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10話 プラン、パーティーへ加入する

「反対です。師匠に悪い虫が付くのは許しません」

「ぼ、僕は別に構わないかな……」


 プランに声をかけられてすぐ、ひとまずプランを連れて二人の元に戻り、プランのパーティー参加を提案した。分かってはいたが二人の反応は見事に正反対に分かれた。


「男性ならまだしも女性など……師匠の側にいるのは私だけで良いではありませんか。せっかく師匠との初めてのクエストだというのに」

「い、一応僕もいる事、忘れないでね、ヤム……」


 二人が、というか何やらヤムが変な事を言っているが、ひとまず置いといて話を進める。


「まぁまぁ。聞けばプランは僧侶クラスだって言うしよ。回復呪文は俺もまだまだ勉強中だし、クエストで僧侶の存在はかなりありがてぇ存在だっていうのは確かだろ?」


 痛い所を突かれたと見えて、ぐっ、と言った表情になるものの、なおもヤムが食い下がる。


「で、ですが師匠!いくら師匠と言えども、初めてのクエストではないですか!そこで今日初めて会った者とパーティーを組むなどと!聞けば彼女も私と同じく、パーティーでのクエストは初との事ですし……」

 厳密に言えば『初めて』ではないのだが、正直に本当の事を話せる訳もないので、横でおずおずとしているプランに声をかける。


「まぁまぁ。実際に施設を出れば、その場で共通の目的とパーティーを組むことだって普通にあることだしよ。ま、今はそれよりも見てもらった方が早いか。……プラン、さっき見せてもらったお前のライセンス、ちょっと二人にも見せてやってくれ」


「え、あ、あっ。はい。ど、どうぞ」

 そう言ってプランは自分のライセンスを取り出し、二人に見せる。


『なっ……!?』

 プランのライセンスを見た二人が驚愕の声を上げる。まぁ、無理もない事なのだが。


「ソロでのクエストクリア数……45!?うち、高難易度クリア……じ、18……だと!?」

「し、しかもそれなのに……パーティーでのクエストクリア数は……ゼロ……?何で?」


 二人の驚きようも無理もない。自分も最初に声をかけられた時、どれくらいのクエストをこなしているかの確認のために見せて貰った時は驚いた。


 卒業までにほぼ例外なく、隊士はゆうに三桁を超えるクエストを当たり前にこなす事となるが、受注したクエストの半分近くが高難易度になる者はそうそういない。

 実際、自分も当時は50程のクエストをこなした時点では、高難易度クリアの数字は二桁にすら届いていなかった。


 ……パーティーでのクリア数こそゼロではあるが、この実績は紛れもなく特級クラスに到達出来る実力である。


「え、えっと……ご、ご覧の様に私、ひ、人に声をかけるのが苦手で……な、なので普段は一人でしかクエストに行けなくて……え、エヘヘ……」

 恥ずかしいのか両手を合わせて、指いじりしながらプランが言う。


「す、凄い事なんだよね、これ。……ねぇハイン、さっき話したソロ専門で特級ってまさか……彼女のこと?」

「いや。……俺が知っ……聞いたのは男だ。それも、闘士クラスとかその辺りの近接クラスだ」


 イスタハと話していると、ヤムがプランに声をかける。


「……一つ聞きたい。プラン、お前の実力は分かった。だが、何故師匠に声をかけたのだ?今までソロで充分な実績があり、重宝される回復呪文も使えるならば、お前ならば誰でも歓迎されるだろうに」

 ヤムの質問に、指いじりを止めておずおずとプランが答える。


「え、えっと……。クリスタル・ゴーレムの素材や、水晶の素材が杖と魔術具の強化に必要で……。で、でもソロでは参加出来なくて、パーティーを組まないといけなくて……そ、それであのクエストに興味を持たれる方がいたらお声がけしようと……そ、そしたらヤムさんを含む何人かがクエスト用紙を持っていくのを見ましたので……」

 言葉に詰まりながらも、プランが話し続ける。


「だ、男性よりは女性の方が……と思い、ヤムさんにお声掛けしようか悩んでいた時に、ハインさん達が来られて……し、失礼ながら近くの席でお話を聞いておりました。そ、その時にハ、ハ、ハインさんが自分よりもお二人に配慮して、クエストを選んでいるのを聞いて……こ、こんな風にお仲間の事を考えてクエストを選べる方なら、だ、駄目元でお願いしてみても……と、ゆ、勇気を出してみました……エヘヘ……」


 プランが話し終え、ヤムの方を見る。ヤムは俯いたまま、何やら震えている。


「あ……あの……ヤ、ヤムさん?」

 プランが無言になったヤムの方を見る。俯いたままのヤムが何やら小声で言っている。


「……しい」

「はい?」


 プランが聞き返そうとすると、突然顔をがばっとあげ、ヤムの手を取る。


「素晴らしいっ!」

「ひっ!」


 いきなり手を握られてびっくりしているプランを無視し、ヤムがプランの手を握ったまま何やらまくし立てる。


「そう……そうなのだ、そうなのだプラン!師匠はそういうお人なのだ!類い稀なる才を持ちながら、それを鼻にかける事もせず、己よりも人を思いやる……そういうお人なのだ!」

 ……どうでもいいが、恥ずかしいから自分をそこまで持ち上げるのは止めて貰いたい。大声を上げるものだから、何事かと思いこちらを見つめる周りの人の視線が痛い。


「あ……えっと、その……ハ、ハインさん……?」

 ヤムに手を握られたまま、ぶんぶんと振られてなすがままになっているプランが、困惑した表情でこちらを見る。


「あー……ま、とりあえずパーティー参加、って事で。よろしくな、プラン」

「あ、ありがとうございます……!……と、ところでそろそろヤムさんを止めてくださいぃ……」

 なおも手を掴まれて揺らされている状態でプランが悲痛な声を上げている。


 ともあれ、自分たちの初クエストは、この四人での参加となった。


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