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ビスケットとコールスローも、婚約者も食べたくなるなる

 三重結界魔法のおかげでたっぷり9時間睡眠をとった俺達は軽く朝食を済ませると、結界を解き出口に向けて出発しだした。


 歩き始めて数分、そこでふと俺は気が付く。


(そういや、フィアと普通に朝の挨拶しちゃったけれど、婚約者との挨拶といえば違くない? おはようだけで済ませちゃダメじゃない?)


 そう思ったら矢も楯も堪らず、改めてもう一度やりなおすべく後ろを歩くフィアを振り返る。


「フィア! おはよう」

「? 先程も言いましたけど? おはようございます?」

「フィア! おはよう!」

「はい? おはようございます?」

「フィア!」

「はい?」


 俺の行動を不思議に思ったのかフィアは歩みを止めると、俺を見上げる形になった。

 ホグの奴は俺達の少し前をパタパタと飛んでいて、今なら邪魔する奴はいない。


「フィア、婚約者の朝の挨拶は違うよね?」

「え?」


 きょとんとするフィアを抱き寄せてキスをする。もう朝っぱらから最高である。

 そして今日こそ角度を変えてディープなやつを堪能してやると思っていた。のだが、早々に鳥の魔物ガルーダの襲来があって思わず舌打ちをする。

 フィアにキスすることで頭がいっぱいで、うっかり『探索』のスキルを使用するのを忘れていたのだ。俺のバカヤローーー!


 心中で後悔の絶叫をした俺だが、いきなり真空刃を放ってきたガルーダに、咄嗟にフィアを片手で抱きよせ防御魔法陣を繰り出す。

 ちょっとだけ(本当にちょっとだけ! ミジンコ位だけ!)心配になって視線を前方へ向けるとホグの姿がなく、慌てて周囲を確認する。すると、奴はいつの間にかフィアの胸にちゃっかりと収まっていて、思わず頬を引き攣らせた俺から低い声が出た。


「何故そこにいる?」(お前、さっきまで前方を飛んでいただろうが!)

「儂の定位置だからじゃ」

「人の婚約者の胸を定位置にするな!」(羨ましいこと、この上ない!)

「不本意ながら魔力譲渡の時は邪魔せんかったじゃろうが!」

「何が不本意だ! それに魔力譲渡ではない! あれは朝の挨拶だ!」(毎朝希望!)

「何が挨拶じゃ。お前、単に接吻したかっただけじゃろう!」

「そうだが、それがどうした?」(婚約者ですから。何か問題でも?)


 開き直った俺がホグをフィアの胸からべリっと勢いよく離すと、ジタバタともがいた奴の手羽先攻撃を後頭部にくらってしまい、傾いた俺の顔の正面に現れたのはフィアの胸の谷間だった。


(さて、いいですか!? 大好きな婚約者の、夢にまで見た魅惑の双丘の谷間が目の前にあるのです! この素晴らしい素敵に無敵な状況になった時、男だったらどうしますか!?

 はい、クリス君の解答はこちら~!


 ガン見です!!!!


 ここでイケメン気取りなら目を逸らすのだろうが、俺は生憎イケメンじゃない。だから迷わずガン見だ。ガンガン見る。瞬きすらせず目に焼き付ける。

 ガルーダの攻撃?

 邪魔されないように、フィアを支えている手の中指だけで防御魔法繰り出して防いでるから余裕。

 反撃したらって?

 今、攻撃して敵がいなくなったら、この素敵で破廉恥な状況が終わってしまうだろうが!)


 そんな脳内質疑をしている俺の目の前でフィアが少し身動ぎし、その反動で大きめの胸がたぷんっと揺れる。


(たぷんだって。たぷん。おっぱいたぷんってぷるるんゼリー? いや、ホグの申告によればマシュマロクッションか。マシュマロのクッションて何だよ? 柔らかさと心地よさの最高峰だろ!

 そんなけしからん胸が目の前にあったらガン見もいいが、触りたくなるのは自然の摂理ってもんだろ? めっちゃ寒い時に見た自販機の『あったか~い』と同じ位購買意欲をそそるじゃねーか!)


 理性が行方不明になりそうな俺の視界には、揺れる双丘の丘が手招きをしている。…ようにしか見えない。


(だって言ってるもの! おっぱいが揉んでくださいって言ってるもの! フィアのおっぱいは二つ! 俺の手も二つ! フィアのおっぱい揉むために俺の両手があるとしか思えないもの! そしてできれば舐めまわしたい! おっと危ない。この科白はR18っぽかったか? 倫理、倫理って煩い奴らがいるからな。

 あ、これ俺の脳内トークだったから心配なかった。外人化しなかったから気づかなかった。

 ともかく、とりあえず揉んでもいいよね! いいでしょ!?

 だって山を登るのは、そこに山があるからだと聞いたことがある。ならばこの状況で揉まないのは、先人の教えに反することになるのでは? それはいけない。俺は真面目だからな。

 ……つーか目の前に婚約者の魅惑のボインちゃんがあるのに、我慢なんて出来るかぁぁぁぁぁ!)


 フィアの胸の真ん前で脳内が大暴走した結果、魔法陣を描いていない方の俺の手がわきわきと動き出す。

 しかしそんな俺の片手はフィアの両手によってガシっと掴まれてしまった。


「クリス様!?」

「ん? (気づかれたか!)」

「血が出ています! もしかしてお怪我をされたのですか!?」


 フィアに示された先、平静を装った俺の小指には裂傷による小さい傷がついていた。


「あれ? 本当だ(そんなことより、揉みたい)」


 防御魔法を確認するとフィアを支えていた指で描いたため少し魔法陣が歪だったらしく、ガルーダの攻撃が掠ってしまったようだった。


「すぐに手当を!」

「いや、掠り傷だからこのままで……(オネシャス!)」


 俺の言葉も虚しくフィアはするりと俺から離れて体勢を変えてしまう。


(泣いていい? ねえ、泣いていい?)


 じわりと涙を浮かべると、フィアが総毛だったように目を見開いた。


「泣くほど、痛むのですか!?」

「うん(俺の手の触覚が後悔で機能不全になりそう)」

「許しません!」


 そう言うとフィアは弓をつがえる。

 黒髪を靡かせて弓を引く凛々しいフィアに見惚れそうになるが、慌ててこちらからの攻撃のみ当たるように魔法陣を描き替える。

 刹那、フィアの放った二つの矢がガルーダの両目を射抜き、視力を失った魔物は暴れ回ると苦し紛れに両翼を羽ばたかせ突風を巻き起こす。

 防御魔法陣のおかげでこちらはノーダメージだが、このまま放っておくとダンジョンの壁が壊れていらんトラップが発動しそうだし、何より俺の素敵で破廉恥な時間を終了させた罪は重い。


「俺の(もみもみパラダイス)時間を奪いやがって、許さん! こうなったら鶏類にとって超有名な末路にしてやるから覚悟しろ」


 ガルーダをハリネズミにしそうな勢いで矢を射続けるフィアを下がらせて、指先から二つの魔法陣を発動させる。

 風の中位魔法でガルーダの羽を毟り取ると、サッとお手製スパイス粉と調理油を放り投げる。やや遅れて火の中位魔法を放てば、ガルーダが崩れ落ちるとともに辺りに香ばしい匂いが漂った。


「今日、○ンタッキーにしない?」


 俺が焼けたガルーダの手羽先をもぎり取って満面の笑みでフィアを振り返ると、○ンタッキーを知らないからか小首をかしげる彼女の隣で、ホグが青い顔をしてプルプルと震えだす。


「危ないところじゃった。儂も○ンタッキーとやらにされるところじゃった」


 震えるホグの頭を、フィアが不思議そうな顔をしつつも撫でてやるのを横目で見つつ、朝ごはんを食べたばかりでお腹がいっぱいだったため、ガルーダの○ンタッキーはランチ用として袋へ突っ込み、俺達は出口への道をまた歩きはじめたのだった。


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