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16話 未来改変(?)、プラン=ネイルス

「し、師匠……今のは一体、どんな技なのでしょうか」

 後ろで一部始終を見守っていたヤムが自分に言う。


「おぅ。『閃雷(ライトニング)(・ブレード)』。その名の通り、剣に『雷』の魔力を込めてぶっ放す剣技の一つさ。……ま、ご覧の様に剣に直接魔力を込めなきゃいけねぇもんだから、安物の剣だと剣が耐え切れずにこんな風になっちまうけどな」


 そう言って刃が砕け、柄だけになってしまった剣をヤムに放り投げて言う。


「なんと……わ、私もいつか師匠のようにそんな技を使える日がくるのでしょうか」

 自分の放り投げた剣の柄をキャッチして、その柄をしげしげと眺めながらヤムが自分に問いかけてくる。


「んー……どうだろうな。剣技の技術に加えて、剣に魔力を込めるのにもそれなりにコツがいるから、魔法の知識も必要になるからな。ま、それも含めて今後の修行次第、ってところじゃねぇか?」


「はい!私、精進いたします!」

 ヤムがふんす、と言わんばかりに語気を強める。


「……魔力を剣に集めて放つって事は……やっぱり良い素材で作られた武器なら、より強力な魔力を込めたりする事が出来るって事?」

 後ろからイスタハも聞いてくる。


「お。流石だなイスタハ。その通りだ。武器の中でも魔力を通しやすい素材とそうでない素材があってだな。上質な鉱石や魔物の素材を使えば使う程、純粋な切れ味や硬さが向上するだけじゃなくて、より多くの魔力が込められる、って訳だ」


 なるほど、と頷くイスタハに、更に言葉を続ける。


「で、一口に魔力を込めるって言っても、またこれが複雑でな。素材によって込められる魔力の種類は色々変わる感じだ。イスタハは授業で聞いているだろうけど、ルビー系統の素材なら『炎』、エメラルド系統の素材なら『風』みてぇな感じで魔力が強化出来るだろ?そこに魔物の素材が加わると、よりその系統が複雑に細分化される、って事さ。……ま、詳しく話すと長くなるし、戻ったら分かる範囲で教えてやるよ」


 そこまで自分が言うと、ヤムとイスタハはほぅ、とでも言いたげな顔で感心したように自分を見つめている。


「……凄いですね、師匠。師匠のその博識ぶりに、ますますこのヤム、師匠を尊敬いたしました」

「……うん、びっくりだよハイン。凄く分かりやすい。まるで先生みたいだ。独学でそんなに勉強したの?うん、素材もあるし、ゆっくり後で相談させて欲しいな」


 ……おっと危ない。ついまた少し喋りすぎてしまった。

 もちろん今話したのは、自分の過去の二十五年の間に積み重ねた経験と実績によるものだ。幾度となく失敗と試行錯誤を繰り返し、正真正銘自身で得た知識である。


「おう。戻ったらゆっくり相談に乗るさ。俺も次のクエストまでに、新しい剣を見繕って貰わねぇといけねぇしな」

 そこまで言ったところで、自分がプランをずっと抱えたままだった事に気付く。


「……っと、悪ぃなプラン。もう大丈夫だぞ」

 そう言ってプランを抱えていた手を離す。


 ……が、手を離したはずなのにプランの体が自分から離れない。

 おや、と思うとプランが自分の体にしっかりと両腕を回している。


「おいプラン、もう大丈夫……」

 そう言いかけた時、自分の胸元に顔を埋めた形のままでプランが言う。


「ネ……ネイルス家……家訓……。じ、自分の身は自分で守るのが常ですが……そ、その身を顧みず……自分の事を……ま、守ってくれる者が現れたその時は……せ、誠心誠意その方にお仕えすること……」


 プランの自分をぎゅっと抱きしめる力が、先程よりも強くなる。

 ……待った待った。これは本当……色々と不味い。女の子特有の柔らかな膨らみの感触や体温が色々と伝わってくる。


「お、おい……もう離せってプラン……」

 自由になった方の手で、自分の胸に顔を埋めているプランの顔を少し力を込めて、顔を無理矢理上げさせる。


 自分を上目遣いで見上げるプランの目は何故か潤み、顔を真っ赤に蒸気させている。


「わ、わたし……し、生涯……あなた様にお仕え致します……ハインさま……!」


 ……マジか。

 どうやら、新たな出会いと同時に、何やら不穏なフラグを自分は立ててしまったようだ。

 というか、プランの家の家訓とやらは他にどんなものがあるのかが気になってしまう。


「な、ななな、何をしている!プラン!早く師匠から離れろ!」

 その言葉を聞くと同時に、ヤムが飛んできてプランの体をぐいぐいと引っ張っている。


「嫌です……まだ……もう少しこのままで……ハインさまのぬくもりを……」

 なおも自分にしっかりとしがみつくプラン。


「くっ……こいつ……!思った以上に力が強い!師匠!師匠も早く離れてください!」

「うわぁ……二人とも……大胆だなぁ……」


「痛い痛い!こっちを引っ張るなヤム!イスタハ!お前も見てないで早く助けろ!」


 ……それから、何とかプランをようやく体から引き剥がし、全員で手分けして地面に転がるゴーレム達の素材を回収して無事帰路へと辿り着いた。


「おかえりなさい、皆様。見事クエスト成功、おめでとうございます。それではペンダントの返却をお願いします。……どうやら、かなりの死闘だったようですね。特にハインさん。服がかなりボロボロになっていますよ?」


 ……ヤムとプランに散々引っ張られたものだとはとても言えず、受付のお姉さんに俺は苦笑を浮かべるのがやっとであった。


 ともあれ、色々あったが自分達の初クエストはこれ以上無い位の大成功となった。



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