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 どうせ否定しても時間の無駄かな……。


「成り行き……かな……うん、成り行きだよきっと……」


 勇者と出会ったのも、大魔王様を看病したのも成り行きだよ……ちくしょう……。

 ぐすっ……目から汗が……。


「なんで泣いてるんですか?」

「ああ、ううん、ごめん……。勇者への道が絶たれたとか自分がモブだとか、人生の山場が乱立し過ぎてて勝手に涙がっ……」


 泣くに至った原因が君のせいなんだけどね……。

 さっき人生山あり谷ありとか言ってたけどさ、山と谷以外に歩いた道無かったんだけど……。あったとしても気休めでしかなかったよ……。


「まあ、大体そんな感じですよー。気にしない気にしない♪」

「大体?」

「はい♪」

「え、他にも俺みたいに悩んでいる奴が居るってこと?」

「居ますけど?」


 眉間にシワ寄せて「お前以外にも居るに決まってるだろ? バカじゃねえの?」と言わんばかりの表情がものすごいイライラするぅ!


「……それって魔物?」

「ですねー」

「魔物かいっ!」


 話し相手が出来るかもしれないって思った俺の希望を返してっ!


「ん……それってさ、モーブ君みたいなのが他にも居たりするってこと?」

「はいー♪ 例えばー、元魔王様と現魔王様ですね。それと奥様、四天王のメンバーがモブさんみたいな感じでお喋り楽しいです♪」


 奥さんと娘さんとは話してたの聞いてたから分かるけど、四天王もか……。っていうか仲良いな……。


「ふ~ん……ちなみに四天王ってどんなのがいるの?」


 ノリで教えてくれれば勇者の今後の役に立つからな。軽いノリから重要な情報を聞き出してやるぜいっ。


「気になりますぅ?」


 目が大変いやらしいですモーブ君! エロ親父みたいな目でニヤつかないで!


「き、気になるなぁ……」


 モーブ君から目を逸らし、歩き続けている無限街道を見つめる。あんな目を見てたら教育に悪いわ。


「そうですよね、そうですよねぇ……♪」


 あーそういや、マルータ港っていつ着くんだろう。三分の二が終わってるって言ってたからあと二時間もすれば着くのかな。もう少しで延々続いたこの道が終わると思うと気が楽だなぁ。

 さっさと港に着いてこいつを大魔王様に送り返してやろう。


「やっぱり気になりますよねぇ、うんうん……、そうですよねぇ、気にならない方が不自然ですよねぇ……うんうん……♪」


 うぜえ……めちゃめちゃうぜぇ……。


「早く言って……」


 鬱陶しいから……。


「それはですねぇ……ふっふっふー♪」


 まぁ、渋るってことはそう簡単には言えない情報なんだろうな。でも、そう思うと逆に気になるよな……。挑発したら乗ってくれるかな?


「やっぱり優秀なモーブ君と言えども、四天王の名前は知らないかー。仕方ないよねー、モーブだもんねー」


 ちらっと目を向けて――――うわっ怖っ!


「……」


 跳ねていた体を突然止めて立ち止まるモーブ君。


「ど、どうしたの……?」

「……なんか僕、やるせなくなりました……」


 エンジェルスライムなのに暗すぎてエンジェルの部分消えかかってるんですけど!

 ダークスライムに転生しそうな勢いなんですけどっ!

 輪が、頭に付いてるリングが黒く染まっていくっ!


「ご、ごめんごめん……」

「……」


 俺そこまでひどいこと言ったっけ……、俺の方がさんざんな言われ方してたと思うんだけど……。

 でも空気的に謝っておかないとダメだよね……。


「なんか、その、ごめんね……」


 なんで俺が謝ってんの……。


「……」


 跳ねることも無く、地面を這って歩き出したモーブ君。

 ズサーッという音が増えたとともに、道に変な液体が……。確実に体液の一部減っちゃってるんだけどいいのかな……。ぬるぬるしたのが地面にこびり付いてるんだけど……。


「いや、ほんとごめんね? こう言ったら教えてくれるかなーなんて思っちゃって……。体から変な体液漏れてるから気を付けて……」


 モーブ君を慰めようと後ろから触ろうとしたその時――


「あっはは! 冗談ですよ~♪ やだなあ~真剣な顔しちゃって~♪」

「……」


 ムカッ……。


「冗談ですよ~♪ なに本気で魔物の心配してるんですかーやだなー(笑)」

「あ、あはは……」


 軽く自虐を入れてくる辺りがまた鬱陶しいぃい!


「あっ、そういえば四天王の話でしたね!」


 再び跳ねながら歩き出す。


「まず一人目が元魔王様のバルザック様です!」

「ファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ⁉」

「ど、どうしました?」

「すいませんやっぱり宿屋に戻ります……。勇者になろうとか考えててごめんなさい……。勇者に付き添ってたら彼女出来るとか思ってすいませんでした……俺帰ります……帰って宿屋を継ぎます……」


 あんなのが四天王に紛れてるとかもう無理だよ……世界の終わりだよ……。

 宿屋で世界の終末を過ごさせてもらうわ……。彼女とかもうどうでもいい……。どうせ親父みたいに、死んだ魚の目した人間しかこの世界に居ないだろうし……。


「え、モ、モブさん?」

「止めないで……」


 来た道を振り返り、一瞬、目の端に映る勇者に舌打ちをする。

 くっそ……こいつさえ居なければロープで脱出出来たのに……俺の自由な生活が待っていたのに……。


「よし、帰ろう!」

「じょ、冗談ですよ! バルザック様は引退してるので四天王でもなんでもないです!」

「はぁ?」


 ギロッと、ぴょんぴょんするスライムを睨みつける。


「いや、その、すいません……冗談が過ぎました……」


 しょんぼり下を向くスライムに目線を合わせて、頭を鷲掴みにしてこちらを向かせる。


「次、冗談言ったら蹴り飛ばすぞこの野郎……」

「はい……すいませんでした……」

「ほら、さっさと行くよ」

「は、はいです……」


 マルータ港に足をもう一度向けて前進。

 飛び跳ねていたモーブ君も、今は小さくぴょんぴょん跳ねながら移動中……。


「……」


 怒られた子どもみたいにしゅんとして喋らなくなっちゃったけど、こっちの方が俺としてはやりやすいし、上司と部下って感じでいいじゃないかな。

 まるでマスターと使役される魔物の関係みたいな。魔物を引き連れて旅をするタイプの冒険か。悪くないな。

 ところで――


「んでさ、どうなのモーブ君」

「はいぃっ! な、なにがですか!」


 ぴょんっ! とびっくりして大きく飛び跳ねるモーブ君。


「何がって、そりゃ四天王でしょ」


 上から見下すようにモーブ君と見ると、「はわわ……」と大量に汗をかきながら一生懸命喋ってくれた。


「まず一人目が火使いの竜ガルルー君! 彼の火は一息でカナート村程度なら焼き尽くしてしまいます! 二人目が風使いの鷹ウィング君、彼の起こす突風はカナート村程度なら全壊させられると思います! 三人目が土使いの蜘蛛ラーグ君、彼にカナート村を再建させれば一日で直せます!」


 くっそ、いちいちカナート村単位で教えてくるの腹立つ……。あと、ラーグ君とか言う四天王、敵なのか味方なのか分かんねえ……。建築屋なのか?

 もしかして魔城作ったのラーグ君なのかっ⁉

 ってか、四天王に君付けって……。


「ねえねえ、モーブ君」

「はいっ、何でしょう!」

「素朴な疑問なんだけどね、四天王に君付けしていいの? モーブ君より格上だよね?」

「格上とは?」


 俺が何を言ってるのか分かってないらしい。

 不思議そうに俺の顔を見つめるモーブ君。馬鹿なのかな、やっぱりモーブ君は馬鹿なのかな?

 それとも魔物に上下関係ってないのか……?


「だってさ、四天王ってことは魔物の上位でしょ? モーブ君だったら様付けしなくちゃいけないんじゃない?」

「ああ、なんだ。そんなことですか♪」


 急に上機嫌になるモーブ君に少し寒気がした。


「そんなことって、結構重要なことなんじゃ――」

「僕が最後の一人、四天王リーダー、水使いのスライム、モーブです!」

「あ……?」


 どや顔で見つめてくるモーブ君に俺は何も言えなかった。


「ふふん! すごいでしょう!」

「……」


 こんなのが四天王のリーダーとか、返す言葉が見つからない……。


「凄すぎて言葉も出ないって感じですね!」

「……ああ、うん。そうだね。すごいすごい」

「そうでしょうそうでしょう! 僕が四天王の中でも最強なんですから!」

「へー……」


 こんな馬鹿っぽいのが本当に四天王リーダーなら俺でも勝てる気がする……。いや、確信を持って言える。勝てるぞこれ……。

 モーブ君がリーダーなら他の三匹も多分バカということになる。四天王が四天王の役目をしていない。つまり――――

 勝てる! こいつら相手なら確実に勝てるぞ!


「ふっふふっ……」

「どうしました?」

「ううん♪ 何でもない! 早くマルータ港に行こうか!」

「はいっ!」



 俺は久しぶりにすごい上機嫌でモーブ君と残りの道を歩いて行った。

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