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告白

作者: 青葉

「この程度できて当たり前」と言われて育ってきた。私の努力の結晶は、家族にとってはなにもかも無価値だった。

 苦手な算数のテストで満点をとっても、徒競走で3位をとっても、作った俳句で賞をもらっても、中学受験に合格しても、テストで学年1位をとっても。

 何をしても「できて当たり前」と言われてきた。

 頑張ったのに。努力したのに。認めてもらえたためしなどなかった。

 その頃から私は、他人からの言葉に対して疑心暗鬼になってしまった。

「私にはああ言ってくれたが、裏では悪口を言ってるのではないか」

「私ごときが友達で、迷惑してるのではないか」

 そんな疑いの芽を抱えながら生きてきた。

 そして未だに根強く残っている。


 高校1年の時、今までで一番好きだった人に振られた。

 その日は文化祭だった。

 クラスのだしものに不具合があったため、徹夜で作業した後だった。

 こんなに頑張ったのに。

 また報われないのか。

 目の前が真っ暗になるとは、まさにこのことだと思った。

 その時は「どうして私ばかりこんな目にあうんだ」と恨めしく思った。

 しかし今思えば、

「ただの同級生に戻りたいんだと思います。」

 そう言った彼女も、泣きそうな顔をしていたんだと思う。

 そんな表情にさえ気づけないほど、私には余裕が無くなっていた。


 なにをやっても報われない。やることなすこと全てが裏目に出る。

 限界だったらしい。

 高校2年になった頃らある日を境に眠れなくなった。2、3日続けて徹夜状態が続いたかと思えば、突然電池が切れたように気を失った。段々と学校から足が遠のいていった。

 親に学校に行けと言われ、無理矢理登校していた。

「このまま車道に向けて倒れれば、そのまま轢かれて死ねるのではないか」

 自転車で通学中、何度もそんなことを考えた。

 しかしできなかった。


 朝起きたら色が見えなくなった。視界の全てが白黒テレビのようになった。

 眼科、脳神経外科などでいろいろ調べてもらったが、何一つ異常は無かった。

 どうやらストレスから来るものらしい。

 医師から「ある日突然治るかもしれない」とは言われているが、未だに治らない。そのまま四年経ってしまった。

 まず食事が不味くなった。味がしなくなった。

 信号がわからなくなった。横断歩道を、いつ渡っていいのかわからなくなった。

 鼻と耳が良くなった。その反面、少しの物音で驚くようになってしまった。

 感情の整理がつかなくなった。

 些細なことで怒りが込み上げてきたかと思えば、急に悲しくなって涙が溢れたり、突然ケタケタと笑い出したりした。

 性欲が無くなった。裸体を見ようが何をしようが興奮しなくなった。


 2度、首を吊ろうとして失敗した。

 上手く縄を結べていなかったらしい。

 そのおかげと言っていいのかわからないが、今こうしてのうのうと生きている。

 死にたいのに、生きている。


 生きていてもしょうがないのに。


 今年で21になった所だが、そんな気持ちを抱えて、今日まで生きてきた。

 惨めで仕方がない。

 辛い。



 最後に一言。


 こんな私を、愛して(殺して)欲しい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の価値を人に預けてたら大変だね
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