表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/149

136話 ドラゴン戦、佳境へ

 目の前で荒れ狂う吹雪の渦を見つめ、警戒しながら剣を構える。イスタハの放った魔法は確実に二匹のドラゴンに直撃した。それは間違いない。


(……この一撃で方が付くって事はありえねぇ。だが、少しでもこれでダメージを与えつつ奴らの動きを制限出来れば第一段階は成功だ)


 目の前の吹雪の勢いが徐々に弱まっていく。やがて吹雪が収まると表面を霜で覆われた二匹のドラゴンの姿があった。完全に凍結させられたなら良かったが、やはりダメージは与えたものの竜の厚い鱗の前では薄皮一枚を凍らせる程度だったようで、ぱりぱりと音を立てながら動き出し、二匹が同時に怒りの咆哮を上げる。


『―――――――!』


 叫ぶと同時にこちらに同時に飛び掛ろうとする二匹のドラゴン。だがそれよりも早く自分が叫ぶ。


「今だ!ヤムっ!」


 自分の合図と同時に気配を殺しドラゴンの近くに潜んでいたヤムが突進しようと揃って頭を落としたところに剣を構えて跳躍した。


「……はぁあああっ!『雪月花』っ!」


 両手の剣を高速で振りかざしたヤムの一撃がドラゴンの頭部を同時に切り裂いた。


「良くやったヤム!一旦下がれっ!」


 自分が叫ぶよりも早くヤムが与えた斬撃の痛みで仰け反るドラゴンたちの後方に飛ぶ。


(今の一撃でどちらかでも目を潰せれば良かったが、それでも二匹同時に頭部に浅くないダメージを与えた!これでかなり状況は好転する!)


 そう思った次の瞬間、後方に回避するかと思ったヤムがまさかの行動に移った。痛みで首を上げた原種と逆に首を下へ下ろす亜種。その亜種に向かってヤムが再び地面を蹴り上げ跳躍しながら追撃を放った。


「……転じて、漂え!『浮雲』っ!」


 空中から時間差で両手の剣を振り下ろし、亜種の顔面を再度切り裂いた。


『―――――――!』


 先程までの怒りの咆哮ではなく、痛みによる絶叫を亜種のドラゴンが上げる。ヤムの放った一撃は確実に亜種の両目を深々と切り裂いた。


(……ヤムの奴、ここまで成長していたのかよ!想像以上の速さと威力だ!)


 イスタハの魔法を合図に動き、こちらにドラゴン達の意識を向かわせる間に近くに控えて同時にダメージを与えるように仕掛ける。その後は自分が仕掛ける。打ち合わせはそれだけだった。それ故に今のヤムの追撃は自分に取っても想定外であった。


「やりました!……っ!!」


 追撃に成功したヤムが地面に着地したと同時、視界を奪われたドラゴン亜種が本能で尻尾をなぎ払うような形で振り回そうとする。痛み故に闇雲に放った一撃だったのが災いしたのか、運悪く着地したばかりのヤムに直撃する。


「あうっ……!!」


 その攻撃をくらったヤムが吹き飛ばされる。自分の先程の攻撃で尻尾を一部斬り落としていたため、完全な一撃では無かったがそれでもかなりの勢いでヤムが地面に叩きつけられてしまう。


「ヤムっ!」


 吹き飛ばされたヤムに向かって叫ぶ。不幸中の幸いで、斬り落とされた尻尾での一撃は本来のフルパワーには遠く及ばないもののかなりの威力であることは間違いなかった。


「私は……大丈夫です……!それより師匠!作戦の遂行をっ!」


 口から血を流しながらも痛みを堪えて叫ぶヤムの言葉に意識を切り替える。確かにこの状況は絶好の好機である。ヤムの決死の一撃で亜種の戦力を大幅に削ぐ事に成功した。ならばと自分は原種に狙いを定める。


(視界を奪われた亜種の方はしばらくまともに動けねぇ!……なら、原種も同じように動きを制限させるっ!)


 暴れ狂う亜種に同調するように咆哮する原種に向かって剣を構える。


「……『炎』や『風』のようにはいかねぇが……決める!」


 そうつぶやき剣を振りかざし、大声で叫ぶ。


「【凍てつけ氷散!】『氷刃衝(アイシクル・ウェイブ)』!」


 剣から無数の氷の刃が放たれる。氷の刃が原種の翼に次々と命中し、瞬く間に翼が氷に包まれていく。それに気付いた原種が翼を羽ばたかせようとするが時既に遅く、翼は半分以上凍りついていた。


(……狙い通り!これでこいつの翼を封じた!)


 思うように翼を動かせなくなった原種が戸惑いながらもこちらに向かって怒りの咆哮を上げる。


「……凍らせるだけでも上出来か。これで翼を斬り落とせていたら最高だったんだけどな。ま、及第点だな」


 吹き飛ばされたヤムの様子を確認すると、既にイスタハがヤムの元へ駆け寄りヤムを守るように立っていた。イスタハの表情から見て、ヤムのダメージも重傷ではない事を察知する。


(……作戦成功だ。あとは最後の仕掛けだ)


 凍り付いた翼をどうにかしようと暴れる原種の様子を見ながら大声で叫ぶ。


「今だ!行け!プランっ!」


 自分の声に呼応するように原種へ一直線に駆け出していたプランが答える。


「はいっ!ネイルス家家訓……『狙った獲物は……逃さないっ!』」


 その場で高々と地面を蹴り上げ空中へ跳躍したプランがメイスを両手で握り締めて更に大きな声で叫ぶ。


「はぁああああっ!」


 体を捻り、全力でメイスを原種の凍り付いた翼に振り下ろす。


「砕けろぉおおおっ!」


 プランが叫びながら叩き付けたその一撃は、見事に原種の凍った翼を粉砕させた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ