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13話 いざ、素材収集へ

「……いや、驚いたぜプラン。てっきりお前さん、僧侶っていうから呪文で戦うもんだとばかり思ったからよ」

 二人より先に、一足早く我に返ってプランに声をかける。


「え、えへへ……わ、我が家の家訓として、じ、自分の身は自分で守れ、とありまして……えへへ……」

 何故か恥ずかしそうにプランが言う。

「……ほ、他にも我が家には色々と家訓がありまして……」


 プランが言いかけた時、ヤム達も正気に戻り、二人もプランに話しかける。


「す、凄いのだな、プラン。あの身のこなし……いつか手合わせ願いたいものだ」

「うん。魔法職でもあんな風に戦えるんだね……凄いや」


 二人が口々に言うのも無理はない。事実、自分だってあんな風に戦う僧侶なんて初めて見た。


 長い人生の中で、何度か僧侶とパーティーを組んだ事はあるが、基本魔術師を初めとした呪文を主に扱う連中は、皆近接での先頭を避け後方に構え、呪文で戦うのが常である。

 勿論、近接での戦闘に備えてナイフやロッド、軽めのメイス等を所持して有事の際にはそれで魔物と対峙するケースはあるが、あくまで緊急時に限られるだろう。


「えへへ……褒められて恥ずかしい……で、でも嬉しい……あ、か、回復呪文も一通り使えますので……か、回復、治癒、解毒の類はある程度学んでいますので、そこはご安心ください……」


 正直、初パーティーでどうなるかと思ったが、大当たりである。むしろ、プランより当たりの面子を組めていた可能性の方が少ないだろう。


「よし、これでこのクエストはまず問題ないな。殲滅は難しくても、かなり奥まで進んでレア素材を狙えそうだ」

 場合によってはイスタハに自信を付けさせるのと、ヤムのパーティーでの連携に慣れてもらうだけに留め、小物をある程度仕留めての帰還も考えにはあったが、これならメンバーに有用な素材を集めての帰還に切り替えても良いだろう。


 三人にもその旨を伝え、全員の了承を得たところで再びダンジョンの奥に向かって散策を続けた。



「師匠。私の武器の強化にはそれなりに素材が集まりました。充分な強化、もしくは新しい剣が作れるかと思います」

「ぼ、僕も初クエストにしては充分な素材が集められたかな。これなら次のクエストにはもっとこの素材を加工すれば、自分の魔法の効果を高められると思う」


 あれから、特に危なげなくダンジョンの最下層近くまで進み、以前までの探索者が辿り着いていなかったと思われるエリアまで足を踏み入れる事が出来た。


 その分、敵のゴーレム達の硬さや強さも上がったが、こちらの戦闘水準と連携も向上しているため、難なく道中のゴーレムを仕留めつつ、順調に素材を集めていった。

 ヤムは元より、イスタハも実戦向きだったようで、探索の道中でどんどん成長している。プランも始めてのパーティーでのクエストとは思えないほどのサポートと戦いぶりで、期待以上の働きを見せてくれていた。


「だな。……俺の方もこれなら上級に上がりたてなら充分な剣を打って貰えるだろうな」

 自分の袋に詰めた鉱石を見ながら言う。


 前世では始めは普通にDランクのクエストを気の合う連中や、野良で組んだパーティーで受注をちまちまと数をこなし、経験を地道に積んで装備を整えて上のランクへ、とコツコツ進んだため、このレベルの素材を初のクエストで手に入れるなんて事はあり得ない事であった。


「プランはどうだ?……って、その様子だと、まだお目当ての素材は出てなさそうだな」

 自分と同様、特に必要としない素材をヤムとイスタハに多めに振り分けていたプランに声をかける。


「えっ?い、いえ……わ、私は皆様が、無事に素材が集まったようならこ、ここで引き上げても別に……」

「いや、隠さなくて良いって。ここまで順調に来れてるのはお前のお陰でもあるんだしよ。どんな素材が欲しいんだ?ここまで来たら全員で付き合うから、正直に言ってくれよ」


 自分がそう言うと、ヤムとイスタハも言葉を続ける。


「うむ、師匠の言う通りだぞプラン。我々だけが目当ての物を手に入れただけでは、お前に申し訳ない。パーティーなのだからな」

「うん。道中での戦闘に加えて回復とかもしてくれて、僕よりずっと貢献してるんだから、僕たちにも手伝わせて欲しいな」


 二人にそう言われ、嬉しさ半分、申し訳なさ半分、といった表情でおずおずとプランが言う。


「あ、ありがとうご、ございます皆様……で、では失礼して……そ、その、今の手持ちでも杖の強化は可能なのですが、エメラルド、出来ればア、アメジスト系の素材が手に入ればより強化が可能でして……」

 プランがそこまで言ったところで、自分が言葉を続ける。


「ん、決まりだな。じゃ、その素材で生成されたゴーレムを見つけて撃破して、クエスト帰還としようや」

「は……はい!み、皆様……ありがとうございます!」

 笑顔のプランに、三人とも頷いた。


「よし、じゃあもう少し奥まで進もうか。もちろん、充分に警戒してな」


 それから三十分は経った頃だろうか。既に先駆者が立ち入った形跡が全く無いエリアを進んでいると、やや開けたスペースに辿り着いた。


「おっ。どうやら……ビンゴ、だな」

 視界の先に、今までに見た事のない紫色のゴーレムの群れが徘徊する姿があった。


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