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王子・ガブリエル


「そろそろお昼ですね」


「そうね。私が作るから待ってなさい」


「では、お母様手伝いましょう」


「いいえ、メイドと二人でいいわ。ガブリエル」


「そう……ですか……しゅん。ミカエルに……手料理を……」


「ガブ姉さん。たまに食べてるので大丈夫」


「ミカエルは優しいな」


「ウリエル……末っ子は優しいよね」


「そりゃ……作ってくれるもん無下にはできねぇよ……だぁあああ!! くっつくな」


「ああ……可愛いミカエル」


「全く……ガブリエルは誰に似たんだ。ワシでもそこまでは……」


「あら……あなたは橋の下で拾ったって」


「そうか。橋の下か」


「!? 本当ですの!? なら!!」


「嘘だぞガブリエル」


「………」


 緑髪の女は酷く落ち込む。ミカエルは……何となく理由が分かるので全く関わらないように目線をあげた。


「はぁ……昔はもっと……」


「ガブリエル……君は何故そんなに末っ子を大事にするんだい?」


「僕も気になります。ウリエルと同じく」


「全部ミカエルのせいよ」


「俺が?」


「そう……あれは………いつだったか……」







 学園の入学式があと1年と控える時。いつものようにミカエルと勉強をしていたときだった。


 ウリエルは皆の兄さんで母上の寵愛を受け、次男はウリエルを追いかけ、そんな二人を見ていた僕は小さい頃から一つ下のミカエルと遊んでいた。


 ウリエルはちょっと子供らしくなく。ラファエルもウリエルかぶれで大人になろうと必死だった。結果……同じ近い歳で一つ下のミカエルの面倒も見るようになるのは自然の事だった。


 同じように母からの指導を受け、同じように切磋琢磨するライバルのような物で。ウリエルとラファエルの関係に似た物をこのとき感じていた。


「よし、今日も僕はイケメンだ」


「はぁ……やっぱガブ兄ちゃんイケメンやな」


 砕けた口調で昔は同室だった僕らはいつものように支度をする。もちろん……こっそり屋敷を抜け出しで悪い遊びをしに。そう、冒険者に混じってだ。


「今日は何処へ行く?」


「兄貴に合わせる。ほらマント」


「よし。ならば………遠くへ行こう」


「2日しか無理だよ?」


「いいや。僕は母上があえて……ぼくたちを泳がさせれている事を突き止めた」


「まーた忍び込んだのか?」


「もちろん。シーフが天職さ……兄たちとは同じようになれないが……他で追うよ」


「俺は……何が得意なんだろうな……」


「まぁ、ミカエルは何でもいいさ。僕が守ってやるよ」


「へいへい。流石兄貴や。でも……いつか3人に追いつけばええな~」


「ははは……」


グシャ


「僕の弟だ……大丈夫。出来る」


「おう」


 マントを羽織り二人で屋敷を抜け出す。鍵はかけ、屋根に登りそのまま……飛び越えて夜に混じるのだった。


 そう、暇が出来たらいつもいつも。冒険者に混じり近場のモンスターを狩りに出掛けたり。ダンジョンに潜り腕を磨いた。


 何故そんな事をしだしたか。それは……兄の大きい背中があったからだ。


 ウリエル兄貴と同じやり方では無理だと僕は思ったのだ。そして、それにミカエルを巻き込んだ。


 飄々と男で生きてきた。だが……大きくなるつれに力の差がはっきりとし、女の子だった事を知らされる。それでも男を通した。


 なかなか育った環境を越えられる訳じゃない。男のまま生きようと僕は決めていた。兄弟と言うのも悪くないなと考えて。


 ミカエルのために兄貴を演じるために。







 失敗した。珍しく失敗した。それがわかったのは自分が気を失い。何処か知らない場所で手を吊るされているときだった。


 暗い部屋に一人。手を縛られ、腰を落とした姿で目を覚ました。お腹は何かに固定するもので支えられている。


「………ああ。やっちまったか?」


 盗賊らしく、身軽な事を利用し……情報を切り売りして男衣装やミカエルに物を買ってあげていた。その中で……大金の情報が入り。狙われる事も多くなるのは知っていた。だが……下手を打つとは思いもせず。自信過剰だった事を今さら悔いる。


ガチャ……


「おっ…………皆、起きたぞ」


「ん? ああ。起きたか」


「よう、おはよう」


 部屋に4人、軽装の男達が入ってくる。襲われ昏倒させられたらしく。この4人は腕がたつことが分かる。大きい剣を背中に背負っているのは冒険者、傭兵以外では珍しい。騎士ではない。盗賊でもない。


「……起きたか。まぁ何故、捕まっているか。分かるな? たらふく貯めているのだろう」


「………ええ」


「では、情報洗いざらい吐いて貰おうか?」


「………………情報屋は無駄に話さない。だから信頼される」


 死んでもだが。ここで……終わりたくもない気がする。魔法も修練すればここを切り抜けられると思うと弱いと思った。


 この鎖を断つ事も出来ず。女の体を呪う。男に生まれていればと思うのだ。


「……まぁいい。時間はたっぷりある」


「なぁ……俺が誰かわからないのか?」


 僕は威を借ること思い付く。だが………


「知っている。有名だ三男だろ? だが……果たして皇帝さまは救ってくれるかな? 女のお前を」


「な!? な!?」


「触った時に気付いた。驚いた……3男が女だったなんてな。それって秘密なんだろ? 捨てられるかもな……それに俺たちは帝国の者じゃない。無くなった国の者だよ」


「………」ギリッ


 僕は唇を噛む。秘密だ……母しか知らない理由だ。産んだ母は僕を男と嘘ついて生かしてくれた。だからこそ……そのまま育てて貰った。生きるために。


「おうおう、怖いね。でも、顔もよくみると可愛い。髪も伸ばせばいいだろうな!!」


ビリビリビリビリビリ!!


「くっ!! ゲスめ……何をする!!」


 服を破かれ、胸を押さえつけている布があらわになる。


「品のない下着だな」


「キレキレ」


「女の拷問なら得意だ……男よりも我慢づよいがな」


「………つっ」


 胸の布を破かれ……胸が垂れる。


「おお。結構大きいな。子供かと思ったのに」


「いいもん持っているじゃないか?」


「拷問するには勿体ないな。綺麗なまま売った方がいいかも。子供でこれはいい値段する」


「まぁ、元は綺麗な亡き姫様の姿だからな。綺麗だろうよ」


「………くそ……くそ」


 何も出来ず。なぶられるの想像し汚いと思いながらショックを受けてしまう。やはりその部分も女なのかと2重に苦悩し、舌を噛もうとした瞬間だった。


 バァン!!


「な、なに!?」


 上から割れた板が落ちそれを傭兵は避ける。その後にマントを着た誰かが僕の前に立ちはだかり。剣を抜き、振り向き鎖を断ち切った。鎖は赤く白熱し、熱を持っている。


「だ、誰だ」


「ガブ兄。これでも着てて」


 バサッ………


 マントを渡され。それを受け取り……声の主を見る。目線は前のまま、剣を抜き……まだ少年だが男らしい背中が私には眩く見えた。


「ちっ……バレちまったか!! 逃げるぞ!!」


「くっ……」


 傭兵は潔く身を引く賢明な判断。国外へ逃げようとしているらしい。だが、ミカエルは追いかけず。安心するように振り向き笑顔を向ける。


「大丈夫? 兄貴? 魔法上手くなったしょ。遅れてごめん。冒険者に聞いてたんだ……ガブ兄のようにまだ上手く情報を集められなかったよ」


「ミカエル……」


「服を持ってくる。からだ冷やしちゃしんどいだろ」


「…………」


「あーあ。親に怒られる」


「ミカエル!!」


 僕は声を荒げた。体を見られているだろう、女だったのがバレただろう。だから……


「ガブ兄さん。落ち着いて……母さんが呼んでるから」


「………」


 ミカエルはそのまま部屋を出る。そして、服を持って帰ってきた。ギスギスした空気に……僕は兄弟として死んだのだと絶望し、涙を流すのだった。







 



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