序章
ちょっと変な男の子とすっごく変な女の子達と繝?Δの物語
(1)
科学の進歩っつうのはいつの時代でも唐突に起こりうるもんだ。
相対性理論による時間と空間の絶対性の崩壊、然り。
踏み締める大地を起点に動いているものだとしていたのが、また自身も動く天体の一部だった、然り。
量子力学による4元素からなる錬金術の否定、然り。
これら挙げたものは全て、当時の民衆にしてみれば常識(だったと思われる)だったが、時代の流れにより完全否定されたものだ。
まあ民衆にしてみれば、生活に関わりのなければ話題の種どころか関心すらも無いだろうし、それが学者や教師などの教養や真理を追求し、教える立場にいる人は漏れなく全員カバディしながら発狂していたであろう。それか先住民族が謎のプラカード掲げて1つや2つ民族演舞を踊ってYou◯ubeに上げるか。
だが、人間の順応力はいつの時代でも変わらない。どんな衝撃的なニュースが流れたとしても、当事者で無ければ1年も経てば、あ、そんなんあったわ。ええと、なんだっけ、あれ、あれなんだけど、えっと、頭のここまででてk(省略)といった有様になるだろう。
もう一つのパターンもある。当事者であるが順応しすぎて最早意識しなくなったというだけだ。要はもはや慣れた、の一言で完結する奴。例をあげると、新作ゲームを買って初日は滅茶苦茶楽しいけど、1ヶ月2ヶ月経つとそんなにやらなくなってるアレだ。それと同様に、最初は驚いていたものが数日も同じのが続くと、あーはいはいまたこのパターンね、ってなる。
そうして知らないうちに知らない最先端の何かを使い、それを知らないうちに知らない常識にしている訳でもある。正しく無知は罪深い、じっちゃもそういってた。
そんな事を思いながらも、改札口を触れずに通過する。
通過音が鳴り、またその後直ぐに通過音がなる。
時代も遂にフリーハンド・ノールックで出来るような技術が追いついてきたんだなとなんか感慨深くなった。
きっとさっきの思考に影響を受けて、思い付いたのだろう。だからそこ、妄想とかいうんじゃありません。
そんなこんなで乗車口に到着した。
朝方だからなのか、乗車口には相変わらず人で溢れかえっている。思わず口から溜め息も溢れ出そうになった。
お隣に女子学園生がいたから何とか抑える事に成功。ありがとう、服装しか見てないから断定は出来ないけ
ど、偶々隣にいた女子学園生よ。
でも、あれ、見たことあるような気が・・・
そうしている内に順番が回ってきたので、思考をキャンセル。背部腰寄りに巻いたユニットを制御端末に接続。さらにモノレールのように宙に浮いているレールに接続し、式構築、演算、起動。
ALL GREEN.の文字と同時に高速移動用耐衝撃シールドを展開し、瞬間景色がブレるような速度で身体が移動する。
あ、そう云えばコレも最近の世界の常識だという事を忘れてた。
エーテル量子学、近年の化学界隈を揺るがせた今世紀最大の異変と呼ばれている変事。元を辿れば、それはとある昔の偉人から始まる。
空気や空間には何かは分からないが、物質がいっぱい詰まっているとデカルトは考えた。そして、ホイヘンスはその物質をエーテルだと仮定し、光の波動説を作り上げた。要は、波を作るには水が必要だし、音や風を伝えるには空気が必要である。じゃあ光はどうなの?その光を伝えるのがエーテルっていう物質じゃないの?ってことだ。そうやって、エーテルの基礎や理論を作り上げてった。
まあ、その基礎理論はニュートンやアインシュタインなどによって木っ端微塵に粉砕されるのだが。
光の粒子説が出た事からはじまる。この頃はどちらかというとニュートンの権威による圧力のようなものだったが、後に研究によって否定的な結果が多くなっていった。決め手はアインシュタインの特殊相対性理論もとい光の相対性の否定である。エーテルがあるのなら、物質の運動によって光も変化する筈だが、実験によってありとあらゆる場所で光の速度が変わらないという結果が出てしまった。こうしてエーテル側は完全敗北負け組GGで終わった・・・筈だった。
そう、完全否定されているのに現代社会でエーテルが使用されている矛盾。この事柄が説明できないのだ。
という訳で、近代。
光は光量子でありフォトンとして扱われる現代で、光の電磁波に未知の波動が確認された。何と照らし合わせても法則性は不一致。解析をしてみてもよく分からない。正しく未知の物質が見つかった。
余りにも不明であるし、光の要素でもありながら光とは干渉もしていない。というか意味が分からない。学者達は頭を抱えた。そんな余りにも謎な物質を、もはや神秘にでも包まれているんじゃないか?という嘆きの感情から、エーテルの名を引用した。
そして時は進み、一人の天才がまた人類を歩ませる。
コイツって、量子にもなれるし、紐状にもなる、その上渦にもなる。決まった形なんて無くね?
これを不体理論と名付け、研究が進んだ。
不体というのは総じて決まった形を持たないもの、故にどんな形でも取らせることが出来た。
だが、出来たのは総じてその性質の形のみを取った、見掛け倒しの現象だけだった。
そこからは試行錯誤の繰り返しである。
組み立てては失敗し、また組み立てる。データを取り、方法を微妙に変えつつまた実験する。暗闇の中、鍵を手探りで見つけるように繰り返し続けた。そして、とうとう運用方法を確立した。
それが式である。
さっき式構築と書いてあったが、それはエーテルの形質変化の為であり、扱いやすい形に変化させる。演算で合成し、望む結果へと反応を起こせるようにする。そして起動で一連の動作を行う。
こうして、エーテルはめちゃくちゃ扱いやすくなったのだ。
こうして扱いやすくなった結果、民衆の手にも渡るようになった。
その代表的なのが、背部装着型ユニットことANGEL.systemである。
背中に装着することで、光の翼が生えてくる特徴的な見た目であり、生体保護シールド、自動演算システム、生体機能補助に加え、通話、メッセージ、SNS、ストリーミングサービスにも対応している。
今の時代を代表する、スマホの世代交代を果たした存在だ。
しかも、エーテル光を吸収する形なので、充電要らずである。
欠点を挙げるのなら、少し大きめのサイズであることと、見た目が目立つわ派手だわ目が痛くなるわの3コンボでフルコンボだドン!なところだ。
特に後者に関しては翼を消すことが出来るが、同時に排熱のような役割も果たしているため、昨日は必然的にガタ落ちしてしまう。そのためか、意外と翼をつけたままにする人が殆どだったりする。一部ではその状態をマナーモードとか低電力モードなんていったりするが。
そんで、その状態になると耐エーテル干渉能力が低下する。そこを狙ってハッキングなんかをする奴もいた。ただ、それも初期段階の頃に発生していただけであり、今は対策をされ切っているのでもうデメリットでは無くなっている。
またも思考の浅瀬でバシャバシャしているうちに、目的地に着く。
通過音が鳴り、続いて直ぐに通過音が鳴る。
徒歩3分、学生達の雑踏と共に駅から歩いた距離にそれはあった。
「あー・・・何だって、こんな学園にいるんだか」
国立エーテル光特専学園。いや、学術都市カルリック。
入学して1年が経った。
(2)
入学して1年も経てば、周りを取り巻く環境も変わってくるものだ。
さて、現在から少し戻ったところから改めて環境を振り返ってみよう。
「・・・」(通過音)
「・・・」(搭乗口)
「・・・」(通過音)
「・・・」(徒歩移動)
会話は無いが、効果音で判断するなら全然変なことは無い。
だが、お忘れでは無いだろうか?
通過音は2つがほぼラグのないように流れてくる、それが乗り降り両方共。
通学路は学生で溢れていたこと。
女子学園生らしき人が隣にいたこと。
この事柄を読み解くと、真実はこうなった。
乗り口の前から男子の後ろに引っ付き歩く、小柄の女子がいた。
そして張り付きながらも改札を通過、搭乗口にて隣に陣取る。
案外、こういった状況下では周りに気を取られがちなので気づかれないものだ。
その間に本来の目的を実行する。
左下ポケット、確認。
作戦内容、確認。
目標、確認。
遂行。
・
・
・
降り口についた。
また同じように背後に張り付き、視姦がてらに追跡する。
その後も学生達に紛れ込み、追跡した。
ヤルことはヤったと言わんばかりに背後につく。
その表情は虚無で、普段は無表情で顔に出ることは無い。筈だが、心なしか笑みを浮かべている、そのよう見えるかも知れなかった。
以上である。
そして、どうしようもない変態である。
彼女は謂わば立派なストーカーであり、こうして常日頃どんな時でも彼の傍らを離れないAL◯OKのような奴だ。
そんでもって今朝に何かしていたように見えるが、それは現在進行形で鼻に近づけて犬の様に嗅いでいる姿を見れば想像に難くないだろう。
因みにだが、彼が駅前まで着く間に汗を拭いていたのも確認済みであり、すり替えたものに自身の体液をつけている。抜かりは無い。
お陰で今日1日は寂しくはないだろうし、何よりそれを使ってくれるだけで何というか、背徳感が+して興奮値が物凄いレベルで限界値を突破してしまうだろう。生きて帰られるのだろうか、そう思案したが、寧ろそれで死ねるならいいと、思考を放棄した。
そんな一時の出来事を、ANGEL.systemは聞いていた。
ANGEL.systemは唸りを上げた。
半日で書いたので、コレからの流れは考える。
なので時間とちくわを下さい。