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第三十四話 転移者 VS 転生者

いつもご愛読ありがとうございます!

投稿時間が遅くなり申し訳ございません!

 無事に異世界での修行を終えた俺たちは、王国を襲撃したオルガネラがいる屋敷に徒歩で向かっていた。

 オスミウムの飛行船で乗り込んでしまうと、外から攻撃されたときに対処しきれないためだ。


 オルガネラの仲間である魔術師のアリスから、エリス宛に〈念話魔法(ねんわまほう)〉で連絡が入ったのは、ちょうどカラムの修行が終わり、魔界から帰還した頃の事だった。


 連絡の内容は3つ。「魔獣の居場所を突き止めたセルラと合流したこと」、「魔獣討伐のための打ち合わせをしたいということ」、「温泉旅行から帰ったので、お土産を配るついでにパーティーをしよう」ということだった。


 最後の話は意味がわからなかったが、オルガネラの意味不明な言動は珍しいことではないらしい。

 知将として名を馳せた天才故に、他人には理解できない言動も多いのだとか。


 最後の話はともかくとして、連絡の主旨としては、魔獣討伐の協力要請だろう。だが、今のオルガネラは王国を襲撃した犯罪者だ。

 襲撃の目的も、俺たちが異世界で修行するために使った「境界結晶(きょうかいけっしょう)」とみられることから、最悪の場合、オルガネラは俺たちの敵である可能性もある。


 王国を襲撃した後、追っ手から逃れるために逃亡。そしてこのタイミングで、邪悪な魔獣の情報を餌にした俺たちへの接触。むしろ罠と考える方が自然だ。


 セルラが本当にオルガネラと共にいるのかはわからないが、魔獣を探している当のセルラとは連絡が取れず、他の手掛かりもないので、罠だとしても行くしかない。


 そのため俺たちは、オルガネラの屋敷から離れた場所で飛行船を降り、警戒しながら進んでいるのだ。


 そうしてだだっ広い草原を暫く歩いていると、反対側からこちらに向かってくる人影が見えてきた。


 人数は……5人。見覚えのない人たちもいるが、一行のうちの3人は、俺も知っている人物だった。


「セルラ!」


 対峙する俺たちの中で、最初に声を上げたのはアミラだった。


「姉さん……」


 アミラに応えるのは、緑眼緑髪の青年セルラだ。


「しばらくぶりじゃの。元気そうで何よりじゃ」

「懐かしいな! 前の戦いで助けてやって以来じゃね?」


 更に、転生者のイブとフェノが続ける。


「初めましての方もいますわね。私は『アリス・リボース』。オルガネラの娘ですわ」

「息子の『テレス・リボース』ッス。よろしくッス」


 丁寧に頭を下げたのは、オルガネラの娘だという黒髪の女性アリス。そして、軽い調子で挨拶をしたのは、金髪の青年テレスだ。


 アリスは聞いていた通り、見た目からして魔術師だ。テレスの方は槍使いだな。この世界の前衛は剣を使うことが多い印象なので、ちょっと珍しい。


「それで、なんでみんな、こんな所にいるんだ? というかセルラお前、邪悪な魔獣は見付かったのかよ」


 早く元の世界に帰らせろ。


「落ち着いてよニシヤ。僕たちはね、オルガネラから『キミたちを出迎えるように』って頼まれたのさ」


 セルラが俺の質問に答えず、腰の鞘からレイピアを抜いて構える。それを合図に、彼らは各々戦闘体勢を取り始めた。


「貴様ら……どういうつもりだ?」


 凍り付くようなエリトの声に、場の緊張感が高まる。そんな空気の中、相変わらずの軽い口調でテレスが答える。


「勘違いしないで欲しいッス。自分等は、皆さんの力を確かめたいだけなんスよ。強力な魔獣を相手にするのに――弱い人たちは連れてけないッスから」


 テレスがそう答えた瞬間、鉄を殴った様な鈍い金属音が響き、テレスが吹き飛ばされる。

 カラムが一瞬で間合いを詰めて放った拳を、テレスが寸前で槍で防いだのだ。


 防いだとはいっても、カラムの拳の威力を殺しきれた訳ではないようだ。ダメージを負ったテレスを見下ろし、カラムが冷たい声で静かに告げる


「……なめんじゃねぇぞ」


 もしかしたら、テレスは心配して言ってくれたのかも知れないが、あれは言い方が悪いな。カラムが切れるのは無理もない。

 いや、こいつ「人たち」って、言ったな。カラムは仲間のことになると特に沸点が低い。地雷を踏んだなテレスとやら。


「痛いッス……。流石は異世界で修行をしてきただけはあるッスね。お嬢、やっぱ自分だけじゃキツいかもしれないッス」

「だらしないですわね。まぁ良いですわ。この方が私たち二人相手にどこまでやれるのか、見せて頂くことにしますわ」


 アリスが回復魔法でテレスの傷を癒し、カラムに対して二人で対峙する。


 傷を一瞬で治したアリスが凄いのか、不意打ちともいえるカラムの攻撃を受けて軽傷で済んでいるテレス凄いのか。

 いずれにしても、それなりの手練れなのは間違いなさそうだな。


「姉さんの力は、僕が測らせてもらう。邪魔されたくないから、場所を移すよ」


 セルラがアミラに告げ、二人はこの場を後にする。


「では、妾とフェノの相手はおぬしじゃ、西谷。エリトとエリスとやら、おぬしらは先に行くがよい。オルガネラがパーティーとやらの準備をして待っておるそうじゃからの」

「へへっ、こいつを倒したら、おいらが『勇者』ってことじゃね? そしたら学校行かなくて良いかも……」


 俺がもし勇者だったとしても、学校には行かなきゃ行けない運命だぞ?


 そんなことより、こいつら二人って、変異種の魔物の群れを蹂躙したコンボとか使って来るってことだろ? 俺一人で相手するとか嫌なんだけど。


『あ? なんだよこの生意気なガキは』

『まぁまぁ、子供の言うことだし――どうせ私たちが勝つんだから』


 イブたちの話を聞いていたフェリアたちは、やる気満々だ。


 王国を襲撃したオルガネラは、エリトとエリスの幼馴染みだ。彼らはその事をずっと気にしていたはずだ。


 本当ならすぐにでも、襲撃の理由を問い質したかったはずなのに、彼らは魔獣から世界を救うという使命を優先した。


 そんな彼らを一刻も早くオルガネラの元に送り出してやるのが、この状況では正解だ。


 うん。わかるよ? 俺は空気が読める男だ。こうなったら一人で戦うしかないことくらいわかってますよ。ちくしょう。


「すまない。ここは任せた」

「ありがとう。すぐに追い付いていらっしゃいね」


 俺の無言を肯定と受け取ったエリトとエリスが、オルガネラの屋敷の方へと走り出す。


「他のやつらの戦いに巻き込まれてもつまらぬ故、場所を移そうぞ」

「どこでやろうと、結果は同じだけどな!」


 イブとフェノに促され、近くで戦い始めたカラムたちと距離を取る。


 頑張れ。俺。



 ――§――



「いざ、参る!」

「危ねぇっ!!」


 俺を先導して歩いていたイブが、振り返りながら言うのと同時に鋭い光線を放つ。それを、〈身体強化(しんたいきょうか)〉で鋭敏になった五感で危険を感じとり、体を捻って回避する。


 柔軟体操しといて本当に良かった。


 急いで体勢を整えようとする俺の視界の端に、何かが映る。フルフェイスの兜と甲冑に身を包み、剣を構えた兵隊。それがざっと数十人、俺を囲んでいたのだ。


 フェノの〈召喚魔法〉だな。この前は獣の群れとかデュラハンだったけど、こっちの方が強そうだ。


「行け! 〈召喚騎士(サモンソルジャー)〉!」


 フェノの掛け声と共に、召喚された騎士たちが一斉に迫ってくる。


 普通に迎え撃つだけなら難しくないだろうけど、相手にイブがいる以上、幻影の魔術には注意が必要だ。もしかしたら、姿を消した騎士や、逆に実体のない騎士がいるかもしれない。


『はぁ。なめられたもんだよね。ニシヤくん、ちょっと肩の力を抜いて。体の動かし方を教えてあげる』

「えっ? おう、わかった」


 突然声を掛けてきたフェリアに戸惑いつつも、言われた通りに力を抜く。

 すると、なんと俺の体が自然と動き始めた。無論自分の意思で動かすことも出来るが、まるで長年やってきた作業をするかのように、体が感覚で反応するような不思議な感覚だ。


『見えなくたって……防いでみせる!』


 俺の体が流れるように動き、甲高い金属音が連続して響く。

 逆手に構えた右手の剣が、光の魔術で隠された不可視の斬撃を含め、全ての攻撃を舞うような動きで弾き切ったのだ。

 その様子に、イブとフェノが瞠目する。


『私くらいになると、五感に囚われずに戦えるのだー!』


 フェリアが得意気に声を上げる。俺以外には聞こえないんだけどね。

 確かに剣に五感があるはずもないので、あながち嘘でもないんだろうけど。


 というか、体を高速で変な方向に捻ったお陰で、身体中が痛い。柔軟体操やっとけってのはこういうことかよ。


『ぼさっとしてんなよ。次の段取りはわかってんだろ?』


 もう一人のフェリアの声と共に、黒剣を持った俺の左手が右の腰で構えられる。

 体の動きだけじゃない。考えていることまで、なんとなく伝わって来る。次の技は――


「<灼熱剣しゃくねつけん流刃りゅうじん>!」

『<ブレイズカノン>!』


 振り抜いた黒剣から炎が弧を描いて放たれ、吸い込まれるような軌道でイブたちに迫る。

 しかし、完璧な軌道で放たれた炎の矢は、イブたちをすり抜けて地面に突き刺さり、轟音と共に煙を上げた。


 予想はしていたが、やっぱり幻影か。光の魔術〈神隠かみかくし〉で姿を自由に消せるのだ。戦闘中に使わない理由はないよな。……ん?


『今の、見えたでしょ?』


 フェリアの言葉に静かに頷く。今の攻撃で生じた黒煙が、ほんの一瞬不自然に歪んだのを、俺は見逃さなかった。


 祈るように胸元に構えられた右の手が、垂直に頭上に移動する。


 いつもやっているのとは違う構えだが、この技もわかる。


「<湧水剣ゆうすいけん飛刃ひじん>!」

『<天泣てんきゅう涙雨なみだあめ>』


 掲げられた俺の剣から、無数の水の刃が放たれる。狙うは当然、煙の中に一瞬見えた歪みだ。


「むっ!?」


 イブの声。手応えありだな。


 イブの〈神隠かみかくし〉は、光を操って姿を隠す魔術だ。不規則に揺れる煙の中で光の軌道を理解し、自分たちの姿だけを完璧に隠すのは、流石に難しかったらしい。


 それにしても、フェリアと一緒に技を放っているだけあって、威力は今までと段違いだ。

 インフェリアルソード発動時には及ばないものの、あっちは魔力の消費が大きすぎるから、こっちの方が使い勝手は良いな。


 水の刃の着弾から数秒遅れて、少し離れた場所に傷だらけのイブとフェノが現れる。フェノの〈反転召喚(はんてんしょうかん)〉による瞬間移動だ。


 心配はしていない。あの程度で倒せる相手ではないからだ。

 俺が子供を傷付けた挙げ句、その威力に感心するような外道だからでは断じてない。


「よもや……あのへっぽこ勇者がここまでやりおるとはの」


 イブが静かに溜め息をつき、右手を高く掲げる。


「おいおい。それ切り札だろ? 良いのかよこんなとこで」

「なに、ここで終わっては、あやつの力を測ったことにはなるまい。それにこのままでは……ちと悔しいからの」


 昼下がりの戦場に、夜の帳が下りる。周囲の光がイブによって集められ、妖艶な光を放つ無数の人魂となって、薄暗い世界を照らしていた。


「〈夢幻夜行むげんやこう〉……」


 イブが透き通るような声で静かに呟き、ゆっくりと腕をこちらへ向ける。


『私たちに魔力を込めて! 早くっ!!』


 息を呑むような美しい光景に、思わず見惚れてしまいそうになったが、フェリアの声で我に返る。


「〈インフェリアルソード〉!」『<てん引力いんりょく>!』


 俺がインフェリアルソードを発動させて、剣が光の粒子を纏うのとほとんど同時に、フェリアが剣に重力を発生させる。

 その直後、無数の人魂から光の弾丸が一斉に放たれ、右手の白い光の大剣に突き刺さった。


 もしもフェリアの技がなければ、この光の弾幕は、剣ではなく俺に向かって来たのだろう。

 想像しただけで背筋が凍る。何が力を測るだ。ふざけやがって。


『さぁ、跳ね返すよ! せーのっ!』

「あ、あぁ! <重力剣じゅうりょくけん斥刃せきじん>!」

『<つち重力波じゅうりょくは>!』


 剣が放つ重力を反転させ、発生した斥力に乗せて、吸着させた光の弾幕を跳ね返す。


 放たれた光が周囲の人魂を一斉に貫くが、一瞬だけ霧散した人魂たちは、すぐに元の形を取り戻してしまった。

 そして再び、俺に向かって光の弾丸を放って来たのだ。


『えぇっ!? また!? <てん引力いんりょく>!』


 フェリアが驚いた声をあげたが、すぐに剣から重力を発生させ、光の弾丸を受け止めた。


「〈武装召喚(サモンアーマー)〉!」


 イブの攻撃に気を取られている俺に向かって、今度はフェノが迫ってくる。その姿は、黒を基調として所々に金色の装飾がなされた鎧に包まれていた。


『危ねぇ!』


 ナイフような速度で放たれた、フェノの身の丈ほどもある大剣を、左手の黒い光の大剣で迎え撃つ。


「あいつばっかり楽しそうだしよ。おいらも思いっきりやらせてもらうぜ!」


 フェノの声と共に互いの剣が離れ、剣戟が始まる。


 こいつ、速いな……。それに、重い。


 鎧を纏ったフェノは、見た目の重厚さとは裏腹に、猿のように縦横無尽に飛び回り、連続で攻撃を仕掛けてくる。

 それでいて、その攻撃は見た目通りの衝撃を俺に与えてくるのだ。


 さっきの技名から考えて、フェノが使った召喚魔法は「装備を召喚する魔法」とみて間違いないだろうな。

 それもただの装備じゃない。自信の身体能力を大きく向上させる類いのものだ。


 確かにゲームとかだと、装備すると能力値が上がるみたいなやつはある。けれど、重い鎧を装備して素早さが上がっている光景は、実際に見るとかなり異様だな。


 右手の剣はイブの攻撃を防ぐのに手一杯なので、俺はフェノの攻撃を、左手の黒剣だけで防いでいる。

 今のところはなんとか持ちこたえているが、このままでは敗北は時間の問題だ。


 だが、俺は今までの俺じゃない。思い出せ。異世界での修行を。フェリアたちとの戦いを。


(なぁ、聞こえるか? ちょっと俺の言う通りにしてくれ)


 フェリアたちが使って来た技を思い出しながら考えた作戦を、声に出さずにフェリアたちに伝える。


『確かに、それならなんとかなるかもだけど……本当に良いの?』

『おもしれぇじゃねえか。今更待ったはなしだぜ? この生意気なガキどもに格の違いを教えてやるよ』


 俺の考えた作戦は、相手にとってかなり危険なものだ。今の俺たちが本気で攻撃すれば、大抵の相手は無傷ではいられないだろう。

 自分で考えておいて難だが、敵対しているわけではないイブたちに対してここまでやるべきだろうか。


「よそ見してんじゃねぇよ!」

「っ!?」


 一瞬思考に気を取られた俺に、フェノの刃が迫る。咄嗟に回避したものの、完全には避けきれず、俺の頬に鋭い痛みが走る。


「そろそろ終いかの」

「まぁ、おいらたちを相手によく頑張ったほうじゃん」


 イブたちの声は、心なしか残念そうに聞こえる。彼らの目的は、俺の力を確かめることだ。そのために、全力で俺に挑んできてくれた。ならば俺も、全力で答えるのが礼儀じゃないか。


 それに……年下相手に負けるのは悔しいしな!


「行くぞフェリア。上手く合わせろよな!」

『うん!』

『任せな!』


 フェリアに声を掛けると同時に、足に魔力を込めて、大きく跳躍する。


「<風圧剣ふうあつけん>!」

『<風花かざはなその>!』


 更に真下に風圧を放ち、俺の体はかつてない程に高く舞い上がった。

 イブが周囲の光を集めたことで訪れた夜の空間を抜け、眼下に望む。


 この技を使えばどこまで高く飛べるのか? フェリアと戦った時から抱いていた疑問だ。空を飛ぶのは人類の夢だからな。

 答えは、大学の10階から見た景色よりもちょっと高いくらいだ。周りの景色が違いすぎるから、あまり正確ではないかもしれないが……。


 さて、そんなことを悠長に考えている時間はない。フェノはともかく、イブの攻撃は間違いなく上空まで届くだろうし、俺の滞空時間だって長くない。


「この一撃で決める!」


 左手に構えた黒い光の大剣に、ありったけの魔力を込める。


「<静電剣せいでんけん雷刃らいじん>!」

『<トレノエレジー>!』


 雷を放つその技を、黒フェリアと共に放つ。<静電剣せいでんけん>の技名の由来は、かつて黒フェリアに技を使われた時に、俺の髪の毛が下敷きで擦ったように逆立ったことから来ている。


 名前だけ聞けば弱そうかもしれない。だけどこの技の破壊力は――俺の技の中では最強だ。


「いっけぇぇ!!」


 空中で身体を捻り、振り下ろした黒剣から放たれた漆黒の巨大な稲妻が、夜の帳を切り裂き地面を吹き飛ばした。


 かつて陽光の丘でエリスが放った、詠唱ありの雷魔法。目の前の稲妻は、その威力すらも上回っているように思う。


 魔術隷剣まじゅつれいけんは燃費の悪い剣だ。異世界転移で得た特別な能力で魔力を増やし続けた俺を持ってして、初めてまともに威力を発揮する。

 それだけの量の魔力があるのなら、剣の魔術と同等の強力な魔法を何発撃てることだろう。

 だが逆に言えば、魔力が多ければ多いほど、剣の魔術は威力を増すのだ。


 雷が落ちた直後は見えていた地面は、今では砂埃で殆ど様子を確認出来ない。


 こうして見ると、本当にすごい威力だ。思わず鳥肌が……いや、鳥肌というか――浮遊感?


 空中で自由の効かなくなった俺の体がゆっくりと降下を始め、加速度的に勢いを増して――


(ってこれ、落ちてるじゃねぇか! この前フェリアはゆっくり降りて来てただろ!? どうなってんだ!)

『この前? ああ、あれはね、降りるときに……ちょっとね。説明するのもやるのも難しいのよ』


 ちくしょう諦めやがった!


(こうなったら、魔術でもなんでも――)

『無理じゃねぇか? さっきの雷で、魔力殆ど使いきっただろ?』


 黒フェリアさん解説ありがとうございます。どおりで凄い威力でしたよ!


『打つ手ないみたいね。はぁ、こんなんで使うのは、安売りするみたいで嫌なのだけれど……』

『まぁ、出し惜しみして死んだらバカみてぇだし、しょうがねぇだろ』


 フェリアたちの意味深な会話が気になるが、それどころではない。地面がどんどん迫ってくる。


『いいわ。仕方ない。ニシヤくん、せめて目を閉じて』

(え? わかった!)


 訳もわからず、言われた通りにする。もうどうにでもなれだ。


 ほんの一瞬、俺の体が空中で制止するのを感じる。

 そしてすぐに、お尻に鈍い痛みが走る。恐る恐る目を開けると俺は地面に尻餅をついていた。


 助けてもらった以上文句は言えないがどうせならもう少しゆっくり下ろして欲しかったな。


「おっとそうだ! イブたちは!?」


 砂埃で視界が遮られる中、急いで立ち上がり、彼らを探す。


 力を見るための戦いでムキになって"やってしまいました"なんてことになったら、笑い事では済まない。


「力を見るとは言ったけどさ、ちょっとは加減考えろっての!」

「うむ。勇者の技というにはちと足りんが、魔獣に挑む一員としては申し分なかろう」


 後ろから掛けられた声に振り替えると、そこに立っていたのは、傷だらけのイブとフェノだ。


 いやいや、先に本気で攻撃してきたのはそっちだし、お互い様だよね?


「おいらが盾を召喚してたから、こんなもんで済んだんだぜ?」

「何を言うか。妾が攻撃を相殺しようとしたからこの程度で済んだのじゃ」

「なんだと!?」

「なんじゃ? 文句があるのかえ?」


 始まったよ……。前に会った時から3年の月日が流れて、彼らもだいぶ大人っぽくなったと思ったけど、まだまだ子供だな。年齢でいえば中学生くらいにはなるだろうに。


『あたしの攻撃を受けて、あんだけ元気を残してるとか、生意気なガキ共だぜ』

『ふふっ。将来が楽しみだね』


 イブたちの様子に、フェリアたちはどこか嬉しそうだ。確かに、彼らが俺くらいの年になる頃には、俺なんかよりも遥かに強くなるだろう。

 もしかしたら、王国でもトップクラスの実力を持つエリトやエリスに匹敵する逸材かもしれない。


 この世界の人たちには強くなってほしい。

 俺みたいに人違いで異世界から連れてこられる人が、二度と現れないことを願うばかりだ。


「……。カラムたちと合流するか」


 イブたちに放置され、手持ち無沙汰になった俺は、言い合いを続けるイブたちをよそに、カラムたちと別れた地点に向かって歩き出した。



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