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死に戻った最強勇者は、すべてを守り切る  作者: 柚鼓ユズ


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29話 ハイン、内心で高揚する

「師匠っ!」

「ハインっ!」

「ハインさまっ!」


 関係者席からヤム達の声が聞こえる。他の観客席からも同様のざわめきが起きている。


「……マジかよ。これでハキンスの優勝か?強過ぎるだろ……」


「あいつ……ハインって言ったか?あいつもかなり強かったみてぇだが、やっぱりハキンスは別格って事か……」


 会場がざわついている中、ハキンスがゆっくりと口を開く。


「……やはり、お前は強い。立て、ハイン。時間稼ぎをするつもりではないだろう」


 そうハキンスに言われ、ゆっくりと立ち上がる。


「……いや、剣で衝撃を受け流すのがやっとだったよ。何せ、避けられる気がしなかったからな」


 そう言って自分が立ち上がると、また会場がざわめきだす。


「マジかよ!あいつ、ハキンスの一撃を貰ったのに立ち上がったぜ!」


「師匠っ!やはり……やはり師匠は凄いです!」


 観客やヤムたちの声が会場に響く中、意に介さずにハキンスが自分に声をかける。


「一つ聞きたい。……何故、俺の『隼』を受け切れた?まさか先程、たった一回目にしただけで、あれを見切ったというのか?」


 ハキンスの言葉に、一瞬返答を詰まらせる。まさか、『過去に直接くらったからだ』と本当の事を話す訳にもいかず、どう答えようか考えていると、ハキンスが再び口を開く。


「……聞かせてくれ。お前は、『隼』を見抜いたのか?これが、どのような技かを」


 ハキンスの言葉に、剣を構え直してから答える。


「……何の事はねぇ。単純明快な突き、だろ?だが、それも恐ろしく速い超スピードの、な」


 自分の言葉にハキンスが沈黙する。肯定と捉えてそのまま言葉を続ける。


「超スピードで放たれた突きはその瞬間、衝撃波を発生させて、突きよりも先に相手に襲い掛かる。防御なり反撃なり、相手が予備動作に入ろうとする前に、まず相手には衝撃波が炸裂する。それをどうにか受け止めても、今度は本物の突きが二の矢として相手に突き刺さる、って訳だ」


 口で言うのは簡単だが、衝撃を発生させるほどの突きを簡単に放てるのはハキンスの天賦の才と鍛錬によるものだろう。


 しかも、ただの衝撃波ではなく、おそらく無意識に『風』の力を発動させているのだ。それ故にあれ程の威力と速度で放つ事を可能としているのだ。つくづく、ハキンスの強さと才能に驚嘆する。


 初撃と追撃を受けきれたのは日頃の鍛錬は勿論、過去の経験の賜物であり、当時の自分であれば先程の一撃で今頃はあっけなく場外に転がっていることだろう。


「……見事だ。その通りだ。高速で繰り出す衝撃波と拳での連撃。それが『隼』の正体だ」


 ハキンスが再び自分に向けて拳を構える。おそらく、再び『隼』を繰り出すのだろう。


(……見抜かれても、何も気にしないって様子か。ま、当然だわな)


 そう、あくまでそれを見抜かれたところでハキンスには関係ないのだ。

 分かっていてもそれをかわし続ける事は困難であり、相手がいずれくらってしまえばそれで終いである。原理が分かったところで、相手を倒せるならば何も問題がないのである。


(単純故に、かえってタチが悪いな。……闘士や武闘家ってのは、技がバレるリスクが少ねぇって聞いてはいたが、その典型例って奴だな)


 とはいえ、こちらもただ受け身でいる訳にはいかない。先程は予備動作があった上、技を繰り出すと分かっていたからそれを真っ向から受け止める事に成功したが、通常の攻撃に『隼』を織り交ぜられたらさっきの様にはいかないだろう。


(……全盛期の筋力とスタミナなら話は別なんだがな。今の自分じゃ流石に厳しいな)


 悔しいが、攻撃力、持久力共に今の自分ではハキンスには敵わないだろう。つまり、このままでは耐久戦を続けるのはジリ貧である。


「……だったら、こっちから行くしかねぇ……よなっ!」


 ハキンスに向かい、剣を構える。


「炎よ!剣に宿れっ!」


 魔力を剣に込め、剣に炎を纏わせる。そのまま間髪入れずにハキンスに向かう。


「ぬっ……!」


 こちらの剣の威力を悟ったか、構えを解き回避するハキンス。だが、それは想定済みである。すかさず剣を構え直してから技を放つ。


「……炎よ、爆ぜろっ!」


 刀身から炎の斬撃を繰り出す。それを視認し咄嗟にグローブでガードしようとするものの、『炎』の魔力を纏ったそれはハキンスのガードを突き抜け、衝撃と同時にハキンスを吹き飛ばす。


「ぐっ……!」


 おそらく魔力で補強されているグローブと、ガードによって衝撃を軽減されたため、吹き飛ばしたといっても場外へ弾き飛ばすほどの威力は無く、数メートルほどの距離でしかなかったが、会場を沸かせるには充分だったようだ。


「マジか!あのルーキー、ハキンスをダウンさせやがったぞ!」


「……いや!それも凄いが、何だよ!あの魔力操作と剣技!あいつ、本当にまだ上級かよ!」


 口々に会場から歓声が上がる。……まずいな。ついつい本気になりすぎた。下手に注目を集めてゼカーノみたいな連中がこれ以上出てこなければ良いのだが。


 ……だが正直なところ、今の自分にはどうでもいい。今はただ、目の前のハキンス=ビーグという男を目の前にして、どれだけ渡り合えるか。その方が自分にとっては重要だった。


「感謝するぞ。ハイン。お前とこうして相対する事がなければ、この様な場所で心躍り猛る事は無かった。……だからこそ、こちらも全身全霊をもってお前と向き合う事としよう」


 改めてハキンスがこちらに向かって構える。その姿を見て背筋がぞくりと冷える反面、この後の攻防を想像し、わくわくした気持ちを抑えきれない自分がいた。


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