憎き美しくか弱い聖女のような令嬢の情報
「ママ~なーに読んでるのー」
「敵情視察。王国の動向をね」
「ママ~あそぼー」
「ミカエル。ママはお仕事中……ああもう。膝に乗って……」
「へへ」
可愛い。マジで父親と似てもにつかないぐらいに可愛い。甘く、時に厳しく接してるが……これは気をひきしめないといけない。
「にしても……やっぱり王子と結婚したのね。ふーん」
私は名前を捨てた。復讐者と言うミェースチと名乗り完全に昔の家と決別した。まぁ向こうでもメアリーは死亡扱いだろうけど。
「……結婚し。ゆくゆくは王女ね。はぁ……よし!! ミカエル退きなさい。お父様に殴り込みに行くわ」
「えっええ……うぐ……」
離れるとウリエルはすぐにぐずってしまう。
「大丈夫。すぐに帰ってくるわよ」
「うっうっ……ええええええええん!!」
「……一緒に行く?」
「ひっぐ……うん」
私はいいのだろうかと思うが……まぁ。いいのだろう。そこまでロイドは気のしない人だろうから。
*
「なんだ……会議の前に。ミェースチ」
俺は愛人の一人……まぁ今では全員自由にさせたので最後の愛人であるミェースチが何か深刻な顔で廊下を走ってきた。非常に健脚なのは鍛えているからだろう。
「あなた。これを……」
「ふむ。諸外国の情報がどうした? 会議の議題だ」
「そこでよ……王国のあいつ」
「あいつ……ああ、お前の苛めてた。シャルティア・グローライトか。結婚したな……」
「そうです!! だから!! 陛下!! 負けたくない!! 結婚してくだだい!!」
「……………………………」
「くやぢい……先越されるのも結婚してるのも!!」
後ろに殺した女の息子がオロオロと様子を伺っていた。
「そうか、そうか………そうか………」
嬉しい申し出だ。俺から言わずにいたのはプライドがあったためだ。一つ気になるのは…… 嫉妬心からの申し出だ。
まぁ、そんな小さな物で断ることもない。
「会議の最後にでも言おう。ミェースチ・バルバロッサ。これで満足か?」
「孕ませるが残ってます。アイツより早く産んでやる」
「………くくく。全く。遠い遠い国の姫にそこまで嫉妬深くなれるなぞ驚く」
「女なら普通ですわ。その恨みは……一度抉られたプライドはその女に復讐するまで癒えません。負けたくない……負けたくないわ」
歪んでいる。だが……それがわかるのも俺と似ているからだろう。俺も歪んでいる。
「ミェースチ……対抗心も少しは落ち着かせるべきだ」
「愛してます皇帝。だけど……それを失うと生きる希望が途端に薄くなる。陛下もわかりませんか?」
「………」
わかってたまるか。
「まぁいい。欲深く土地を欲するのと一緒だろう。まぁ……好きにしろ」
「ありがとう。あなた」
「ああ………すでに。呼び方がそうであったな」
俺は会議に向かう。そこで宣言しよう。奴を妻に迎えることを………荒れるだろうな。
*
「グローライト王子……結婚の祝いで帝国から使者が来るようです」
「どうしました? 深刻そうな顔を……」
「王子。祝いの使者の名前はミェースチ様です」
「ミェースチ……スゴい名前だね」
「はい。それが……どうやら。メアリー・ヴァイン様らしいとの噂がございます」
「彼女は病死と聞いていたが!!」
「……ヴァイン家に詰問しました。国外追放し、音沙汰がなかった故に秘密のうらで死亡したとしていたようです。あの皇帝に売り飛ばして……結果。どうやら生き延びたと」
「………国内に入れるな。やつを知っているだろう。どれだけ酷く苛めていたか」
「はい。しかし……情報によりますとミェースチ・バルバロッサと名乗っております」
「バルバロッサ!? 皇帝の妻なのか!?」
「昨日……発表があり。あの残虐王が唯一無二の正妻にしたと。国賓なため……無下に出来ず。今はまだ国境が面しておりませんが……関係悪化があるでしょう」
「……………何処まで目障りなんだ……」
「はい……恐ろしい令嬢です。悪運が強い……悪魔のような令嬢です」