第1話 誘拐対象
「先輩?」
「迎えに来てやったんだ、はよしろ」
「あ、はい! すみません!」
全く、相性の悪い先輩だ、いや、パートナーかな、この人は土井 修士髪は茶髪、そこらにいるヤンキーのように見えるが、内面すっごく優しいパートナーさんだ、断れない体質でほぼ全部の依頼を受けようとするが、よく上のやつらに止められるほどの優しさ、チャラさだけなんとかならばモテるのになぁ。
そんなことを思いつつ俺はボーッとしていた。
「おい、はよしろ」
「あ、はい! 少々お待ちを!」
めっちゃ目つき怖いな! パートナーとは随分長い時間を一緒に行動した。
頭は悪い方だが記憶力は1度聞いた事見た事はすぐに覚えられるらしい。
なにそれ、まじ欲しい!
「おーい、まだかー?」
「ちょっと待ってくださーい」
「はよしろばーか」
あれ? 初めて会った時から暴言増えた気がする。昔はこんな風に話しかけてこなかったが、まぁそんなことは今どうでもいい、早くカバン持って行かなきゃいけない。
「花菜? 引越しトラック来たらよろしくな」
「わかったよお兄ちゃん! 気をつけて行ってらっしゃい」
玄関のドアが閉まろうとしている隙間から悲しい目をした妹の姿が見えた。
まぁそりゃあ、1人にされると悲しくなるものだよな、今度一緒に遊びに行くとしなきゃな。
「ところで土井さん? 依頼は誰を殺すんですか?」
「は? お前なんも聞いてねーのかよ」
「は、はい……」
「ちっ、あのクソババアめ」
うわ〜、これ後で怒られるやつだなぁ、どうなっても知らん。
依頼は聞いたところ、ある企業の娘を生きたまま捕獲し、人質として使うらしい。
ひとまず、殺し案件じゃなくて良かった。
そして、車に載せられ目的地の高校に着いた。
今日から俺は高校2年生、いい高校生活送らなきゃな!
「あれ? 土井さんも来るんですか?」
「あ? 来ちゃ悪いか」
「い、いいえ、制服が」
この人の制服は初めてだな、だらしないしヤンキーとして目立つなこりゃ、でも俺は試験は全て平均で『The!普通』って感じだからそんなに目立たないはず、そう信じたい。
息を深くすって、改めて思った違う高校での新しい生活が待っている。
妹は遅刻という形で転校してくるから、問題ない。まずは教室まで行かないといけないよな、確か案内してくれる先生がいるらしいけど、どこだろうか、と思いつつ後ろから声をかけられた。
「あなた、香月くんだよね?」
誰だろうと後ろを向いたら、先生だった。
この人だったはずだ、前に先輩の女の人が保護者として挨拶しに来た時にこの人が案内してくれることになった。
眼鏡をかけていて、少し背が小さい、俺が背に関してまじまじに見ていると、
「ちょっと! 今小さいなって思ったでしょ! これでも、150はあるんですぅ!」
「え、エスパーですか?」
「もう!」
何こいつ、おもしれぇ、もっと弄りたくなるやつだな、まぁそんなことはどうでも良く暗殺対象、いや誘拐対象を探し出さなきゃならないな。
「隣の方は木津 修士君だよね」
「え?」
「あら? 間違ってたかな?」
え? なんで? なんでこいつ木津って名前になってんの? そんな事思ってても仕方ないので小声で話しかけると、
「はぁ? 聞いてないのかよ? お前と俺は兄弟になるんだよ」
「聞いてないですよ!」
そう言うと、無視された。
あのクソ女目! 後で給料倍にしてもらうからな!
「いえ、間違ってないです。」
「そう、なら良かった!」
「早く教室行かせろ」
修士は機嫌悪く言った。
そんなに怒らんでもいいじゃないかと思いつつ、教室に向かった。
修士は3年B組、俺は1年A組、別々になると見つけやすくなるからっと言う理由で1年と3年に転校させられた。
さてと、何しようかな。名前は事前に聞いているから、手がかりとしては、金持ち、銀髪、1年生、小柄ってとこかな、なんかいらない情報が入ってる気がする。まぁいい、銀髪は目立つだろうな、流石に。
教室のドアが開いた。
「ほら、入って?」
「あ、はい」
俺は恐る恐る入って、当たりを見渡すと、はい、ビンゴ、見つけた。
窓側の席、外を見ているようだ。綺麗な髪型をしている、サラサラで輝く星のように美しい髪。
そんなことを思い、自己紹介を済ませ、よくラノベでありそうな展開だと、美女の隣の席になるんだが、その隣の席には誰かが座っているため俺は廊下側に移動させられた。
くそ! 近づくきっかけを作れん! あいつを誘拐しなきゃならんのに! あの少女の名前はクロエ リーっていうらしい、アメリカ出身だから違和感があまりない。
そんなことより、授業の方も聞いてみたいな。
「はぁ〜、やっと昼休みだ〜」
知ってることをまた教えられるとはな、想像もしてなかった。
「おい、香月」
「え、いつから下で呼ばれるような関係に?」
「うるせ、はよこい」
「はーい」
修士はほんとに何しに来たんだ?
聞いてみたところ、修士の周りにはやたらと人が集まってくるらしい、本当に何があったんだ?
この人に人が集まってくるはずがないのに、そんな目つきが悪い人に人が集まるのか!? 凄いな。
人の少ないところで修士は話しかけた。
「んで、見つけたか?」
「あー、はい一応」
「よし、誘拐するぞ」
「ちょー、まだ親しい関係になるまでにしよ!」
「あ? なんでだ?」
まぁ、この人の頭ではそう思うよな、今すぐ誘拐しても構わないが、あの教室のみんなの性格が知らない、あのクロエの性格すらも知らない、つまり、もし感のいいやつが教室におったら、真っ先に俺達、いや、俺が疑われる。
それだけは避けたい、面倒いことには関わりたくないな。
そう説明すると、そうか、と言った。
それだけ? って思う自分もいるが分かってくれるなら構わないとこだな。
「お兄ちゃん?」
その声に振り向くと、花菜が話しかけてきた。
「おぉ! 無事に高校に来れたのか〜!」
「大袈裟だよぉ!」
「それで、何もされなかった? 引越しの人に何もされなかったか?」
「何もされてないから、こう見えて花菜は強いんだから!」
「まぁそうだよな」
「うん!」
確かに武術は花菜が強い、俺に勝つほどなんだから、握力は女性の平均なのに俺の腕の骨に罅を入れるほどだからな、まじであれは痛い。
だから妹の花菜は絶対に襲われることはまず無いだろう。
「ところで、どこにいるの?」
「ん? 誰が?」
「ほらぁ、クロエちゃん!」
「あ〜、今は教室かな、1年A組にいるはず、あれ? お前何組だ?」
「あ、そうそう、花菜1年C組になったよ!」
地味にみんなバラバラだな、せめて、A組に固めたかったんだが、まぁいいか。
「花菜、行ってくるね!」
「そうか、気をつけろよ」
「はぁ〜い」
全く、可愛いものだ、なぜ妹は高1なのかと言うと、俺と生まれた月が1ヶ月違いだから、俺が早く生まれ、妹が1ヶ月後に生まれた。
1ヶ月も寝坊する妹は今でははよ起きをするようになっている。小学生の時はいつも遅刻ばかりして、よくお母さんに叱られていた。
あの時の花菜は可愛かったが、今の方が別嬪だな。
そんなことをちょくちょく食べていると、手を引っ張られていた、クロエを見た。引っ張っているやつは男だ。
誰だあいつは、クロエは困った顔をしている。助けたら、何かのきっかけになるんじゃないか?
ということで、引っ張っていた男の目の前に出た。
すると、周りがザワりついた。
なぜザワつくのか知らんが、放っておくのはダメだと思った。
「なんだてめぇは」
「俺は木津 香月」
「そうか、だったらさっさとどけ」
「嫌です。」
「なんだてめぇ」
すげぇ、修士に似てるんだけど、でも、すごく喧嘩慣れしてるような腕だ。
「その方が困っているでしょ、分からないのか?」
「そんなことはどうでもいい、兄としての役目だ」
「え? 兄がいるとは上に言われていない……ぞ?」