表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最強女魔法使い『疾風』!! アイドルデビュー大作戦!!!!

【短編版】最強女魔法使い『疾風』!! アイドルデビュー大作戦!!!!

【最終話! 疾風、アイドルを目指し、旅立つ!!】

(↑早いわ!!!!)


 いせかーい、異世界の事でした。


 ある所に『疾風(はやて)』という、女魔法使い(15歳)がおりました。



 実はこの疾風、【魔法使い】という職業に就いた自分を、とても嫌っておりました。



 何故ならこの世界では、生を受けた時点で今はやりの『スキル』とかいう能力が与えられ、それが将来の職業に大きな影響を受けてしまうからです。



 例え、子供の頃に「小説家になりたい!!」と夢を見ても駄目なのです。想像力や発想力より、筋力や剣技が上回ってしまうのですから。



 大人からすれば、向いている職に就かせようとするのは、ごく自然の事なのかもしれません。



 そういう事もあり、ほとんどの人は他の職業になるのを諦めてしまいます。



 しかし疾風は違いました。


【炎属性】の中でも、最強の部類に入る【業火】というスキルを与えられたにも関わらず、畑違いの職業に就くことを夢見ていました。



【スキル】という呪いに抗おうとしていたのです。




 そんなある日の事でした。


 疾風は、生まれ故郷である小さな村【チサイ村】の中を、親友で幼なじみの『チッテ』と歩きながら会話をしておりました。



「……はああぁぁ……アイドルになりたい……」


「また言ってるの? 疾風?」



 このチッテは疾風と同い年の女の子で、与えられたスキルは【混合魔法】でした。混合魔法とは、色々な属性の魔法を掛け合わせ、新たな魔法を生み出せるスキルの事です。


 因みに、氷属性と風属性を掛け合わせると【吹雪】ができます。



「ねぇ……疾風、どうしてそんなにアイドルになりたいの?」


「……そんなの解りきってるでしょ!? みんなにちやほやされたいからよ!」


「でも疾風なら、アイドルにならなくてもそのスキルのお陰で、十分みんなにちやほやされるじゃない?」


「……それ、本気で言ってるの……?」



 そうなのです。疾風のスキルはあまりにも強力過ぎる為、周りの人達にドン引きされてしまうのでした。特にファイヤーマウンテンに住む火属性のファイヤードラゴンを、業火のスキルで倒してしまった時の村民の引きっぷりは、それはもう凄いものでした。



「あの時の私、何て言われたか覚えてる!? 『属性ブレイカー』よ? 『属性ブレイカー』!! 『属性ブレイカー疾風』よ!!!!」



 疾風は、左腕をチッテの胸元に差し出す様に伸ばすと、余った右腕を頭の上で振り回し、大声で叫ぶのでした。



「は、疾風……三回言わなくても解るよ……」


「何言ってんのよ!? 大事な事だから三回言ってんじゃない!?」



 疾風は、大声で叫びながら言葉を続けます。



「大体さぁ、チッテ! 私の気持ちが周りのみんなに伝わったことってある!?」


「そ……それは……」



 チッテは押し黙ってしまいました。



「でしょ!? この前なんてさぁ!? 初めて男の人と付き合えたのに、ちょっとイフリートを倒して戻って来たら……あの野郎……」



 疾風は、振り上げていた右腕と差し出していた左腕を握り拳に作り替え、自分の胸の前でわなわなと震わせます。



「『君、強さが過ぎるわ。別れよ?』とか言いやがって!! それ知った上で付き合ってたんじゃねーのかよ!? ふざけんな!!」


「……は、疾風……ちょっと落ち着いて……? ね……?」



 チッテは、胸元に持って来た両手の甲を自分の方に向け、一歩引きながら疾風を宥めます。




「でもね、疾風……いくら頭にきたからといっても、片手剣を振り回しながらその男の人を追いかけちゃ駄目だよ……」


「仕方ないじゃない! 村の中では魔法使うのは絶対禁止事項なんだから!!」


「消し炭も駄目だよ……疾風」



 チッテはさらに一歩引きながら、優しい口調で話しかけます。

 すると、疾風は振り向きざまにチッテに指を差し、思い出したかの様にこう言いました。



「そういえば、チッテ! あの時、後ろから私の事を羽交い締めにしたでしょ!? なんで止めたのよ!?」


「しょ……しょうがないじゃない! あんな男の為に、疾風を犯罪者になんて出来なかったんだから!!」



 その言葉を耳にした疾風は腕組みをすると、頬を紅く染め照れ臭そうに顔を反らします。



「あーそれはどうもありがと! とても嬉しいわ!!」


「……いや、その……どう致しまして……」




 疾風とチッテがそんな会話をしながら歩いていると、ふたりは村の中心地にやって来ます。中心地といっても人通りはまばらで、今も道の脇に設置されている立て看板に、新しいお知らせが書かれた紙を貼りだしている男性職員がひとり、いる程度でした。





「あ……ねぇ、看板見て行かない? お知らせが新しくなったみたい!!」



 男性職員が古い貼り紙を回収し、去って行くのを見たチッテは、早速、新しくなったお知らせを見に行こうと疾風に声をかけます。ですが、疾風は乗り気ではありませんでした。古いお知らせと、同文そのままであることが多かったからです。


 それでもチッテは、何か面白い知らせが出ていないかと期待し、立て看板の前まで駆けていきます。



「どうせ大したこと書いて無いわよ……」



 疾風はそう言いながらも、チッテの背中を追いかけて行きました。



「えーと、なになに……」



 立て看板の前まで来た疾風とチッテ。ふたりは早速、張り紙に目を通し始めます。

 すると、新しいお知らせが出ていました。



「……『路守蛇(ろすだ)さんの家の子犬が行方不明』……知らんわ!!」



 子犬探しでした。



「疾風、探してあげたら?」


「……気が向いたらね」



 疾風とチッテは、立て看板に出ているお知らせに次々と目を通していきます。



「……『みんなで祝おう! チサイ村収穫祭』」


「……『○○図書館に、本の寄付を!』……この前したわ!!」


「……やっぱり、前とあまり変わらないね……」



 疾風とチッテは、前回とほぼ同じ内容に気落ちしながらも、新しいお知らせに目を通し続けます。


 ……と、その時でした。ふたりの目に、とても珍しい文字が飛び込んで来ました。






【王都からのお知らせ】






「王都からのお知らせ!?」



 チッテは、滅多に来ること無い王都からのお知らせに、思わず声をあげてしまいます。

 そこには、こう書かれていました。






【王都では、魔王の軍勢の度重なる攻撃により、我が軍は疲弊している。このままでは、王都が陥落するのは時間の問題だ。

 誰でもよい、魔王を討伐してくれないだろうか?】






「……王都って今、大変な事になってたんだ……私達の住む村は魔物に襲われないから、解らなかった……」



 チッテは、王都からのお知らせを読んで、自分が外の世界にとんと無頓着だということを思い知らされます。



「これは、いよいよ危機的状況かもねー」



 疾風は、胸の前で腕を組みながら他人事の様に言います。



「……何とか……出来ないかな……」



 チッテは、お知らせを見つめながら呟きます。



「何とかって?」


「え? だから、その……魔王を……倒す、とか……」



 疾風は、チッテがしどろもどろに口にした言葉を、ばっさりと否定します。



「止めときなさいよ、チッテ。無駄死にするだけよ」


「……そ、そんなあ……」



 気落ちしてしまうチッテ。



「……私達が責任を感じる事なんて無いわ。大体、困った時だけ村人に助けを求めるなん……」



 その時でした。疾風の目に、ある一文が飛び込んで来たのは。




「……ど、どうしたの? 疾風……?」




 チッテは、お知らせを見つめたまま動かなくなった疾風を心配して、声をかけます。



「……こ……これよ……」


「……へぇ……?」


「これなのよぉー!!」


「きゃああぁぁーー!!」



 突如、疾風は立て看板に向かって右手を突き出すと、貼ってあった紙を豪快に破り取り、それを高々と掲げます。



「と、突然どうしたの!? 疾風!?」


「チッテ! 私、今から魔王討伐に行ってくる!!」


「え!? 魔王討伐は無駄死にするだけだから止めとけって言ってたのに、何があったの!?」


「さっきはさっきなのよ!!」



 疾風はそう言うと、くしゃくしゃにしたお知らせの紙を両手で開き、王都からのお知らせの最後の一文に指を差します。



「ほら、ここを見て!」


「……ここって言われても……えーと……」



 チッテは、疾風の指差した所を一言一句丁寧に読み上げます。



「【魔王を倒した者には、その報奨としてひとつだけ望みを叶えてやろう】……って、まさか!!」



 疾風は右手でぎゅっとお知らせの紙を握り潰すと、全てを悟ったチッテにこう言いました。



「そうよ! 私は魔王を倒して、その報奨としてアイドルになるの!!」


「えぇー!? 本気なのぉ!?」


「本気も本気よ!! 待ってなさいよ、魔王! 今行くからねぇー!!」


「あ、待ってよ! 疾風!! ひとりじゃ危ないよぉ!」





 ……こうして、疾風とチッテのふたり旅が始まったのでした。



 ……おしまい。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  面白いです。  先ず、名前のセンスが私には合ってました、次、ある意味リアルに近く、無双が無い?少ない所、いろいろハショッテ、こうした物語は続けるのが難しいかな? [一言]  疾風迅雷 (…
[良い点] 掴みがスゴイです。 冒頭が最終回──面白かったです♪ チッテと疾風の魔王討伐の動機も愉快でした。 ハードル的にはもう一個の方が低い筈なのに敢えてそちらの道に突き進むという( *´艸`) […
2022/08/09 23:16 退会済み
管理
[良い点] 目標のために頑張れ! ( *´艸`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ