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013

 ――宿屋二階一室


 勇者御一行の旅のはずが大魔王様と同じ部屋で二人きり……展開おかしくない?

 さすさす、さすさす。


「あの、寝たら治るんですよね?」


 はぁ……なんで俺は大魔王の足を擦ってるんだろう……。


「寝たらパーティーに間に合わなくなるだろうが!」

「アー……アハハ、ソーデスヨネー」


 大魔王様の看病する村人とかどこの世界に需要があるんだよ……。


「あ~、だいぶ良くなってきた」

「腕の方は大丈夫ですか?」

「ああ、ありがとうな、お前モブにしては中々やるじゃないか」

「モブにしてはって、一言余計ですよ……」


 俺もこの状況に順応しちゃってるし……勇者への報復込みで大魔王側に入ろうかな。あれ、勇者になるより大魔王の娘さんと仲良くなった方が後々良いのでは?


「よっしゃ、だいぶ楽になった」

「それは良かったで――ヒャッ!」


 ぶわっと勢いよく立ち上がる大魔王様に一瞬怯んでしまった……。

 やっぱでかい! 筋骨隆々の大魔王様怪物だよ! レスラーだよ!

 拳をにぎにぎと、力を確かめるように大魔王様がうんうんと頷く。怖い怖い怖い。


「よし帰ろう。もう夕方になっちゃったし時間無いし! アリスと我が愛しの娘が待っている!」

「え!」

「んじゃ、後のこと頼んだわ。ちゃんと勇者育てとけよ!」

「大魔王様待って――うわぁあっ!」


 大魔王様の翼がっ……バサバサと顔にっ……やめっ……痛っ……にゃぁあああ! 鬱陶しいぃぃいい!


「なっ⁉」


 風圧で部屋の扉が吹っ飛んだぁあああ!


「近頃は宿屋も自動扉か……ふっ、便利になったものだ」


 違う! 風圧で飛んで行っただけなんですけどっ⁉ やっぱり大魔王も天然なのか⁉

 階段を壮大に一段一段下りていく大魔王。宿の扉へと向かいながら親父に軽く挨拶をする。俺は怖いから階段の手すりで待機。


「じゃあ、またお相手していただこう、マスターよ」


 入口へと向かう大魔王様に対して、カウンターから頭を下げつつ親父が言う。


「ご利用ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


 俺の親父、大魔王相手に平常心っ! あれ、バーのカウンターに誰か座って――


「おい、馬鹿勇者、ちゃんと村の教会まで足運べよ? 村の道具屋と宿屋に寄るだけじゃセーブ出来ねえからな。草原でならいくらでも出来るがな。ハッハッハ!」

「……っす」


 勇者が大魔王様に軽く手を振りつつ、親父の入れたであろうコーヒーをカウンターで飲んでるぅう!


「えっ、ていうか勇者態度悪っ! というか喋ってる⁉」

「モブ、勇者の根性一から叩き直しといてね――さあ、アリス、アイリーン、今行くぞー!」


 扉を開けた途端、バサバサと大魔王様の翼が宿の中に強風を巻き起こす!

 くっ……やっぱり「元魔王」ってだけあってすごいな……! ほぼ全身つってたけど、ただのおっさんだったけど……。


 バッサバッサ……バッサバッサ……。


 後ろ姿怖いなあ、早く帰ってくれないかな……え、振り返ったんだけどなにあれ怖い。


「んじゃな、モブ、楽しかったぞ」

「あ、はーい! 次ぎ会うときには名前決めておきますね!」


 絶対に、絶対に「モブ」から改名してやる。


「さらばだ!」


 大魔王様が目の前に黒い空間を出して――そのまま空間に消えていったぁあああ!


「飛ばんのかいっ! ワープ出来るんかいっ!」


 宿屋の中を、風で荒らすだけ荒らして行きやがった……まあ、一日経てば直ってるからいいけどさ……。


 取り残された俺と勇者……あと親父。

 とりあえず下りて勇者の横に行くか……。


「さ、さぁ……勇者様?」

「……」


 相変わらず俺に反応ねぇ……けどやるしかないっ!


「旅行きましょう! 旅! ね? うわー、勇者様と旅できるとか光栄で――」


 〈〇〉


 キリッ。


「ようこ――」


 〈×〉


「ようこって誰だよ! ってか何言わせてんだこの野郎! てか、これなにぃっ! 何なのぉおお⁉」


 正体不明のコマンドっぽいものが悔しくてバーカウンターの机を叩きつける。


「なあ、話せるなら話し合いましょう? コマンドじゃ心のキャッチボール出来ないですよ?」


 あ、ちょっとこっち見――


 〈〇〉


 キリッ。


「よ――」


 〈×〉


「くぅう……」


 俺は天を仰いだ後、勇者の隣にゆっくりと腰を下ろした。


「ねえ、ちょっと話を聞いてくれませんか?」

「……」


 やっぱりダメかー。ていうか勇者身長小さいな。160……いや、それよりも低いかもしれない。ショタか、ショタなのか。そっち系狙いのショタなのか!


 いやいや、勇者がショタかどうかはどうでもいい!


「そういえばさ親父、今までの金返してくれないかな?」

「ポーカーをなさるのですか?」


 〈〇/×〉


「あ、そっか……なんかもうこの世界居づらいわ、ぼっちだわ、心が折れそうだわ、いや、すでに何回か心折れてたわ……」


 ゴンッとテーブルに頭を打ち付けた。あはは……なんか目からまた汗みたいなの出てきた……。


「うん?」


 何かを思い出したかのように勇者がおもむろにカウンターの中に入る。


「ちょっと仕事の邪魔しちゃダメですよ!」


 カウンターの中を物色する勇者に対して全く反応しない親父……。


「おいこら! 色々詰まってんだから止めろって!」


 ドンッと、机の上に置かれたそれは……。


「なっ⁉」


 俺が親父に渡した金! よりも多い! あれ、つまりそれって店の金じゃない?

応援して頂けるとすごく嬉しいです(*_ _)

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