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24話 いざ、隊士混合試合

「……さてと、時間だな。よし、じゃあ行って来るわ」

 大会当日、いよいよその時を向かえて試合会場へと向かう。


「ご武運を、師匠。どうか……どうかあの無礼者に、師匠による天誅を」


「ハ、ハインさまのご活躍……この目にしかと焼き付けますね……うふふ……」


「……気をつけてね、ハイン。とにかく怪我しないようにね」


 口々にそう言ってくる三人に了解、と返事代わりに手を振り受付へと足を進める。


「おう。事前に申し込んでおいたから三人とも関係者席で観戦出来るはずだし、会場で案内して貰って、そこで見ていてくれや」


 参加者の関係者は希望すれば三名まで一般席ではなく、関係者席での閲覧が可能である。一応、あらかじめ三人の名前を記入して貰い、受付に提出していた。


「あぁ、時間通りですね、お疲れ様ですハインさん。……はい、ではこれで受付は完了ですので、あちらで指示が届くまでご自由に過ごしてお待ちください」


 受付のお姉さんにそう言われ、中へ進もうとした時だった。別の受付のお姉さんから不意に声をかけられ呼び止められる。


「……あの、ハインさん。つかぬ事をお尋ねしますが……」


 そう言ってお姉さんは自分に一枚の紙を広げて見せてくる。


「これは……あぁ、観戦用の関係者の申込用紙ですよね。何か記入に不備がありましたか?」


 自分がそう言うと、お姉さんは困惑した表情でこちらに改めてそれを見せる。


「あの……不備と言いますか、その……観戦者の参加者との間柄の項目なのですが、こちらの……イスタハさんの『友人』は良いのですが、他のお二人の……『弟子、未来の嫁』と『妻』という記入が気になりまして……」


 ……その紙を見て、少し張り詰めていた気合いが急激に削がれた気がする。


「……二重線をでっかく引いて、『友人』に訂正しておいてください!」


 一言そう告げて、気を取り直して再び奥へと向かった。

 ……あいつら、あとで一回本気で説教する必要がありそうだ。


「よぅ。ちゃんと辞退せずに参加したようだな。感心感心」


 気持ちを切り替え、控え室に張り出されたトーナメント表を見ようとしていた所で、にやにやと笑いを浮かべるゼカーノとその取り巻き達に声をかけられた。


「……や、しませんよ。先輩からのせっかくのお誘いでしたし、これで自分が辞退なんかしたら、また先輩に何を言われるか分かったもんじゃありませんしね」


 自分の言い方にまた機嫌を損ねたのか、ゼカーノがまた苛立ちを表情に表す。

 ……まぁ、今回は自分も皮肉めいた言い方をしたのは事実ではあるのだが。勿論、反省も後悔の気持ちも微塵もない。


「……ふん、まぁいい。その減らず口を後で後悔することになるんだからな。ハキンスが参加するって聞いた時はどうなるかと思ったが、それも含めて周りの連中に俺の実力を思い知らせる良い機会だ。いいか?間違っても俺と当たるまでに負けるんじゃねぇぞ」


 そう言って取り巻きと共にゼカーノがその場を後にする。

 邪魔者がいなくなり、ようやくゆっくり張り出されたトーナメント表を眺め、自分の名前を探して確認する。いつもより少ないとはいえ、思ったより人数が減っていなかったため、少し時間がかかった。


(……ハキンスが参加するって大騒ぎになった割には、思ったより参加者が減らなかったんだな。えぇと……俺がハキンスと戦うには……決勝か)


 ハキンスが参加する事により参加者が減り、逆にあわよくば普段より上位に残る可能性があるのでは、と思った連中が多かったのだろう。

 まぁ、運悪くハキンスと当たってしまえば即棄権、運良く当たらなければトーナメントで上位に残れる可能性がある訳だし、そう言った計算が連中の中で働いたのだろうが。


「参加者は全部で六十人ちょいで、ハキンスを含めて何人かがシードで……決勝までは四回勝ち抜かないといけねぇ、って訳か」


 トーナメント表に連なる参加者一覧の名前を改めて眺める。

 AとBの二つに分けられたトーナメント表を見ると、決勝までには四回は勝ち進む必要があり、Aブロックのハキンスと戦うにはBブロックの自分は決勝に進む必要がある。


 ちなみに、ゼカーノはBブロックだったので順調にトーナメントが進めば準決勝で当たる形になる。まぁ、正直あまり気にしていないのが本当のところであるのだが。

 ……これでゼカーノが途中であっさり負けてしまえば、笑い話だけれども。その時は全力で煽り倒してやろうと思う。


「まぁ、あいつの事はどうでもいい。……それよりも俺は、ハキンスと戦いたい」


 今はゼカーノの事などに気を取られるよりも、ハキンスの事で頭がいっぱいだった。

 ハキンスと直接関わることで、何が変わるかは分からない。だが、イスタハの時のように過去とは違う出会い方をしたことで、何かを変えることは出来るかもしれない。


(ハキンス……当時はとても自分みたいなもんじゃ近付ける存在じゃあ無かったが、今なら違う。それに……今の俺なら、あいつと対等に戦えるはずだ。それを……確かめてみたい)


 ……最悪な未来を、どうにかして変えたい。そして、それと同じ位に今の自分が当時のハキンスとどれだけ渡り合えるのかを確かめたい。


 そんな気持ちが交錯する中、いよいよ隊士混合試合が始まった。


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