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司命の憂鬱

司命視点の番外編。……のはずだったんですが、結構重要回になってしまいました。

とはいえ番外編なので読まなくても大丈夫なように、この先書き進めていくつもりです。

「あーあー。今日も暇だなぁー」


 司命は仕事部屋の椅子に座り、天井を仰ぎ見る。いつもならこの椅子は閻魔大王が座っているが、今はいないことをいいことに司命は好き放題している。


「司命。そろそろ資料を探していただけませんか」


 そんな好き放題している司命を横目に司録はため息を吐く。


「えーだってどうせ有罪になるわけだし。意味ないじゃん」


 司命はぐるぐると椅子に座りながら回る。

 司命は閻魔大王のような裁判官ではないが、それでも長年の経験から判決の予測はつく。


 今回も『また』有罪だろうし。つまんねえー。


「そうは言っても閻魔大王から任された仕事ですよ」

「その大王サンがいないんだからいいじゃん。別に」


 閻魔大王は現代へ視察に行っており、しばらくの間帰ってこない。その間は泰山王が閻魔大王に代わり裁判を引き受けてくれることになっている。閻魔大王は泰山王の仕事の手伝いを司録と司命に任せたが、どうも司命はやる気が出ない。


「今頃、大王サン何してるかなぁ」

「さあ、どうでしょうね」


 司録は閻魔帳をペラペラめくり今当たっている裁判と似たような事例を探しつつ、軽く答える。司命はそんな司録の答えさえも面白くない。


「そもそもさぁ。大王サン、別に地上に行かなくても良かったじゃん」

「そうもいきませんよ。地獄が罪人で溢れかえっているのですから。様子を見に行って解決策を探さなければ」

「だからこそ、この人手がないときに地上に行かなくてもいいのにさぁ」


 司命はため息を吐く。司録も司命を横目で見つつ「いいからそろそろ手伝ってくださいよ」とため息を吐いた。


「はいは~い」


 司命はやっと椅子から立ち上がり、司録と違う棚の閻魔帳をパラパラと見る。


 あーあー。暇だなぁ。


 司命は閻魔帳をめくってはいるが内容は頭に入っていない。


 いつもいつも同じことの繰り返し。つまらない。


 もう何百、何千年と地獄にいて同じことを続けているのだから飽きがきてしまう。しかも地獄にはほとんど娯楽がない。


「あっ!」


 司命は突然声を上げた。


「……何ですか。急に」

「大王サン。お土産持ってきてくれないかな」

「……はぁ」


 司録は再びため息を吐く。先程よりも盛大に。


「閻魔大王は遊びに行っているわけじゃありませんよ」

「えー。同じようなもんじゃん。あーあ、僕が行けば良かった。そしたらた~くさんお土産を持って来るのに」


 司命の言葉に司録は作業の手を止めて「どういうお土産をもってくるんですか」と質問を投げかける。

 司録も司録で口には出さないが本当はとっくに地獄に飽きていた。


「ん-。美味しいご飯に美味しい菓子に酒に……」

「食べ物ばっかりですね」

「あとは流行りの手遊びに」

「噂に聞くと今の人たちは手遊びはしないそうですよ」

「あとはー……ってさっきから茶々入れてばっかりじゃん! じゃあ司録だったら何をお土産に持って来るのさ」


「そうですね」と司録は顎に手を添えてしばらく考え込む。そして「新しい仕事仲間、とかどうでしょう」と言葉を続けた。


 司命は司録のあまりに突拍子もない答えに目をパチクリとさせる。


「いやいや、それはいくらなんでも無理だって。そもそも地獄には罪人しか来ないし。まぁ地獄に善人を迎え入れることも出来なくはないけどさぁ。その方法は禁忌だしさぁ」

「分かっていますよ。冗談です」


 司録はふふっと笑みをこぼす。


 司録の冗談は冗談に聞こえないんだよ。


 司命は「あーあ」と言いながら閻魔帳に今度はしっかりと目を向ける。


「今日も暇だなぁー」


今回は地獄の娯楽について。

地獄にも娯楽はあるにはあります。お酒やお祭りがあるので。ただ何千年と生きているとどうしても飽きが来てしまう……。

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