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17話 ハイン、仲間と共に加工屋へ

「さてと、お前ら素材は忘れずに持ってきたか?じゃ、早速行こうぜ」


 無事クエストから戻り、疲れを癒した翌日、自分達は四人で待ち合わせをしてある場所へと向かっていた。


「お待たせハイン。うん、ちゃんと持ってきたよ」

 素材の入った袋を片手にイスタハが言う。


「お、お待たせしました、ハインさま……さ、さぁ私と手を繋いで向かいましょう……も、もちろん恋人繋ぎで……うふふ……えへへ……」

「だ、駄目に決まっているだろうプラン!ど、どうしてもと言うのであれば反対の手は私が繋ぎますよ、師匠!」


 プランとヤムが早々に言い争いを始める。


「どっちとも繋がないってぇの……ほら、とっと行くぞ」

 そう言ってわめく二人を放置して、イスタハと目的地へと向かう。


 そう、今日は自分の新しい武器を仕立てるためと、それぞれの装備を作るために加工屋へと向かう事になったのだ。


「……しかし、皆本当に良かったのか?俺だけがこいつを貰っちまってよ」


 向かいながら素材袋の中から、ルビー・ゴーレムの素材の欠片を取り出す。

 日の光に当ててみれば、赤黒いその塊は光を透かし、妖しく光り輝く。


 集めた素材は国へ収める分を差し引かれ、クエストを達成した自分たちへと支給された。

 野良パーティーや分け前の分配で揉めそうな際は、施設を介して公平に割り振られるのだが、自分たちはそんな事も無かったため、一律で受け取り、話し合いで分配する事となった。


 その際、今回の一番のレア素材であるルビー・ゴーレムの素材を自分が受け取る事となったのだ。


「うん。僕は元々欲しい素材が割と最初に集まっていたからね。そもそも、僕はほとんど最後の戦闘は何も出来てなかったし」

 イスタハが自分の素材袋を持ち上げて言う。


「私もです。それにあれを仕留めたのは師匠です。クエストの貢献度合いにしろ、師匠が一番の素材を手にするのが当然かと。それに、師匠は新しい剣を作らねばなりませんし」

 ヤムも続けて言う。


「そ……そうです……わ、私の勇み足を責めるどころか、そんな私を庇い、あのゴーレムを一撃で屠ったハインさま……えへへ……思い出しても素敵……好き……」

「か、勘違いするなよ、プラン!師匠は誰にでもそうなのだからな!お前だけが特別という訳ではないのだからな!」


 虚空を見上げて物思いに耽るプランと、それに対してわぁわぁ言い出すヤム。

 ……この二人にいちいち付き合っていたらキリがないと思い、放置してイスタハと話しながら加工屋への歩みを進める。


「それで、ハインはその素材でどんな剣を作って貰うつもりなの?」

「……そうだな。こんだけあればかなり上等な剣を打って貰えると思うからな。あとは、どんな形にして貰うか、だな」


 一口に剣と言っても、色々ある。一般的なショートソードやロングソード、レイピアの様な両刃の物や、刀に属するサーベルやシミターの様な片刃など、数え上げればきりがない。


 当時の自分は使いやすさを重視してショートソードを使い続け、筋力が付き体格もしっかりした二十代前半からは大振りのバスタードソードを使い続けていた。

 今の体格でも頑張れば扱えない事も無いだろうが、やはり今の筋力と体格ではまだ厳しいだろう。


「師匠の中では、もう考えがあるのですか?」

 ヤムが横に並んで、こちらに聞いてくる。


「んー……まぁ、素材を見て貰って応相談、ってとこかな。お、悪ぃな皆、ちょっと寄り道だ」

 そう言って加工屋に向かう途中で、一軒の酒屋に入る。


「え?ハインまだ十八歳になってないよね?お酒はまだ飲めないんじゃ……」


 この国では十八で酒が解禁される。自分も早く飲みたい所ではあるが、大手を振って酒を飲めるにはあと約二年の辛抱である。

 ……もっとも、飲みたくなったら一人でこっそりと飲むつもりではあるが、今は違う目的のためにここに寄る必要があった。


「や、俺が飲むんじゃねぇよ。ちょっと、この後こいつが必要なんでな」

 そう言って酒屋に入り、目当ての銘柄の酒瓶を二本ばかり購入する。


「兄さん、若いのに渋い銘柄の酒を選ぶねぇ。あまり若い人からは人気の無い酒なのに」

「あぁ、自分用じゃねぇよ。贈り物さ」

 酒屋の兄ちゃんに代金を払い、店を後にして三人と合流する。


「よ。待たせたな。んじゃ、向かうとしますか」

 三人と共に加工屋が集まる鍛治場へと向かう。


「ヤムとプランは自分の武器を加工して貰った加工屋があるだろ。何ならそこに向かってもいいぞ。イスタハの目的は確か、魔力強化のブレスレットとローブだったよな。ローブは自分で選ぶと思うけども、ブレスレットの方は俺の所で相談しても良いかもな」


 自分がそう言うが、三人ともこちらに着いてくる気満々のようで、自分の後ろに続く。


「うん。僕はここも初めての利用になるから、最初はハインに着いていくよ。ハインのおすすめにしておけば、きっと良い物になるだろうしさ」


 確かに、イスタハには注文のノウハウや依頼のやり方は一度見せておいた方が良いだろうと思うので納得する。


「はい。私も少し考えている事がありまして。それと、後学のため師匠の武器や店選びを学びたいと思います」

「わ、私はハインさまのお側になるべくいたいので……えへへ……」


 プランの発言はスルーする事にして、それならばと予定通り自分の目当ての加工屋へと向かう。


「師匠、その加工屋は他の加工屋とは何か違うのですか?」

 道中に何軒かある他の加工屋を通り過ぎて行く自分にヤムが聞いてくる。


「あぁ。ちょっと変わっているけど腕は確かさ。ま、最初は大分面食らうかもだけどな」

 加工屋といってもピンキリで、最低限の仕事はどこに頼んでもこなしてくれるのだが、やはり好き嫌いや相性、腕の違いが出てくる。さらには一部、ろくでもない加工屋もいるのが現状である。


 ルーキーと分かればしれっと平均の作成価格に上乗せする者、加工素材をちょろまかしてピンハネする者、上得意の金払いの良い連中のみを最優先する者……


 ……まぁ、全部自分が過去に引っかかってしまった加工屋たちの事なのだが。

 かつて泣きを見るはめになった、『ここだけは二度と利用しねぇぞ』と心に誓った加工屋を何軒か横目で睨み付けて通り過ぎる。幸い、ヤムやプランが使っている加工屋はそこでは無かったようなので安心する。


「……と、着いたぜ。ここだここ」

 その加工屋は、他の所に比べて若干みすぼらしい外見をしていた。


 店の入り口には、『タース工房』と粗末な木版に殴り書きされた看板が掲げられていた。


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