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死に戻った最強勇者は、すべてを守り切る  作者: 柚鼓ユズ


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57話 ハイン、人生初の試みに挑む

「……分かりました。ではハイン君、今回はハキンスからの推薦クエストを受ける、という事で構わないかな?」


 ミス教官の言葉に、力強く頷く。そんな自分に教官が言葉を続ける。


「分かりました。では、二、三日中には詳細の通達があるので、そのつもりで準備をしておいてください。本日は以上です」


「分かりました。それでは失礼します」


 そう言って一礼し、部屋を後にする。



「……変わった子だね。あの若さで人生をある程度知っているというか……いや、まるで悟っているかのようだ」


「あぁ。彼の指導を受けたシトリマにも直接話を聞いたが、とても同年代とは思えない程言葉に深みと重みを感じたと言っていたが、その言葉に一切の誇張が無いというのが分かったよ。……一体、彼は何者なのだろうな」


 二人の間にそんな会話が交わされている事とはつゆ知らず、自分はクエストに向けて準備をする事にした。



「うむ。了解したぞハイン。では、俺の方は別の者をクエストに推薦する事にしよう。また良いクエストがあった際は優先的に声をかけさせて貰うぞ」


「あぁ。悪いな。その時はよろしく頼むわ」


 自身の都合を最優先、という事ではあるがやはり推薦してくれた事に関しての感謝と詫びの意味を込めてテートの元へ顔を出した。


「なに、気にすることはない。素材や条件的に考えても、引く手あまたの案件だ。すぐに受け手が決まる事だろうさ」


 確かに、テートの推薦クエストは、『ドラゴン亜種の撃退及び討伐』であった。ドラゴンが関わるクエストは危険度が高く、まだ竜種の生態や詳細が満足に揃っていない上に、特級クラスの実力が認められない間は受注することが出来ないため、素材がとても希少価値となりがちで人気の高いクエストであった。


 事実、自分も素材的にはかなり魅力的であり、武器や装飾品の強化のためには喉から手が出るとまではいかないものの、現時点で手に入れるのはほぼ不可能に近い素材を手に入れるチャンスであったのは間違いなかった。


(普通に考えれば、テートのクエストの方が素材的にも難易度的にも旨味があるのは間違いねぇ。……だが、どうしても今回はこっちのクエストを受けてみたかった)


 素材や難易度を無視してハキンスのクエストを選んだ理由。それはひとえにクエストの内容であった。


「……そうか。受けてくれるかハイン。テートもお前を推薦したと聞いた時は、てっきりそちらを選ぶと思ったのだがな」


 続いてハキンスの元へと向かい、クエストを受けることを告げるとハキンスは静かに呟いた。


「あぁ。まったく迷わなかったといえば嘘になるが、今ここでこのクエストを受ける事はきっと未来の俺の役に立つと思ったからな」


 自分の言葉にハキンスが少しだけ口を緩めて言う。


「……相変わらずだな。だが、そう言ってくれる事に感謝する。俺一人ではどうしても手が回らなかったからな」


 ハキンスが自分へ推薦したクエスト。


 それは、『ある村を襲う魔物の撃退及び、その根城を殲滅すべし』という今の自分では未知の内容のクエストであったからだ。


「……事前に入った情報では、特定の魔物や魔獣が現れるという訳ではなく、報告の度に異なる種族の連中が現れるとの事だ。……おそらく、魔物と魔獣の縄張り争いの拠点に、たまたま今回の村が挟まれている形なのだろう」


 ハキンスが報告書の控えに目をやりながらこちらに言う。情報がその程度しか届いていないため、具体的にどのような魔物や魔獣が出現するかは現地に行かなければ分からないのだろう。


「なるほどな。つまり、その村を襲う魔物と魔獣を何にせよ根絶やしにする必要がある、って事だな。了解したぜ」


 自分の返答に、少し意外だと言いたげな表情を浮かべてハキンスが言う。


「……本当に不思議な男だな、お前は。これだけ不確定な情報しか届いていないという事は、どんな連中が出てくるかも分からない。……要は、どんな素材が手に入るかも分からないどころか、どんな連中を相手にしなければならないのかも不明。言わばハイリスクノーリターンだ。推薦した俺が言うのもおかしな話だが、よく受けようと思ったな」


 ハキンスの言葉に、今度は自分が笑いながら言う。


「よく言うぜ。……俺が受けなきゃ、どうにかしてでもお前が行くつもりだったんだろ?しかも、自分が受けたクエストを終えたらすぐにでも、な」


 自分の言葉にハキンスが顔を上げる。構わずこのまま話し続ける。


「あんた、自分の実入りや素材を優先するタイプじゃねぇもんな。おそらく、あんたから見て緊急性の高いレベルの物から順番に片付けようとしたが、それが難しくなった。出来る事なら全て自分で片付けたい。だが、どう考えてもそれが難しいと判断したからこそ、今回のケースになった。……違うか?」


 そこまで言うと、ハキンスがため息を吐きながら話し始める。


「……お前には敵わないな。まるで全てを見透かされているようだ。その通りだ。……今、俺は別の村からの救援依頼のクエストを受けている。被害の度合いからして、そちらを優先せねばならん。つまり、お前の方にどんなレベルの魔物、魔獣が出るのかは俺も把握出来ていない。そんな状況でお前に向かってもらう形になる」


 そこまで言っていったん言葉を切り、改めてこちらの目を真っ直ぐ見据えてハキンスが続ける。


「正直に言おう。……このクエストは、危険度は情報が出揃っていないため未知数。それ故に報酬となる素材すらどうなるか分からない。繰り返す形になるが、危険の割に実入りは現時点で何も期待出来ない。……それでも頼めるか?ハイン」


「しつけぇな。受けるから来たに決まってんだろ?いいからお前はとっととそっちのクエストに向かえよ。お前のその様子だと、一刻も早く向かう必要があるんだろ?」


 自分の言葉にハキンスは無言で立ち上がり、右手を差し出した。


「……感謝する、ハイン。よろしく頼む」


 言葉を返すより先に、ハキンスの右手を握り返す。


「おう。任せてくれ。……このクエスト、必ず達成してみせるからよ」


 こうして、自分は人生初の推薦クエストを受注する事となった次第である。


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