第一話 勇者じゃないけど異世界転移
初投稿です!
一生懸命書いたので、是非読んで下さい!
俺は西谷稜太。年齢は20歳。大学生です。
……ちょっと普通過ぎるかな?
今日は初めての合コンだし、もっとインパクトのある自己紹介の方が良いかな。
「え~、よってこの問題は――」
はぁ、講義早く終わらないかな……。
いつもの教室。講師の声を遠くに聞きながら、俺は今晩の予定の事で頭がいっぱいだった。
今日は初めての合コン。彼女いない歴20年の俺が、人生の新たな一歩を踏み出す……予定の大切な日だ。
とは言え、いくら考えていても、講義が早く終わる訳でもない。
そういえば、あいつに頼んでたやつ、そろそろできたかな?
話は変わるが、俺には、所謂中二病の友人がいる。「異世界」だの「魔法」だのと、毎日飽きもせず話題を振ってくる友人だ。
架空の設定だろうに、良く思いつくものだと、呆れ半分感心半分といったところだ。
そんな彼に、興味本位でファンタジー小説の依頼をしてみたところ、「西谷が主人公で良いか」と聞かれたので、適当に相槌を打った。三日ほど前のことだ。
俺自身は中二病どころか、ファンタジー作品には疎い方だが、自分が主人公の小説ともなれば、やはり興味も湧いてくるというものだ。
俺が主人公の小説か。主人公って言ったら、やっぱり『勇者』だよな……。そうだ! 合コンの自己紹介はこれで行こう!
――俺は西谷! 世界を救う『勇者』です!
なんてな。……って、あれ、急に眠くなってきた……。昨日飲み過ぎたか? 飲み会の西谷と呼ばれた俺としたことが……。
「え~それでは、来週の小テストの範囲ですが――」
あっ、待って、せめてテスト範囲……だけは……。
学生として聞き逃してはならないフレーズに、俺の耳が反応する。
しかし、「眠気」という人間の三大欲求のひとつに、俺の意志はあっけなく敗北したのだった。
――§――
「うっ……」
体がだるい。纏わり付くような倦怠感に抗い、なんとか体を起こす。
教室の机に突っ伏していたはずの俺は、なぜか地べたにうつ伏せになっていた。この時点で明らかだが、ここは大学の教室の中ではない。
どういうわけか屋外だしな。
なんとか立ち上がり、周りを見渡すと、そこは廃村のようだった。倒壊した家も多い。
まるで映画やドラマのセットのようだったが、人の姿はなく、ひどく不気味な雰囲気が漂っていた。
まぁ、どう考えても夢だろうな。それ以外はありえない。来週のテスト範囲のことは、目が覚めたら誰かに聞くか。
ここで、自分の体が自由に動くことに気付く。
そういえば、夢の中で夢だと気付くと、自由に動けるんだったか。ただの噂かと思ってたけどな。
目が覚めるまでやることもないので、廃村を少し歩いてみることにする。
それにしてもリアルな夢だ。どんより曇った空。湿った空気に乗って漂ってくる土の匂い。果ては建物のドアの木目まで、現実そっくりである。
そんなこと考えながら歩いていると、隣の路地から大きな声が聞こえた
「<疾風閃>!!」
大きな声と物音がした通路を覗き込むと、そこには一人の男が立っていた。
20代後半くらいだろうか、革製の黒いロングコートを着た銀髪の男が、鉄製と思われる剣を構えて立っていた。
その足元には人骨模型――理科室によく飾ってある骸骨みたいなやつだ――の破片が散らばっている。
うわっ! 「痛い」……!
どこからどうみても「痛い」人だ。ここまでの奴は初めて見たが、まぁ夢だしな。
「ん? 民間人がまだ残っていたのか。ここは危険だ。近くの街まで護衛しよう」
「えっ? いや……だ、大丈夫です」
俺に気付いた「痛い」お兄さんが話しかけてきた。近くの街まで送るという。
ダメだ。夢の中とはいえ、それは避けたい。だってそうだろう?
自分の部屋とかならまだしも、野外で「それっぽい」恰好をして、技名(?)を大声で叫びながら人骨模型を破壊する、俺より年上のお兄さん。
人の趣味にケチをつけるつもりは毛頭ないが、一緒に歩けるかと言われれば別問題である。
心の中で言い訳しつつ、踵を返す俺の目の前に、人骨模型が立っていた。
こんなのさっきあったっけ? 邪魔だな。
道を塞いでいた人骨模型をどかそうと手を掛ける。
「えっ!?」
なんと、人骨模型が倒れて――いや違う! 明らかに俺の首に噛みつこうとしている!
――一瞬、時間が止まったような気がした。
そうか。死ぬ直前って、時間がゆっくりになるんだっけ……?
律儀な夢だな。夢だから痛くはないんだろうけど、人骨模型の歯が首元に迫ってくるとか、軽くトラウマだよな。夢ならここで終わってくれよ。続きの光景なんか見たくない。目を開けたら、俺は大学の教室に……。
「いてっ……」
体勢を崩し、その場に倒れこむ。
静かに目を開けると、そこにはバラバラになった人骨模型と、いつの間にか移動してきた「痛い」お兄さん。
そして、倒れた時に打った肩の「痛み」。
あれ? これってもしかして、夢じゃない……!?
「だから送ると言っただろう」
「あ……ありがとうございます」
助かった……。いや、助けられたのか。俺。
「痛い」お兄さんなんて思って、悪かったな。第一印象が衝撃的だっただけで、悪い人じゃなさそうだし、少し話してみるか。
「この動く人骨模型って、何なんですか?」
「何と言われてもな。魔物だが。それ以上の説明が必要か?」
「何言ってんだこいつ?」と言わんばかりの視線が向けられる。
えぇ? 魔物? 冗談で言っている感じじゃないし、その顔こっちの顔だよね? やっぱり「痛い」お兄さんかもしれない。
「まぁいい。この先に『アーメリア』という港町がある。民間人はそこまで避難を――」
「待って、お兄ちゃん」
声のする方へ振り向くと、路地から現れたのは一人の女性だった。
「お兄ちゃん」ってことは、兄妹かな。
ゆるフワロングの黒髪で、兄とは色違いの青いロングコートを身にまとっている。年齢は20代前半ってところか。うん。兄よりまともそうな感じだ。
「その人、魔術を使おうとしていたわ。そうよね?」
「……。は?」
兄よりヤバそうな人だった……。
――§――
「なるほど。つまりキミは『ダイガク』という場所にいて、気が付いたらこの場所に移動していたと」
「堂々と魔物に触れたのは、魔術行使の為ではなく、魔物という存在を知らなかったからなのね」
「そうそう。やっとわかってもらえたか」
俺は普通の大学生だぜ? 魔法なんて使えるわけないじゃん。まぁ、このままだと「魔法使い」になりそうな訳だけど……って、やかましいわ!
脳内で一人漫才をかましつつ、納得する兄妹を眺める。
「お兄ちゃん。この人は……」
「あぁ。信じがたいが、間違い無さそうだな」
どうやら誤解が解けたみたいだ。
「あなた、『勇者』だったのね」
どうやら誤解が深まったみたいだ。なんでそうなるの!?
「魔物の残党も片付いたようだ。立ち話も難だし、我々が滞在している、港町の宿に向かおう」
イヤだよ! なんでこの歳で、中二病ごっこに付き合わなきゃいけないんだよ! 今日は初めての合コンだし、早く帰って準備を……帰る? どうやって?
「道中にも魔物がでるわ。『勇者』のあなたなら大丈夫だと思うけど、せっかくだし、一緒に行きましょう」
「……はい」
俺に選択肢は無かった。
こうして俺は、中二病兄妹と連れだって、港町「アーメリア」の宿に向かうことになった。
夢なら覚めてくれ!
【おまけ】今日の振り返りと次回予告
えっと、見えてるかな? はじめまして、西谷です。って自己紹介はもうしたよな。
突然謎の場所で目が覚め、謎の兄妹と行動を共にすることになった俺。
果たして無事に大学に帰って、合コンに参加することができるのか?
最後まで楽しんでくれよな!