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11話 クエスト受注、説明を受けダンジョンへ

「はい。ではハインさん。貴方をリーダーとしてクエスト受注を受け付けますね。あら……プランさんがパーティーでの参加は……初めてですね。珍しい」

 受付のお姉さんが自分達の名前を見て、思わずつぶやいた。


「は、はいぃ……が、頑張ります……」

 緊張感がその場にいる全員に伝わるぐらい、プランが緊張している。


「き、気負い過ぎないでくださいね……いつもの貴女なら大丈夫なので」

 受付のお姉さんが慌ててフォローを入れる。


「ハインさんとイスタハさんはクエスト初挑戦、ヤムさんとプランさんは初のパーティークエストになりますね。クエストに行く前に、いくつか説明と注意点があります。ヤムさんとプランさんは既に知っていると思いますが、ハインさんとイスタハさんには聞いておいて頂く必要がありますので、少しお付き合いくださいね」


 パーティー初参加の隊士がいる時は必ず聞く話のため、自分も幾度となく過去に聞かされているので知っているが、イスタハは正真正銘初めてなので、イスタハに付き合う形で改めて聞いておく。


「はい。よろしくお願いします」

「お願いします」

 二人でそう言うと、お姉さんはにっこり笑って説明を始める。


「はい。まずご存じの通り、クエストは命を落とす危険が常に隣り合わせです。そのため、クエストに向かう際には必ずこちらを身に着けて頂きます」

 そう言ってお姉さんはトレイに乗ったチェーンの付いたペンダントを指差す。銀のチェーンの先には水晶の様な丸い塊が付いている。


「こちらを着けていただく事で、こちら側であなた達の位置や体力を知る事がある程度把握出来ます。そのため、何かあればすぐに救援が駆け付ける事になります」

 そう言ってお姉さんは同じペンダントを更に三つ用意する。


「勿論、救援がすぐに駆けつけられる場合と、そうでない場合がございます。もし、本当に命の危険があると思われる緊急時は、何とかこちらのペンダントを手に取り、『リタイア』と叫んでください。強制的に施設に転移が行われますので」


「……そんな救済措置があるんですね。万が一の時でも安心なんですね」

 ペンダントを手にしたイスタハが、安堵したように言う。


「えぇ。……ですが、クエストでは何が起こるかわかりません。これだけの準備をしていても、毎年犠牲者が出ているのが現状です。リタイアを唱える前に、命を落とす者がそれだけいるという事ですからね。脅かすような言い方になってしまいますが、それだけは常に頭に入れておいてください」


 お姉さんの言葉に、イスタハの表情が強張る。それをフォローするかのようにお姉さんが言葉を続ける。


「そうです。それくらいの緊張感を持ってクエストに臨んでくださいね。クエストの達成も大事ですが、それよりも五体満足で生きて戻る事が大事ですから。生きてさえいればまた、何度でもチャレンジ出来ますからね」

 そこまで言って、お姉さんがまた笑って言う。


「はい。では長くなりましたが以上で説明は終わりです。それでは行ってらっしゃいませ。皆さんの無事をお祈りしております」


 ペンダントを身に付け、受付を後にしてダンジョンに向かう。


「だ、大丈夫かな……僕、ちゃんと出来るかな……」

 先程の説明で不安になったのか、イスタハが心配そうに言う。


「大丈夫だろ。難易度的にもそこまで高くねぇし。初挑戦でも初パーティーでも受注出来たのがその証拠さ」

 自分がそう言うと、ヤムが会話に参加してくる。


「師匠。私もお聞きしたいのですが、難易度とはどういったものなのでしょうか。恥ずかしながら、良く分からなくて、今までは特に気にせずクエストを受けていたもので……」

「あぁ。クエスト用紙の右上に『C+』って書いてあっただろ?あれが難易度だよ。難易度的には真ん中のちょい上、くらいって訳さ」


 クエストの難易度は、大きく分けて五段階に分類されている。

 最も簡単なランクのクエストはD、そこからC、B、Aと上がっていき、最も難しいクエストはSランクとなる。難易度が上がれば上がる程、見返りも大きく、報酬金も跳ね上がる仕様だ。


 とは言え、上級に上がったばかりの者から特級を目指す者とピンキリな隊士が揃う中、誰もが好き勝手にクエストを受けられる訳ではない。最初のうちはDからCランクのクエストをある程度こなし、ようやくBランク以上の受注が許される。


 例外はSクラスで、これは本当に限られた者のみが受注を許される。具体的に言えば特級クラス、特級クラス候補のレベルに到達した隊士のみしか参加出来ない決まりになっている。

 主な理由としては、リスクは元より救援が不可能とまではいかずとも、救援が間に合わないレベルのクエストになる恐れがあるからである。


 場所によっては救援不可で自力での帰還を強いられたり、魔力の阻害によりリタイアを試みる前に命を落とすリスクと常に隣り合わせになることもしばしばある。特級クラスの者でも、場合によっては命懸け。それがSランクのクエストなのだ。


「なるほど……まずは数をこなして上のランクを目指していく形なのですね。このCの横の『+』は何でしょうか?」

「あぁ。これは『高難度、あるいは高難度の可能性あり』ってことだな。場合によっては少し厄介な可能性があります、って感じだ」


 事前に調査や散策をしているとはいえ、隅々までの調査が済んでいる訳ではないため、細部やダンジョンの奥までは分からない。そう言った要素があるクエストに付いている場合がほとんどである。


「あっ、じゃあこのクエストをクリアしたら括弧の数字が増えるって事だね」

「そうなるな。だから初挑戦の俺たちだけじゃ下手したら受注出来なかったかもな。クエスト経験済のヤム、何よりソロでの実績のあるプランが一緒に参加、ってのがすんなり受注出来た理由だろう」


「お、お役に立てたのならな、何よりです……えへへ……」

 杖を持ったまま、もじもじしているプラン。


「師匠!このヤムの事もお忘れなく!」

 何故か張り合うヤム。こいつ、こんなに面倒くさかったっけ。


「まぁまぁ。ま、気負わずいこうや。くれぐれも皆、無茶しないようにな」


 こうして、自分以外は初のパーティークエスト、自分としては実に二十五年ぶりのクエストを迎える事となった。


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