱いスキルを補うらしいから俺もそうする気だったし、一つしか持ってなかった時は本当に嬉しかったぜ。


「たった一つとか……俺って英雄の素質有るんじゃねぇの?」


 だって一つしか持っていない奴なんて本当に強い奴の中でも上澄み、最早伝説級の存在だ、周りに自慢したし、輝かしい未来を夢見たんだ。


 まあ、実際に使い勝手の悪さを実感して夢から覚めたんだけれど。


「つ、使えねぇ。手洗いとか手入れの手間が省けるだけじゃんか……」


 この物質加工、例えば生卵をオムレツ(バター・牛乳・調味料無し)にしたり、丸太を薪にしやすいサイズにするとか何だが……別に一瞬で完成する訳じゃない。

 空中で卵が割れて、かき混ぜられて通常焼く時間と同じ時間を掛けて焼く……みたいな感じだ。

 薪だって俺が斧を降るおろす程度の力で切れ込みが少しずつ入って、結局俺が丸太から薪にまで加工するだけの時間を使って俺が実際に加工した程度のクオリティで完成する。



 うん、便利っちゃ便利なんだよ。 

 使っている最中は集中しなくちゃならねぇし、それ相応に時間と体力を消費するけれどパンを捏ねる時に手が汚れないし、道具の手入れの手間も省けるから。



 それで! これでどうやって英雄になれってんだ!




 こんなのモンスターとの戦いじゃ殆ど役に立たない、と、俺はスキルを与えてくれているという唯一神アフシル様への恨みを募らせながら日々を過ごしていた。


 神官やってて俺にも回復魔法を教えて神官にしようって考えてる両親にはとても言えたもんじゃねぇが、期待させておいてコレは無いだろ!?


 怪我した時だって普通に出来るのだけは助かるんだが、こんなんじゃ英雄なんて夢のまた夢、安定しててそれなりの収入が見込める神官にでもなって、信仰していないアフシル様へ祈りを捧げる演技でもすべきかとボンヤリ考えていたある日、俺は夢の中でアフシル様に出会ったんだ。





「やあ。神を信仰してない神官候補君。まあ、人間に信仰されようが俺はどうでも良いんだけどさ」


 神殿に飾られている像とも見た目が違う、その辺を歩いていそうな散歩中の兄ちゃんみたいな格好をして、胡散臭さ満天の若い男。 

 なのに俺は一目で目の前の相手が神様だって理解した。

 息を吸うにはどうすれば良いのかって位に当たり前のように、最初から相手が神様だって知っていたかの如く俺は理解したんだ。


 ヤバいヤバいヤバい、まさか俺に神罰を与えに……。



「いや、違うけど? 信仰なんてどうでも良いって言っただろう? あっ、勝手に付けられた名前で呼ばれるの不愉快だからアフ何とかって呼ぶの禁止ね」


「は、はい!」


 一旦は助かった、のか?


 俺を罰しに来たと思ったんだけど、違うならどうして?


 心を読まれている事は神様だからと納得するが、俺の前まで現れる理由が全然分からず困惑していると、そんな様子なんて興味も無さそうに神様は告げた。




「お前のハズレなレアスキル、略してハズレアスキルを覚醒させる方法を教えてやるよ。それがこの世界での実験だからね」


「覚醒……?」


 何だ? つまりどういう事なんだ?


「まあ、簡単に言うと分類が同じなら別の物質に瞬時に加工可能になるのさ。普通の薬草を万病を治す薬草に変え、鉄の剣をミスリルの剣へと変える。君に加工技術が無くても瞬時に完全にだ」


「す、凄い! 駄目なスキルだと思ってたのに、そんなに凄い物だっただなんて!」


 俺は神様から告げられた物質加工の真の力に感激で打ち震え、自分が英雄になるのに相応しい存在であると確信した。

 後はその覚醒とやらをするだけなんだが、わざわざ来てくれたんだし、きっと今すぐに……。




「じゃあ、将来頑張って冒険者パーティーを追放されてくれ。君が努力を怠らず、諍いを故意に起こそうとしていないのに役立たずだと追放された時、それが覚醒する時だ。じゃあ、今から警察犬を杖に転生させるからさようならだ」


「は?」


 いや、やるべき事は分かったけれど、全然意味が分からないんだが……。


 俺は咄嗟に呼び止めようとしたが神様は姿を消し、夢から覚める。

 神様を神様だと理解した時と同様に今の夢は只の夢じゃ無いのだとの確信があって、この日から俺の努力の日々が始まったんだ。




「父さん。俺、冒険者になる!」


 取り敢えず戦闘では役に立たないスキルだから、料理や野営関連、狩猟の為の罠の作成に始まり、経理や交渉術も学ぶ事でちゃんとパーティーに貢献していると主張出来る様にして、回復魔法だって凡庸なレベル位は使いこなせる様になった。

 

 辛い日々だったが、全ては輝かしい楽勝な人生の為、そして運に恵まれた俺は理想的な仲間を発見した。

 そう、裏方の働きなんて理解出来なさそうな脳味噌まで筋肉でできていそうな連中で、それでも英雄には必須とされる”身体能力超強化”に加え、”ソードマスター”持ちのヴァイス、”剛力無双”のデーレン、”天武”のアリーナ、何奴も単独で英雄になれそうな上に三人だけでやってきた連中だ。


 上手く取り入ったし、戦闘では足を引っ張っている状態が最近続いている。

 つまり、俺を追放する日が近いって事だ。







「ジェイク、君には悪いが……」


 そして遂にタイミングが訪れたのだと、顔には出さずに全力で歓喜する俺。

 金も名声も手に入るし、美人の奴隷でも大勢買って侍らすのも楽しそうだと考えながら待ち構える。



 今すぐパーティーから追放する、その言葉を……。






「肉体を一から鍛え直して欲しい。大丈夫だ。僕達も全力でサポートするさ!」


「そんな!? 何で俺がクビ……ん?」


 今、何て言われた?


 クビじゃなくて、鍛え直す? ……え?




「驚くのも不満なのも分かっているさ。勝手な提案だと思うだろう。君がパーティーにどれだけ貢献しているのか、ちゃんと理解はしているんだが……」


「更なる飛躍を目指す為、新天地へと向かう。危険も多い」


「アンタと一緒に冒険者を続けたいの。お願い、了承してちょうだい」


 何かこう、キラッキラした目で非常に暑苦しい感じで勝手に燃え上がっている三人に俺は動揺を抑えきれない。

 えっと、何か予定と違うんだが。


 此処、俺を雑魚だと追い出す所だよな? えぇ……。



「わ、分かった……」


 でも、これで駄目な奴だと思われたら追放されるよな?

 自分から抜けたら追放にならないし、この三人とある程度有名になってるから新しいパーティーを探すのも苦労ししそうだと、俺はもう少し我慢する事にした。



 これが結構な失敗だったんだが……。







「も、もう無理だ。走れない……」


「諦めるな! 行ける! 君ならこの山道百往復を達成可能だ! 頑張れ!」




「九千八百五じゅ……未だ素振りが一万近く残って……」


「己を信じろ。今日のお前は昨日のお前よりも強い」





「んぎゃぁああああああっ! モンスターの群れと正面から戦って勝てるかよ!」


「あら、安心しなさい。危なくなったら助けるし、失敗して倒れ込んだとしても絶対に見捨てないわ! 私は、私達はアンタが絶対に倒れても起き上がれるって信じているもの!」





 まあ、こんな感じで俺の薔薇色の人生を送る為の計画は失敗しそうだが、それじゃあ今までの努力が水の泡だ。

 見てやがれ、絶対に俺を追放させてやるんだからな!!!













 そして数年後、俺は一人で巨大な金属製の門の前に立っていた。

 不幸な事に追放されて覚醒した訳じゃなく、四カ所同時作戦で悪魔に支配された城を襲うって最中だ。


 門の前に立ち、そっとスキルを発動すれば俺がこの門を殴った時に出そうな音と共に門が歪み、その音は鳴り続ける。

 そして十回目、門は鈍い音を立ててゆっくりと倒れ、俺は思い描いた未来の来訪を確信する。





「こんな門、三人だったら一撃で城にぶつける位にぶっ飛ばせていた。今回の事を話せば確実に……くく、ははは、くはははははっ!」



 既に英雄と呼ばれてる俺だが、覚醒すればこんなもんじゃねぇ!

 人間を金で買う事自体を嫌悪する三人のせいで奴隷も買えないし、女を取っ替え引っ替えも無理だ。

 何せ俺から不和を招いたら覚醒条件を満たせないんだからよ。





「来やがれ、悪魔共。んで、俺を苦戦させて情けない雑魚だと三人に理解させろ! それこそ追放したくなる程にな!」


 俺は絶対にスキルを覚醒させて最高の人生を送る! その時になって戻って来いと懇願しても遅いんだよ!






















「……え? 久々に様子を見たら彼奴、何であんな風になってるの? うわっ! うわぁ……。この結果には神だろうと……引くな。ぶっちゃけ覚醒させる必要無いだろ……」




ヴァイス リーダー いい人 脳筋


デーレン  いい人 脳改造


アリーナ  ゴリラ  いい人


ジェイク 主人公  


神様  胡散臭い



犬については別の作品  俺杖ぇぇぇ系ファンタジーを

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