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あいつの結婚御祝儀会


 王国の王位継承者の結婚の御祝儀で行われる舞踏会は非常に重要な外交の場である。多くの横の繋がりを今のうちに作ろうと躍起になっており。色んな令嬢や貴族、そして王位継承者さえもこっそりと面識だけを手にいれ。この先の群雄割拠を出し抜くために面の皮を厚くして表ではおめでとうと心ない言葉をかけ。裏では値踏みをする場である。


 その場に私は使者として行くことに手をあげ、ウリエルを連れて懐かしい懐かしい王国に顔を出した。


 一応、旦那である。ロイドには絶対に暴れるなと釘を刺されている。剣を馬車の椅子に置き、膝の上にウリエルを乗せて外の風景を見せた。従者の一人であるメイドはつけていない。いるのは護衛の騎士のみである。


「陛下は丸くなった。本当に」


「丸くなったわね。最初は何事も恐怖心を撒き散らす屑だったのに」


「いや、あれは……陛下のご出生や今までの戦いから来るものでしょうが。昔よりも何か深く考えられております」


「血が登るのは悪い癖。私を見て冷静になったらしいわね。本当に失礼な………」


「愛されておりますからね。どうやって射止めたのですか?」


「普通に愛してますから……わかりませんね。知らず知らず。一緒にいますわ。ウリエル、よく見ておきなさい。もしかしたら敵国になるかも」


「皇后様……胃が痛いご冗談はお止めください」


「ふふ、そうね。でも……今は群馬割拠。いつかは3国と2国になるでしょう。それまで頑張りなさい。騎士としてあなたも」


「はい………」(若いのに……なんとも不思議な人です)


 私はウリエルが気分を悪くしているのを見て馬車を止めさせる。そして……ウリエルの可愛い背中を擦るのだった。






 我が子を置いて。赤いドレスに身を包み、少しだけお腹をわざと張った状態で私は舞踏会に顔を出す。脇に剣を帯剣していたがそれを止められ剣を預け。少し文句をいい目立たせてから足を踏み入れる。


 懐かしい、懐かしい舞踏会場に私は作り笑いをする。目立つ赤い赤いドレスにあの子が気付けばいいけれど。


「あっ………いた」


 私の目的の子がいた。その奥に彼もいる。今、思うとあんなに細い男の何がよかったんだと思い。ヘドが出た。


「ふふひ………」


 ツカツカツカと進み。私は目的を果たそうとする。舞踏とか挨拶まわりは他の子がすればいい。私は私の復讐するために動く。何を復讐とするかはまだ目標を決めてないが。挨拶して意識だけさせてやろうと思う。他の話している者を退かせて躍り出た。


 ザッ


「こんにちは。おめでとう。シャルティア姫」

「!? ……め、メアリーお姉さま!?」

「あら? 誰かしら? そんな名前は知らないわ」

「え、えっと」


 死人が生き返ったような驚きを彼女は見せた。まだ広まってないようだ。ならば……名乗って威張ってやろう。


「ミェースチ・バルバロッサ。帝国の王の妻よ」

「えっ!?」


 ありがとうあなた。あなたの威厳とか七光りは素晴らしいほどに効果がいいらしい。濡れそうよ。


「ふふふ。驚いた。あなたが私……いいえ。あなたの王子が私を殺そうと……地獄から何度でも這い上がって、あなたの前に立ってやるわ」

「……ひぃ」


 周りがざわつき始め。ボソボソと噂を始める。快くそれを私は享受し、悪評も喜んで受け取ろうと覚悟する。……旦那自体が悪評の権化なのだから今更ではあるが。虎の威を借る狐になれるならこれほどいい人はいない。


「お、お姉さまは……お姉さまはどうしてそんなことに?」


「あら、ゆるい幸せな頭ね。王子はあなたに無駄に優しいから言わないのでしょうね。国外追放処分。名前剥奪。身売りの処罰をされて……皇帝に売られ。王子よりも大分歳上の色情狂に股を開き、凌辱されて子を孕むまで堕ちたわ。今……これ。あの人の子なの」


 堕ちてない。結構恵まれてる。だが……噂が私の言葉を真実と思わせる。孕んだら殺されるは有名であり。周りもそう思っているだろう。まだ大きくはないがわざとつめてお腹を張っている。


「……うぅ……ご、ごめんなさい。そ、そんな……」


「いいのよ。辛かったわー。来る日も来る日も……嫌がる私に股がって凌辱される日々はね。まぁそれも……産んでから終わるでしょう」


 自分から夜を誘ってました。すいませんね。嘘ついて。若いから……ね?


「ふふふ。私が死んでもこの世界に……この子が残るわ」


「お前は……離れろ!! メアリー!!」


「おっと……王子様のご登場ね。おめでとう。おめでたい姫様。大事にされて羨ましいわ」


 ちっとも羨ましいとは思えない。彼女は少し暗い表情で王子に抱かれ。王子の呼んだ衛兵が私の後ろをとる。掴む訳ではないのでどうやら……虎の威は借りれているのだろう。本当に愛してるわ。


「……では、帰りましょうか。絶対に今度はあなたに負けないわ」


「メアリー!!」


「クレート王子!! 私の名をご存知でしょう? 間違えるなんて失礼よ」


「くっ!!」


 優面の王子の額に冷や汗が浮き出ている。その焦りに私は満足しながらも……結婚しても合わないだろう事を感じ、偉そうに手をあげ振り返る。


「衛兵さん……出口までお願いね」


 ただただ……痛快に笑みを歪ませ。視線の中を歩く。私は目立つその帰路に……少し睨みを効かせ護衛という監視の中。宿泊する施設に帰るのだった。


 シャルティアとのリベンジはいつになるかわからないが。今度は勝つために……やれることをしよう。





 私は王子に連れられ控え室の椅子に座る。王子はそのまま……戻って行ったのを見送り。深く深く私は……驚いた事を整理する。


 現れたのはあの……私を苛めていた一人の令嬢。メアリー姉様だった。その姉様は非常にしつこく苛め……それに泣く私は王子に慰められていた。


 出会いは本当に王子の気紛れだったらしい。でも……いつしか恋仲になり。彼女から……王子を奪った事でさらに強く苛めが始まったと思う。


 それに……私も。王子に甘えていた……苛められるといつもいつも王子は優しくしてくれる。それが私にとって依存してしまうほどに心地よく。


 妥協してしまい。あの事件が起きてしまった。卒業を待たず。彼女は退学し……気の迷いから病死したと教えて貰った。


 そのときに安心してしまった。


 安心している自分が……いた。そして、忘れようと思っていた時に彼女は現れた。


 昔よりも鮮烈に、紅く燃え上がるような鋭い目付きで……息が出来ないほど驚き。考えさせられた。


 王子に反逆した。だから処罰の重さに……そしてそれを耐えるほどに私に対しての恨み。彼女は私に会って帰った理由を考えたときに恐怖した。



 まだ………彼女はやって来ると。






「ウリエルただいま~いい子にしてた?」


「うん!!」


「もう大分重いね~ウリエル~」


「ママ~嬉しそう」


「そうねー……だって友達(ライバル)に会えたからね」


「友達いたんだ……」


「ふふ。ええ……いたわよ。だーいすきな友達がね」


 ウリエルに本を読んであげようと思い。ウリエルを持ちながら椅子に座るのだった。






「母上の宣言は撹乱になった大きい手でしたね」


「完全に王国と帝国の両陣営になった手ですね。ウリエル」


「でも、逆に敵も作る手かもしれなかった。ミカエルならどうする?」


「俺なら……様子見。ただ情報は錯綜するよね」


「母上……質問いいですか?」


「ええ、いいわよ」


「どうして。剣を使われなかったのですか?」


「ウリエル!?」「ウリエル兄さま……」「兄ちゃん!?」


「剣ない、じゃない? 衛兵から取られてましたのよ」


「母上、暗殺者の偽衛兵から剣を抜き。殺したでしょう。覚えております。出来ない訳がない」


「……約束とウリエルが居たからよ。ウリエルが帰りを待ち。子を生む約束があったからね。ビクビクしてたのよ……実は。死んだらウリエル悲しむじゃない」


「母上……」


「母さん……」


「お母様……」


「かーちゃん……」


「まぁ、悲痛な笑みを見れて満足したのもある」


((((素直に感動できない……))))





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